表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/62

揺れる伊達連合。

今更ですが、土日祝は毎日投稿。平日は隔日投稿といった感じで、更新しております。


そこまで筆が速くないので、これから維持して行けるか分かりませんが……。





 伊達家連合は内乱を一旦中止し、目の前に差し迫った脅威である南部家を迎え撃つべく、仙台平野の南東部に着陣していた。


 互いに見慣れた顔触れの諸侯が、続々と集まって来る。


 しかし今の今まで殺し合いをしていた間柄の人間もいるのだ。連合と言っておきながら、既に陣中では一触即発といった空気が流れている。


 「南奥州全ての連合軍じゃぞ⁉︎ この程度しか集まらなかったのか‼︎」


 「……いつ誰が裏切るとも分かりませぬ。領地に残して来た兵力の方が多い輩もいるそうで……」


 連合の名目上の盟主となった伊達稙宗は、集まった軍の少なさに激怒していた。


 小梁川宗朝がなだめるも、稙宗の怒りは収まりそうもない。





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




 伊達家稙宗派6000


 伊達家晴宗派3000


 蘆名家5000


 最上家4000


 相馬家2000


 その他諸侯2000




 伊達家連合軍総勢22000



 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





 「信じられん馬鹿共だ‼︎ どの道この戦で勝てなければ、じわじわと南部家に滅ぼされるだけだというのが分からんか‼︎」


 稙宗は元々、団結力に欠く今の状況で南部軍に勝つためには、兵力で大きく上回ることが最低条件だと考えていた。


 事実、伊達家連合が本腰を入れて兵を挙げれば、それは充分に可能なことである。


 しかし結果的に集まったのは南部軍二万に対して、伊達家連合軍二万二千。兵力では僅かに上回っているだけである。


 それも兵数で上回っているだけであり、洞体制の及ばない厳しい戦を勝ち抜き、その資金力で装備面も充足した南部軍の方が、強さという意味では上かも知れないのだ。


 南部軍は葛西家との初戦で勝利しており、士気も高まっているであろう。


 「稙宗様、そろそろ軍議が始まりまする。葛西家の寺池城は今まさに包囲されているところ、着席はお早めに」


 「馬鹿者、盟主たるワシが一番最後に決まっておろう。諸将が集まるまで、しばし待つぞ」


 「……承知しました」


 激昂していたかと思うと、再びいつもの穏やかな笑みに戻った稙宗の二面性を、宗朝はただ恐れることしか出来なかった。






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





 

 満を持して始まった伊達連合軍の軍議は荒れに荒れた。


 まず諸将がとっくに席についているというのに、随分と遅れて最後に悠々と陣幕に入って来た稙宗に対して、伊達晴宗と蘆名盛氏がキレた。


 「父上‼︎ まだかつての大勢力だった頃の誇りが抜けきっていないのか‼︎ ここにいる全員、もうあんたに忠誠など誓ってはいないんだぞ‼︎」


 「稙宗殿、葛西家の寺池城は既に敵に包囲されている。悠長に構えている時間はない。我々はすぐにでも寺池城を助けに入るか、葛西家を見捨てるか決断しなくてはならない。軍は拙速を尊ぶ、だというのにあなたは……‼︎」


 「ほっほっほ、久しぶりじゃのう皆の者」


 稙宗は盟主として上座に座ったことがよほど気に入ったのか、二人の怒りを意に介さずといった風に、穏やかな笑みを浮かべている。


 その態度が二人の感情を更に逆撫でする。


 晴宗はもう一度怒鳴りつけてやりたかったが、このままでは軍議が一向に進まないと感じた盛氏が、晴宗を目で制する。


 晴宗が深呼吸し、何とか怒りを静めたその瞬間であった。


 「晴宗よ、随分と連れて来た兵が少ないようじゃの。情けない」


 「あんたが伊達家の領地の大半に、居座り続けてるからだろうが‼︎」


 稙宗の一言に、我慢し切れなかった晴宗が再びキレる。


 二人の不毛な言い争いに、見ている諸侯は呆れるばかりであったが、一人だけにやにやと楽しそうに見ていた相馬盛胤が口を開いた。


 「しっかし、盛氏殿よ。あんたさっき兵は拙速を尊ぶって言ってたけど、その点で言えばオレらはもう既に、南部家に随分と出遅れちまってるんじゃあねえか?」


 「……確かに南部軍は何をするにしても速すぎる。こちらが亀のようにノロノロと準備しているだけで、選択肢を次々に潰されて行く。風神とは良く言ったものよ」


 最上義守が盛胤に同意を示し、二人は南部軍の強さを語り合って盛り上がっている。


 途中から案の定、馬の話になり義守は盛胤の豹変ぶりに困惑していた。


 「晴宗殿と稙宗殿は落ち着いて下され、そちらのお二方もこれから戦う敵の強さに感心していてどうするのですか……」


 盛氏が何とか話を進めようと、大きな声でそれぞれの仲裁に入る。


 しかしそんな盛氏を無視して、稙宗と晴宗の口喧嘩は終わる気配がないし、盛胤と義守は変わらず此度の南部家の戦略を語り合って盛り上がっている。


 そんなグダグダな諸将に遂に盛氏がブチギレた。


 




 「貴様ら‼︎ 戦う気がないのか‼︎ オレはみっともない負けを晒すくらいなら、死んだ方がマシだ‼︎ その名に傷が付く前にここで全員殺して、南部家に引き渡してやっても良いのだぞ‼︎」


 




