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決着とその後。

沢山のブックマークと評価、本当にありがとうございます。


みんなもっと展開とかに文句言ってくれても良いのよ?


逆に不安になる……。





 信愛の率いて来た軍勢は、羆達を容易く追い散らして行く。


 彼らは晴政達の奮戦により、仲間達が毒や出血で死んで行くのを見て、野生の本能で及び腰になっていた。


 敵が少数だからこそ、戦えていたのである。


 故に大軍に一斉に襲い掛かられた羆達は、毒の塗っていない武器ではダメージは少なくとも、それによって仲間達が倒されたことを思い出し、それを恐れて逃げ出してしまったのだ。


 数多の犠牲者を出した戦いの終わりは、余りに呆気ないものだった。





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




 

 「晴政様‼︎ ご無事ですか‼︎」


 羆達を追い散らした後、一目散に晴政様の元に駆け寄る。


 信愛を見て一目で育ちが違い過ぎると悟った討伐隊の生き残りは、少し離れて様子を窺っている。


 「ああ、信愛か……。まあ何だ、ありがとよ……」


 げ、元気がない⁉︎


 凄く喜んでくれると思ったのに。


 「信愛ぁ……、いやお前が悪い訳じゃないんだけどよ。もう少し早く来れなかったかなあ」


 「も、申し訳ございませぬ」


 「いや、良いんだけどよ……。もう少し早くなあ……」


 「全然、良くはなさそうですが⁉︎」


 晴政は俯いて嘆き続ける。


 「ああ、アシリアイノ、三郎……」


 「オラは生きてるぞ〜」


 三郎が死んだと勝手に思ってる辺り、かなり重症である。


 「晴政様、まあとにかくオラ達生き残ったんだし、羆の肉で宴会にしよう。死んじまった奴らも賑やかにあっちに送ってやんなきゃならねえ……」


 「三郎……‼︎ そうか、そうだな。信愛‼︎ 宴の用意をしろ、折り入って相談したいこともある」


 「御意‼︎」


 信愛は晴政の微妙な心象を少しでも挽回しようと思ったのか、テキパキと自らの引き連れて来た軍勢に指示を出す。


 彼は基本的にこういったことが得意なので、宴の準備はあっという間に終わった。


 しかし宴を始める前に大事な仕事が残っている。


 この戦いで死んで行った者達を弔うことだ。






 「蝦夷じゃ坊主も呼べねえが、何とか安らかに逝ってくれ」


 晴政はそう言って名もなき人々の、墓とも言えないような薄汚れた岩に向かって平伏する。


 汚れも気にせず土の上に平伏する晴政を、信愛の連れて来た武士の一人が慌てて止めようとするが、信愛は何も言わずそれを手で制した。


 その場に晴政の声だけが、明瞭に響いた。


 「南部家27代南部晴政。貴殿らの勇気と戦いに生涯忘れることのない格別の敬意を表しまする」


 南部の棟梁はそう言って深く頭を垂れる。


 冷たい風が蝦夷の森に吹き渡り、人々の頰を伝う涙をどこかに流して行った。






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





 「信愛、今から法を作る」


 宴の喧騒から離れた所で、晴政と信愛が小さな薪を囲んで座っていた。


 晴政が串に刺した熊肉を齧りながら、唐突にそう言った。


 「法……、分国法ですか」


 「今川に伊達、参考に出来るものは先人が作ってくれている。精々真似させてもらおう」


 「方針は?」


 「起訴事に対する諸々の確実で細かな規定。家臣団の中央集権化。南部家の軍事、外交、戦闘における基本原則などだ。そして最後に目玉の一文を入れてくれ」


 「目玉?」


 「ああ、それはなーーー」


 




