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暴良く暴を制す。


みんな聞いてくれ。


キーワードに何故か入ってしまっていた、異世界転移を外したら、あっという間に日間ランキングに載っちまった(後から調べたところ異世界転生、転移をタグに入れているとジャンル別ランキングに載らないらしい)。


何をしてんだオレは……。


自分から宣伝の機会を潰すとかマゾかな?




 目的は東から侵入した羆の討伐、晴政が指揮する開拓民達の間に緊張が走った。


 やがて森の中からそれが姿を現す。


 「で、でかい……‼︎」


 息を潜める一同のどこかから声が上がった。


 声を上げたのは、先日の羆に攫われた死体の捜索に関わったメンバーの一人である。


 あの時遭遇した奴より、遥かに大きい。


 ぶんぶんと首を振って、不安になる気持ちをなんとか振り払う。相手が想像より大きいからと言って今更、どうすることもできない。予め決められた作戦を全うするしかないのだ。


 巨大な羆は並べられた柵に沿って進み、討伐隊の狙い通りの進路に誘導される。化け物と言ってもあくまで獣、何の異常もないのに柵をわざわざ破壊して進むような行動はしない。


 羆が塹壕と柵で出来た一本道に差し掛かり、中程まで進んだ所で、潜んでいた開拓民達が柵の隙間を通して矢を射かける。


 何本かの矢が刺さったものの、これだけの巨体だ。毒は簡単には回らず、何事もなかったかの様に、羆は柵の向こうの開拓民達に襲い掛かる。


 羆がこちらに向かって来たことを確認した開拓民達は、弓矢を持った組が下がり、槍を持った数人の男が、槍衾(やりぶすま)を作り、羆の動きを遮る。


 この槍の先にも当然、毒が塗ってある。しかし槍が羆に突き刺さっても、どれも浅い傷を作るだけで、致命傷には程遠い。


 そうこうしている内に、構えていた槍を下方向に抑えつけられる。柵の隙間から通していた槍は、その剛力で柵に押し付けらたことにより、てこの原理の要領で、槍を持っていた開拓民が上空に投げ飛ばされた。


 人が宙を舞う見たこともないその光景に驚愕した。開拓民達は、槍を捨てて一斉に逃げ出した。


 羆は塹壕を登ってそれを追い掛けようとする。


 そこで塹壕を進んだ先の方からまたもや数人の弓隊が、柵の隙間から羆に向かって矢を放つ。


 羆は矢が飛んで来た方に向き直り、流石に苛立っているのか凄まじい速度で、そちらに突進する。


 弓隊はすぐさま逃げ出す。


 突進する羆の勢いは止まらず、弓隊が隠れていた柵を破壊した。しかし破壊した柵の先もまだ塹壕は続いており、その両脇にはやはり柵とその隙間から羆を突き刺す槍隊の姿。


 羆は既に毒を受け大量に出血している。


 普通のサイズの羆ならばとうに倒れている状況だ。凄まじいのは東側に来たこの羆の生命力である。もしこの羆が西側に来ていたら、騎馬隊は少なくない被害を出していたかも知れない。


 仕留めるにはもう一手、もう一手が足りない。しかし誰もが使うことになるとは思わなかったが、もう一手は既に準備されていた。


 柵の隙間から突き刺していた槍隊が一斉にある方向に逃げ出す。羆は塹壕に沿って彼らが逃げ出した方向へ向かう。


 その時、羆は塹壕の突き当たりに、遂に奪われた死体を発見した。


 失った血と体力を補給しなくては命が危ない。羆は野生の本能でそれを理解していた。一目散に死体に向かう。


 だがこれが討伐隊の仕掛けた最後の罠だった。


 死体が置かれているのは塹壕の一本道の突き当たり、しかしこれは実は突き当たりではなかった。


 羆が辿り着いたのは、T字路の分岐点に当たる場所である。羆の左右に道が続いている。


 すかさず晴政が満を持して合図を送る。






 「今だ‼︎ 放てぇ‼︎」





 晴政の渾身の掛け声と共に、羆から見て左側の通路の突き当たりにある檻が開かれた。


 そして檻の側にいた男が、焚かれていた松明の火を使って、檻の中にいた獣の尻尾に火を付けた。


 尻尾に火を付けられたそれが、たまらず凄まじい勢いで檻の外へ飛び出した。





 姿を現したその獣の正体は、角に短く切り詰めた槍を結び付けた猛牛である。





 飛び出した先は一本道、その道の先で死体を漁る羆に向かって猛牛は一直線に突進した。


 死体に夢中になっていた羆は反応が遅れ、その左脇腹に突進する牛の力を借りた槍が深く突き刺さった。


 羆は声にならない声を上げて悶絶するが、猛牛の勢いは止まらない。


 バランスを崩した羆を槍を突き刺したまま、押し込み続ける。そしてT字路の反対側に押し出した羆に更なる罠が襲い掛かる。


 突然、地面が大きく歪んだ。


 予め掘っておいた落とし穴である。


 穴の底には大量の槍が上を向けて仕掛けられている。羆は自らの重過ぎる体重でもって、その無数の槍に貫かれた。


 「とどめだ‼︎ 弓隊‼︎ 放て‼︎」


 穴の底の羆に更なる追い討ちをかけるべく、晴政の指示の元、弓隊から一斉に矢が放たれた。


 だがここで一つ誤算が生じる。


 この矢が当たれば羆は流石に傷と毒で、即座に絶命していたかも知れない。しかし羆と共に穴に落ちた猛牛が盾となって矢を防いだことで、羆は死ぬまでの間に僅かな猶予を得たのだ。





 「ブオオオオオォォォォォォ‼︎‼︎」




 

 それは辺り一帯を揺るがす程の、大きな鳴き声だった。


 討伐隊の鼓膜をビリビリと震わせる。


 羆はそれが最後の力を振り絞ったものだったのか、体力が尽きて毒が回り、遂に穴の底で絶命した。


 晴政の脳裏に何故だか嫌な予感が走る。死の間際、羆は恨みの篭った目でこちらを睨んでいたのだ。


 処刑する直前の、人間のような目だ。






 それも当然のこと。


 いかな野生とて、森の神とて、自らを殺した他者を恨むのである。


 人と獣、その間には知能の差があるに過ぎない。






 「な、何だ⁉︎」


 最初に違和感に気付いたのは、村の端に配置されていた一人の開拓民である。


 程なくして村にいる全ての人間が、その明らかな異変に気付くことになった。


 大地が、森が震えている。


 何が起こっている?


 そして彼らは恐ろしい光景を目にした。


 村の周りに配置された狼煙台の全てから煙が上がっている。監視役に命令されているのは、羆が現れたときは狼煙を上げろ、その一言である。


 考えたくはなかった。だがその光景を実際に目にすると、事実を認めるしかない。





 五、六……、いやこれは、数十……‼︎


 村を取り囲む森のあちこちから、何匹もの羆が現れた。





 晴政は思わず笑って、呟いた。


 「くそっ、何がつがいだ。手下だったんだ、西側の奴もこいつらも……。


 今、殺したでかい羆の手下だったんだ……‼︎」






 有史以来、人間を最も殺したものは何か?


 刃物か、権力か、はたまた戦争か?


 ()(あら)ず。


 人がそれを恐れようが、敬おうが、意思などなく、それはただそこにあるのみ。






 人々を育む[自然]こそが時として牙を剥き、一個の生命には成し得ない、比類なき死をもたらすのだ。






ランキング載ったおかげでアクセスが急増しました。


嬉しいけど、基本的にこの作品はガバガバなので、感想欄では優しくしてね。


晴政との約束だぜ‼︎

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