 盛氏の一喝で、場が静まり返る。彼は息を切らせながら、そのまま言葉を続ける。


 「ハア、ハア。……正直に申しておこう、オレは今の時点ではこの連合などより、南部家に魅力を感じている。オレは本当なら南部晴政のような大将の元で戦いたいのだ」


 「何だと‼︎ 貴様‼︎」


 「待て」


 盛氏に掴み掛かろうとした晴宗を稙宗が止める。


 また邪魔をするのか。そう思った晴宗は振り返って稙宗の顔を見る。


 しかしそこにあったのは先程までとは違う鋭い目付きをした、幼き日に憧れた父の顔であった。


 晴宗はその気迫に気圧されて、黙り込んだ。


 「盛氏、ならば南部についてくれても良いのだぞ? 何故ワシらの味方をしてくれるのだ」


 「……オレの家臣達の耳に入らないようにして下され……。戦いたいと思ったのです。南部軍の強さと晴政の苛烈な戦略を聞く度に、オレの中の武家としての血が騒ぐ。奥羽の乱世の象徴たる南部晴政と雌雄を決したいと思ったのだ……。オレはあなた方を利用しようとしているだけに過ぎない……」


 「……良い。この天文の内乱が始まってから、初めて本音というものを聞いた気がするわい」


 軍議の場はしみじみとした雰囲気となる。


 「そんな話はどうでも良い、それよりウチの陣幕に昨日の晩、射掛けられた文がある。オレはコイツについて話が聞きたいな」


 その雰囲気を打ち破るように、場の空気というものがまるで読めない盛胤が発言する。


 盛胤がひらひらと見せた手紙には、こう書かれていた。


 




 [いざ合戦となった際には手はず通りに頼みまする。戦後の待遇については、予定通りに。


 南部大膳大夫晴政]






 諸侯の間にざわめきが起こった。晴政本人の花押までついた、何者かの裏切りを匂わせる文書。


 「信じてもらえるか分からねえが、オレは裏切るつもりなんて毛頭ない。誰か別の人間にあてられた書状が、たまたまウチの陣幕に流れちまったってことじゃねえか?」


 「誰が信じられるか‼︎ 貴様が裏切るつもりなのだろう‼︎ 盛胤殿‼︎」


 晴宗が激昂するが、盛胤も負けじと言い返す。


 「それも面白いかと思ったんだが、今回はそんなことするつもりはない。そもそも本当に裏切るつもりなら、わざわざあんたらに見せねえだろう?」


 「ぐっ、それもそうか。ならば一体誰が……‼︎」


 「少しよろしいですか?」


 最上義守が手を挙げ、一同の視線がそちらに向けられる。


 「実は私の陣幕にも同様の書状が届いております。裏切り者は一人だけではないのかも知れない」


 「下らんな、そんなもの南部晴政がこちらに揺さぶりを掛けるためにでっち上げた嘘の文書だろう」


 「本当にそう言い切れますか? 何の証拠があって?」


 「……」


 義守の言葉に反論した蘆名盛氏は言葉に詰まる。そうなのだ、先程南部家に魅力を感じているなどと言った手前、最も疑わしい人間は自分なのだ。下手なことを言えば、立場が一番悪くなるのは盛氏だ。


 「お主らは裏切らんのだろうな? 小さな国人達ならまだしもお主らの内、一人でも裏切ったら取り返しのつかぬことになるぞ」


 流石に不安に駆られた伊達稙宗が、諸将に釘を刺す。


 「もし誰かが裏切れば、南部家には負けるだろうが、その後南部家に滅ぼされる前に、絶対に道連れにして殺してやるからのう。ふん、願わくは家族に裏切られることなど、体験したくはないものじゃ……」


 その後も盛氏が中心に策を出し、稙宗が強引に決断をするといった形で、何とか軍議は進んで行くが、進む度に各人の不満と猜疑心は高まって行くばかりであった。


 軍議が終わった頃には、諸将は誰も互いを信じることが出来ず、それぞれが自分の陣幕に引きこもってしまった。






 本当は裏切り者など、一人もいなかったというのに。






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





 伊達連合の陣幕

 兵士達




 「軍議だってのに中から怒鳴り声しか聞こえねえぜ」


 「こんなんで勝てるのかねえ」


 「しょうもない家族喧嘩に、命懸けさせられるこっちの身にもなってみろってんだ」


 「挙句、北の南部様とも戦わされるってのかよ」


 「伊達のジジイもいよいよ終わりかね」


 「しっ、聞こえたらどうすんだ」


 「南部軍は血も涙もない鬼みたいな奴らだっていう話だぜ。もうオレ達兵卒の間で噂になってる。オレらもさっさと逃げないと、きっと殺されちまう」


 「怖えなあ、こっそり抜け出して南部様に降参した方が、生きる目があるかもしれねえ」


 「いや、もう逃げ出した奴がいるらしい。そのせいで武士達の監視が厳しくなってる。逃げるなら戦場で逃げた方が良いな」


 「おう、そうしようそうしよう」






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




 葛西家本拠地 寺池城 城下

 包囲する漆黒の軍勢の中心





 「晴政様、また書状を書いておられるので?」


 「心を攻めるってことは大事だぜ、信愛。ほら、この矢文をまたあちらさんの陣中に適当に打ち込んで来てくれ」


 「はっ、すぐに向かわせます」


 「それと雑兵に対しても、間者を使って噂を広めろ。ただオレ達がどんな戦い方をしてきたか、事実を話すだけでいい」


 「そちらもすぐに取り掛かります」


 「それと何度も言ってるが、この城は無理攻めしなくても良いからな。この城は伊達家を釣り出す餌だ。まったく、兵が勇猛果敢なのも行き過ぎると困る……」





みんなお待ちかね?のゲス謀略の時間だぜ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