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死なないだけの僕がいつか世界を救う  作者: 木挽
40年生きて来た〜新しい町へ〜
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第10話『剣を持って、また歩き出す』



リューデンに来て、10年が経った。

町の広場には新しい店ができ、ギルドの建物も改装された。

道場の床は磨かれ、弟子の顔ぶれも変わった。

季節の移ろいとともに、町も人も、少しずつ形を変えていく。


レイナも、変わった。

今ではギルドの副隊長として、若手をまとめる立場にいる。

あの頃の鋭さは残しつつ、言葉に柔らかさが加わった。

彼女は、経験を重ねてきた。

俺も――同じように、剣を通して多くを学んできた。


---


「天野、ちょうどいい。同行してほしい依頼がある」


ギルドでレイナに声をかけられたのは、旅立ちを決めた翌朝だった。

依頼内容は、山道の交易路の安全確認。

最近、魔物の目撃情報が増えているらしい。


「行きます。最後の仕事として、ちょうどいいかもしれません」


「……最後?」


「町を出るつもりです。次の場所へ」


レイナは少しだけ目を見開いたが、すぐに頷いた。


「なら、見送る前にもう一度、あなたの剣を見せて」


---


山道は静かだった。

風が冷たく、木々のざわめきが耳に残る。

俺とレイナは、互いに無言のまま歩いていた。

でも、言葉は要らなかった。

剣を通して築いた信頼がそこにあった。


そして――魔物が現れた。


---


獣のような体に、岩のような皮膚。

牙をむき出しにして、こちらへ突進してくる。


「左から来る!」


レイナの声に反応し、俺は剣を構える。

魔物の爪が振り下ろされる。

俺はそれを受け、弾き、踏み込む。


「今!」


レイナが魔法を放つ。

閃光が魔物の目を焼き、動きが止まる。

俺は一気に距離を詰め、剣を振るった。


一撃。

魔物は崩れ落ちた。


---


「……見事だったね」


レイナが、少しだけ笑った。

俺は、剣を納めながら答えた。


「10年分の経験です。少しは、形になったかもしれません」


「うん。あなたの剣は、誰かのために振るってるって、わかるから」


その言葉に、俺は静かに笑った。


---


町に戻ったあと、俺は旅立ちの準備を整えた。

道場の門で、ヴァルドが声をかけてきた。


「行くのか?」


「はい。まだ、守りたいものがあるので」


「そうか。……お前の剣は、誰かの命を守る剣だ。誇れ」


ギルドでも、レイナが見送りに来てくれた。


「次の町でも、誰かの背中を守ってあげて」


「……もちろんです」


---


町を出る道は、昔と同じだった。

でも、背負うものは違う。

剣と、覚悟と、積み重ねた時間。


>「この剣で、誰かの未来を守れるなら――それが、俺の生きる意味だ」


風が吹いていた。空は広かった。

そして、俺の旅は――また始まった。


---


完。

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