それは夢のような。
日間ランキング1位‼︎
嘘だろ、しょうもない作品書いてることが多くの人にバレてしまうぞ……。
「ふう、そろそろお終いみたいだな」
羆と人の戦い、その決着が刻一刻と近付いていた。
撤退してきた晴政、開拓民、アイヌの各々は、村の中央の小屋まで追い詰められていた。
各人それぞれが良く戦ったが、元々この村は複数の羆に襲われることを想定していない。
討伐隊は一人、また一人と次第に数を減らし、遂にこの小さな小屋に集まった数人を残すのみとなった。
「皆の者、良く戦ってくれた。此度のお前らの働きと勇気は史書に残る英雄豪傑達にも劣るまいぞ」
晴政が一人一人にねぎらいの言葉を掛けていく。中には涙を流すものまでいた。
「……晴政様、オレの話を聞いてください……」
一人の男が、自分の出自について語り出した。
死ぬ前に自分という人間が生きたことを、他者に知ってもらいたかったのだ。ごく自然な反応である。それに続いて皆一様に自らのことを話し合う。
開拓民達の中には、ロクな出自の者がいない。
農家から口減らしに捨てられた次男坊。本土から追いやられた罪人、河原者、山窩など被差別階級の人々。アイヌだって元々は、大和民族に北へ北へと追いやられた者達の末裔である。その血は大和民族との圧倒的な人口の差によって、いずれ消えて行くことになるだろう。
たった今まで羆と命懸けの戦いを演じた勇敢な者達は、とても弱い人々だった。
「晴政様、オレ達が蝦夷に来たのはな。国だ、国が欲しかったんだ。
日の本の天はオレ達を見てはくれない。
オレ達はここ蝦夷で、人になりたかったんだ……」
涙を浮かべた熱い眼差し。
これに比べたら、歴史に残る名のなんと浅はかなことか。
晴政は生きたいと思った。
この人々と生きたいと思った。
「最後の作戦だ、皆で一塊になって中央突破する。運が良ければ一人くらいは生き残れるかも知れん」
晴政の作戦とも言えない指示とともに、一同は悲壮な覚悟を決める。
「……分かったが条件がある。晴政様は一番後ろだ」
「それは出来ない。オレにはお前らをこの死地に追い込んだ責任がある」
「全く、自分のことを鬼だなんだと言っておいて、やっぱり呆れるくらい優しいお人だ。だからこそオレ達はあんたに生き残って欲しいんだよ」
「……みなまで言わせちまったようだな、済まん」
「分かってくれたなら良い。さて、全員突撃だ‼︎ 晴政様を生きて城に帰すぞ‼︎」
「……済まない…」
一同の決意が固まった。
生存の可能性は無きに等しい、無謀な突撃が始まる。
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長い、夢を見ていた。
海の向こうに何があるのか、いつも気になっていた。
「婆ちゃん、この海を越えたら何があるの?」
「アシリアイノ、海の向こうにはそれはそれは恐ろしい和人達の国が広がっている。マツマエのカキザキ達を知っているだろう。あんな奴ら集まって、終わらない殺し合いを繰り返している」
「でも見たこともない大きな建物や、食べたこともない美味しい食べ物があるって、死んだお爺ちゃんは言ってたよ」
「……それは本当だけど、だからと言って和人達が優しい訳じゃあ無いよ。元々、ご先祖様達はそこに住んでたんだ。でも和人達に住処を追い出された。逆らったら子供でも殺された」
「僕はこのままここで死ぬより、海の向こうを見て死んで行きたい。殺されても良いから……」
「コラッ‼︎ 滅多なことを言うもんじゃないよ‼︎」
「っ‼︎ お婆ちゃん、ごめん……」
「あんたまで死んだら……、私はどうすれば良いんだい……。うぅ……」
「お婆ちゃん、ごめん。泣かないで……ごめんね」
大人になった頃、蝦夷に和人が増えて来た。
「ひっ‼︎ アイヌ⁉︎ 商品には触らねえでくれよ」
「何だあの毛むくじゃらは、汚ねえなあ」
「人間の言葉も喋れねえのか……」
和人達が何を言っているのか分からないけど、僕は何か悪いことをしてしまったのだと思う。
こっちを見て嫌な顔をするし、ひどい時には叩いて来る。