 本拠地三戸に帰還した晴政と信愛は、主要な家臣達と協議して分国法を制定した。


 裁判などに関する[法]の百条。


 家臣団の三戸城下への移住など、国そのものの体制を作り変える[変]の五十条。


 軍事、外交、戦闘などの基本原則、南部家のドクトリンとも言える[実]の五十条。


 二百箇条にも及ぶこの戦国最大の分国法は、[南部氏網羅(なんぶしもうらの)法度次第(はっとしだい)]と名付けられ、程なくして南部領全体に公布された。


 その中には現代にも通ずる先進的な条項も含まれており、後世にて現代人の関与などの根も葉もない噂がまことしやかに囁かれている。


 他国の分国法に頻出する武士としての心構えなどが一切含まれていない所に、南部晴政の思想が垣間見えて、オタクにとってはこれがまたたまらないらしい。






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 


 天文15年(1546年)

 

 


 晴政は南部家の中央集権化を推し進める上で、反抗した家臣達の粛正を進めて行った。戦になるとそこは流石の晴政で連戦連勝。容赦のない苛烈な粛正を恐れて、現地の領民達も次第に晴政派に反抗する勢力に味方しない様になっていった。

 

 「南部晴政‼︎ あんたにはもう着いていけねえ‼︎」


 反乱を起こした一人の家臣が、晴政の前に拘束されて引き出されていた。


 徴兵した現地の民達に裏切られて、一戦することもなく容易く捕らえられたらしい。


 絶対絶命の状況にありながら、彼の目は少しも恐れの色を感じさせない。そのまま言葉を続ける。


 「ここは先祖代々、我が一族の治める土地だ‼︎ 三戸城下への移住だと? それはつまりこの南部領の全てを貴様一人で独占するということではないか‼︎」


 「その通りだ。そもそも都合良くオレに臣従している癖に、お前のような輩が独立勢力たる力を持っている、今までがおかしかったのだ。領地を与えるのは全て南部の棟梁たるオレの差配でなければならない」


 「欲に目が眩んだか……‼︎」


 「そう思うなら結構、確かにオレは欲望の塊だが目が眩んだことなどないと自負している。もう良い、殺せ」


 「貴様‼︎ オレは南部の一族だぞ‼︎ 血の繋がった家族を殺すのか‼︎」


 「家族? オレも含めて南部の一族なら処断されないなど、例の法には書いていなかったはずだが?」


 「南部晴政‼︎ おのれ……‼︎」




 男が処刑台に乗せられる。


 首をはめ込む穴が開いた板に、二本の支柱、その上に吊り下げられた支柱に沿って落ちる様に設計された巨大な斜めの刃。


 ギロチンとも呼ばれる意思なく人を機械的に殺す無慈悲の処刑装置である。


 「これからは処刑は全てこれで行う。武士だからと名誉ある死を与えられる事は無い。南部国網羅法度次第の最後の条項に則った措置だ」


 「呪うぞ……‼︎ 南部晴政、呪い殺してやる……‼︎」


 「そりゃあ良い。呪いで人が死んだら、戦が起きないで済むからな」


 刃が解放されると呆気なさ過ぎる程に、男の首は胴体と泣き別れた。






 南部氏網羅法度次第、第二百条。


 [国内の諸々の権力は南部家の棟梁たる者に与えられ、その権限を他者に分割して与えるのもその意思によるものである。ただし権利は武士、農民、商人、職人、その他の個人の身分に寄らず、これは平等であるものとする]






 この条項はある意味で、ヤマト王権の築いた社会の否定であるとされる。


 部落差別などが根強く残る今でも、非常にデリケートなところを描かなくてはならないため、南部晴政の名は現代放送業界ではタブーである。


 南部晴政の存在は、天皇の権力を二分した南北朝時代と並んでこう称される。


 [南部と南朝、二つの南はテレビ嫌い]


 




羆編完結です。


もっとほのぼのとした短い話になるはずだったのに、どうしてこうなった……。


次の投稿は少し間が空くと思います。

期待されていた方は申し訳ありません(そんな人いるのか?)。


活動報告がほぼツイッターみたいになってますが、よろしければコメントお願いします。


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