狂攻、速攻。
楽しんで行ってね‼︎
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南部軍の突撃は伊達家連合軍の中心に、深々と突き刺さった。
蘆名軍と最上軍が盾になるため、交戦はもう少し後になると思い込んでいた伊達稙宗、伊達晴宗軍の将兵達は、蘆名軍と最上軍が突然左右に割れたことで、準備の整わないまま、なし崩し的に南部軍の全身全霊の突撃を食らうこととなった。
参加している諸侯の不和や、南部軍の恐ろしさによって、元々士気の高くなかった兵士達はひとたまりもなく壊乱した。
南部軍は体勢を立て直す暇を与えないよう、深く深く傷口を広げていく。
しかしそこは流石の伊達軍、相当数の犠牲を出しながらも、優秀な武将達の指揮のもと徐々に体勢を立て直し、南部軍の愚直な突撃に対する構えを構築しつつあった。
しかしここでまたもや、南部軍の攻め方に変化が訪れる。
「馬鹿正直な突撃じゃこんなもんか、まあ傷口を作ったなら、後はそれを広げるまでよ。この間、越後の真面目ちゃんの顔を見て、思い出した戦術があってな……」
晴政から各部隊へ指示が出される。
南部軍は晴政から出されたその合図を見て、形を変えて行く。鋒矢の直線がのたうち回るように、円形の陣形へと移行した。
その円には兵科ごとに順番に相手とぶつかるように部隊が配置されている。
最初に弓矢や投石によって攻撃し、相手の数を減らして隙を作る。
それに続いて騎兵がその衝撃力で相手の陣形を大きく崩す。
最後に槍兵が、崩れた相手を根こそぎから刈り取って行く。
そして円陣を回転させながら、それを途切れることなく繰り返す。
後世にて伝説となった最強の武将の得意とする戦法だ。
南部軍二万 車懸かり。
南部軍は将から一兵卒に至るまで、気が狂ったような猛攻撃を加える。
その驚異的な破壊力にはある秘密があった。
晴政は合戦の前に敢えて将兵に与える食事の量を減らし、意図的に軽い飢餓状態を作った上で、こう布告を出していた。
[耳、鼻、手足。部位によらず敵方より、引き千切って持って来るべし。戦後の食事は持って来た量に応じて支給する]
南部軍はこの布告によって、人ならぬ魔と化した。
相手の体に飛びつき、押さえ付けて、時には生きたまま、様々な部位を刀、素手、または噛み付いてちぎり取って行く。
前線は阿鼻叫喚の地獄絵図となった。
その凄惨な光景に伊達軍は怖気付いて、武器を捨てて逃げ出すものさえ現れた。
南部軍の一兵卒にとっては、勝ちも負けも既に頭になく、ただ背中を向けて逃げる相手は、[ちぎり易い]そう感じるのみであった。
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北
城
城
西 城 東
蘆名軍 最上軍 城
南部軍(車懸かり) 城 寺池城
↓ 相馬軍 城
伊達軍(晴宗) 伊達軍(稙宗) 城
城
城
南
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「南部軍に近付け‼︎ もっと、もっと近くで騎馬隊が見たい‼︎」
相馬盛胤は、目を血走らせて叫んでいた。
南部軍の敵を殺すために鍛えられた馬は、彼にとってただただ美しく尊いものとして映ったのだ。
「なりませぬ‼︎ 今近付いては、あの暴風の如き攻撃に巻き込まれるだけにございます‼︎」
家臣が必死に止めようとするが、盛胤は構わず言葉を続ける。
「馬鹿め‼︎ 馬が見たいのも本心だが、南部軍の側面を突く良い機会ではないか‼︎ ここを逃してはこれからそのどちらの機会も巡ってこぬ‼︎」
「……っ‼︎ 承知しました」
冷静さを欠いているように見えて、しっかりと戦の流れを見極めていた盛胤に、家臣は驚きながらも従う。
騎馬の充足率で言えば南部軍をも上回る相馬軍だ。
機動力を生かし、迅速に南部軍の横腹へと差し迫る。
駆ける、駆ける。南部軍へと全速で近付いて行く。いざ南部軍を撃滅せんと戦意が最高潮に達したその時であった。
南部軍へと今一歩といった所で、南部軍の車懸かりの回転が止まった。
そして南部軍はその円形を維持したまま、全方位への防御態勢である円陣へと再びその姿を変えた。
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「南部軍の動きが止まった?」
自軍を散々に食い破られ、自らの命すら危うい状況に陥っていた伊達晴宗は、攻勢を突如中断した南部軍を見て、胸を撫で下ろすと同時に疑問を抱いた。
そのまま攻め続けていたら、自分の首すら狙えたはずだ。しかし、南部軍は動きを止めた。
疑問は膨らむばかりである。
伊達家連合軍の中心部にまで食い入った、そこで動きを止めたらどうなるか、敵将南部晴政がその程度のことを理解出来ない訳がない。
案の定、考えていた通りに戦は推移する。
蘆名軍と最上軍は軍勢の反転を完了し、南部軍に北方向から襲い掛かる。
相馬軍も突然円陣へと切り替わった南部軍に不信感を抱きながらも、勢い良く突撃する自軍を止めることは出来ず、そのまま東より攻め掛かった。
こちらと同様に南部軍を相手に一方的に被害を出していた稙宗の軍勢も、南部軍の攻勢が止んだことを好機と見て、体勢を立て直し反撃を加えている。
南部軍は四方を完全に包囲された形となるのだ。
何故わざわざそうしたのか?
何か罠があるのか?
誰もが思ったことだが、現状ではいくら考えても、このまま南部軍を挟撃し、包囲殲滅するのが得策であるように思える。
しかし現に他の軍勢が攻撃を開始しているのだから、こちらも包囲に参加せざるを得ない。
「……南部軍に反撃を開始しろ‼︎」
明らかに何かへと誘導されている。だが晴宗はその疑念を払拭出来ないまま、渋々攻撃命令を下した。
伊達家連合全軍が自分達の中に捕らわれた南部軍を攻撃する。
南部軍はその状況にも関わらず、少しの動揺も見せずに頑強に抵抗した。
優位に立っているのはこちらだ。
だが何故だ?
何故こうも胸騒ぎがするのだ?
晴宗は勿論、南部軍を包囲する諸将全てが謎の悪寒に包まれる。
それが最高潮に達したときのことであった。
遥か東より、城門が開け放たれる大きな音が、戦場に鳴り響いた。
思わず東へ目を向ける。
そこには目を疑う光景が、現実として存在していた。
落城したと思われていた寺池城より、新たな軍勢が姿を見せる。
掲げられた旗を見れば、その正体は一目瞭然である。
南部、葛西連合軍 総勢八千
寺池城より打って出た二色の軍勢が、南部軍の円陣を包囲する伊達家連合軍を、背後から強襲した。
車懸かりが架空だとか言う奴は絶許。
カッコ良いからいいじゃん。