でも、鮭や毛皮を持って行くと和人達はとても喜ぶ。その喜んだ顔が嬉しくって、何度も何度も彼らの元を訪れるのだった。いつか彼らが和人達の国に連れて行ってくれる。
そう信じていた。
「うおっ‼︎ カッコいいな毛むくじゃらで狼みたいだ‼︎」
更にしばらくすると、変な和人達の中で一番変な和人に出会った。
彼は鮭を渡そうとしても受け取らなかった。だと言うのに、何もあげてないと言うのに、彼はこちらを見てにこにこするのだ。
僕が何かをする度に、他の和人達が喜んだ顔より、もっとキレイに笑うのだった。
名前はハルマサというらしい。僕は彼のことが気になって、しばらく一緒にいた。
一緒に和人達の集落に行くと、彼らは見たことが無いくらい驚いた顔をした。大きな毛皮を持って行ったときより、ずっと。
皆んなハルマサに跪く。
僕を叩いた人も、持ってきた鮭を盗んで行く人も、ハルマサは彼らの前で僕を紹介すると、彼らはまたいつもの嫌な顔に戻り、何かをハルマサに言った。
その度にハルマサは怒って、彼らの頭にゲンコツを落としてしまう。
怒っている姿はとっても怖かった。その怒りが僕に向けられている訳では無いのに。
でもハルマサが振り返り、僕を見るときは、いつも通り。
あの最初に見せてくれた、キレイな笑顔で笑うのだった。
この人の国に、住みたいと思った。
この人のために、戦いたいと思った。
この人のために、死んでも良いと思った。
長い、夢を見ていた。
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「アシリアイノ殿‼︎ 何故だ‼︎」
横道から突然飛び出して来た羆は、最後尾の晴政に襲い掛かった。晴政は別の羆を見ていて、反応が遅れた。
殺られる。晴政がそう思った瞬間、目の前に影が現れた。
現れた影は晴政を庇って羆の攻撃を受けるアシリアイノだった。
アシリアイノは振り下ろされた羆の腕にしがみつき、背負っていた矢を羆の目に突き刺す。
羆はのたうち回って逃げて行った。
しかし羆の一撃をまともに受けたアシリアイノは、そのまま地面に向かって仰向けに倒れた。
夥しい出血、もう命が助かることはないだろう。
「アシリアイノ‼︎」
晴政が倒れた彼に駆け寄る。
「……ハルマサ……」
「……」
晴政はあえて喋るなとは言わなかった。
安静にしていたところで、もう彼は助からない。ならばこのまま遺言を静かに聞いてやるのが良しと考えた。
一言一句聞き逃さないために、彼の口元に耳を近付ける。
息も絶えだえのアシリアイノから、最後の力を振り絞った声が、晴政にだけ僅かに聞こえた。
「……ハルマサ……、ボクもクニ、ホしい……。
でも、アイヌのクニじゃない……
アイヌとワジンがイッショ、クらすクニ……。
ハルマサ……、おネガい……」
「……任せろ」
ハルマサはそう言って、僕の好きじゃない。
悲しそうな顔をした。
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「晴政様、大丈夫か?」
「ああ、問題ない」
晴政達は犠牲者を出しながらも奇跡的に、脱出までの中継地点とも言える防衛地点に辿り着いていた。
「柵の入り口は固めてきた、少しは休憩出来るだろう。」
一同が束の間の安堵を得たその時だった。
柵の外をうろつき、様子を伺っている羆達の頭上に、多数の矢が到来した。
その矢は、晴政達の放ったものでは無い。
晴政は驚愕した。
「……まさか、援軍が来たのか? ここにいる人間以外には誰にも伝わっていない戦いだぞ。一体誰が……」
やがて村全体を見渡せる小高い丘の上に、件の援軍が現れた。
それは正に軍隊だった。槍、弓、刀に鎧を着込んだ人間達の本気の姿。
そしてその軍勢の前に堂々と立つ男が一人。
「晴政様のことだから、アイヌの方々と戦争でも始めてるかと思って急いで軍勢を集めて来たのですが……、もっととんでもないことになってるみたいですね」
晴政の重臣の一人、北信愛がそこにいた。
感想沢山欲しいです。
じゃないとモチベーションが上がらない……。




