宴のあと。
皆様今までご愛読ありがとうございました。
[目が覚めたら戦国時代‼︎そしてオレは南部晴政⁉︎]は、この話にて完結となります。
ブクマ外す前に最後に、評価だけ付けて下さると嬉しいです。どうかよろしくお願いします。
心地良いまどろみの中で、オレを呼ぶ声がする。
……もう少し寝かして置いて欲しい。
まだ家臣と家族が泣いてやがるのか?
全く……、自分だって息もするし、心臓は一つ。いくら呼んだってもう帰れる場所に居ないのは分かってるだろうに。
だけど、随分と恵まれたもんだなあ……。
嗚呼……、まこと、まこと有り難しーー
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ーー…ス‼︎ ボス‼︎ 起きて下さいよ‼︎」
「ボス‼︎」
耳元でがなり立てる大きな声で、ハッと眠りから目覚めてしまった。
白い? 布団? ベッド?
窓際の植木鉢、机の上の果物カゴ。
目に飛び込んで来た情報は余りに唐突で、朦朧とする頭では、ほとんど情報を整理し切れなかった。
仰向けに寝転んだまま声のした方に目をやると、目尻に涙を滲ませながらも、心底嬉しそうな顔をした若者がこちらを見下ろしていた。
「ボス‼︎ 良かった、目が覚めたんですね‼︎」
「……ん、ああ」
「いやあ、もうオレ貴方が死んじまったのかと思って、心配で心配で……。
本当に良かった……」
「……すまん、頭がまだボーっとしてるみたいだ。
今は西暦何年の何月何日で、ここは何処だったかな?」
「はあ? またまたオレをからからって……、本当にお変わりないんだから。
こうなりゃとことん付き合ってあげますよ‼︎
今は2019年の11月13日、ここは蝦夷帝国の八戸市内の病院です」
「……ちょっと待て、まだ寝ぼけてるみたいだ。
もしくは夢か……」
「待った待った‼︎ 二度寝しようとしないで下さいよ‼︎
これは現実で、今貴方が見てるオレは東北支部長の渡辺です。
風呂場で頭を打って病院に運ばれたって言うから、急いで駆け付けて来たってのにあんまりじゃ無いですか‼︎」
「……ああ、なんとなく思い出して来た。すまんインターネットかなんか繋いでくれるか? ちょっと一人にして貰いたい」
「ハア……、分かってたけど、勝手なお人だ。
へいへい分かりましたよ、手配して置きます。でも一週間後の定例会には顔を出して下さいね。それと随分心配掛けたんだから、ご家族にはちゃんと謝ること‼︎ 良いですね‼︎
それじゃあ、オレはもう帰りますから、どうぞごゆっくり」
「渡辺」
「何ですか‼︎」
「ありがとよ」
「……はい、お大事に」
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病室でテレビのニュースを見ながら、ネットで情報を集める。
蝦夷帝国? 南日本共和国?
不思議な事もあった物だ。
確かについ数日前までは戦国時代の真っ只中の、ある一人の男だった記憶が存在しているのに、今は近代的な病院のベッドの上で、現代で生きて来た記憶が頭の中の主な部分を占めている。
それも戦国時代に飛ぶ前の現代に生きた記憶とは、かなりの差異がある別の人生を送った記憶である。
頭がこんがらがりそうになったので、椅子のように起こしたベッドに体を預け、一旦テレビに目を移す。
ぼんやりと眺めているだけでも、妙な違和感を感じてしまうヘンテコなニュースばかりだ。
[名門土方家5世、土方歳夫‼︎ 内閣総理大臣二期目突入‼︎]
[モンゴル西区の住民はウランバートル市にて、格差の是正を訴えていますが、遊牧を辞めるつもりは無いようです。
現地警察は道路を馬と羊で塞ぐ一部の過激派を必死に説得していますが、彼らは聞く耳を持ちません]
[関東区では江戸市が経済発展著しく、このペースで成長が続けば、10年以内に小田原市を追い越す試算が出ています。
尚、江戸市長の北条氏善氏は裏切り者と、小田原市の住民から罵声を浴びせられていますが、彼は少しも気にしていないようです]
[蝦夷帝国皇帝、南部宗家42代目‼︎ 南部晴勝・ハーン、髭の長さでギネス記録達成‼︎]
[南日本の奴らはなあ、面倒臭い奴ばかりだ‼︎
順天堂のゲームは最高だけどよ‼︎
未だに戊辰戦争の嫌味を言って来やがる。もう何年前のことだってんだ‼︎
豊畑の車は最高だけどよ‼︎]
[万里の要塞が武装解除後、蝦中両国で一番人気の観光スポットとなっています。また一方で両国の観光客のマナーの悪さも問題視されています。
行儀の良さで有名な南日本人と我らでは、何が違うのでしょうか?]
[アラスカ区のイヌイットを先祖に持つ人々の、アシカに対するマシンガン猟が、世界的な批判を集めています。彼らは地下資源のおかげで猟をしなくても生活出来るのに、伝統だと言って譲りません]
「……なた‼︎ 貴方‼︎」
ベッドの脇から聞こえて来た声で、現実に戻される。テレビを点けたまま、いつの間にか眠ってしまっていたようだ。
側にいたのは記憶にはっきりと思い出せる、妻の葵だった。
「何だ、こっちから顔を出そうと思ったのに、来てくれたのか」
「当たり前じゃない、めちゃくちゃ心配したんだからね」
「それは済まなかったな」
「も〜、本当は思ってないくせに」
「ははは」
「笑ってる場合か‼︎ 頭の傷はもう大丈夫なんだよね?」
「ああ、すっかり治っちまった。
それで相談なんだが、明日退院出来るらしいから、久しぶりにデートでもどうだ?」
「ええっ⁉︎ 珍しいね、自分から誘ってくれるの」
「……眠ってた間、長い夢を見ていた気がしてな。
まだ意識がぼーっとしてて、現実に戻って来てない感じなんだ」
「何それ、変なの。まあ良いけど」
「場所は……そうだな、八戸城でも見に行こうか」
「はあ? 子供の頃から何回も見に行ってるでしょ」
「ごめんな、今は八戸城が良いんだ」
「……まあ、貴方とお散歩するだけでも楽しいしね。分かった、遊びに行こ」
「ありがとな」
「それでさ、長い夢って言ってたけど一体どんな夢だったの? 気になる」
「言ったら笑うだろ」
「もったいぶらないでよ、ちょっとだけで良いからさ」
「そうだな……」
凝り固まった体をほぐす様にぐっと伸びをして、カーテンから差し込む光に目を細める。
「目が覚めたら戦国時代で、そしてオレは南部晴政だったって言ったら、信じるかい?」
ーーーーーーーーーー完ーーーーーーーーーー
南部晴政のウィキ風解説とかも、その内投稿しようと思っております。気長にお待ち下さい。




