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晴政脱走。

誰が毎朝7時投稿だと言った?


今回、セリフの中に一週間とか出てきますが、この時代の日本に太陽暦があったのか、とかいうツッコミは無しでお願いします。


だって分かり易いじゃん。



 天文14年(1545年)三戸城

 北信愛



 南部領にしては珍しく、辺りは温かい陽気に包まれていた。


 主君である南部晴政が朝廷での工作を終え、本拠へ帰還したある日のことである。


 


 「晴政様が消えた?」




 年貢の徴収が一段落し、結果を主に報告しようと三戸城へ登城した信愛は、城内で働いている下女からそう告げられた。


 「はい……、一週間程前でしょうか」




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 

 一週間前



 「あぁ〜‼︎もうやってられるか‼︎」


 「は、晴政様、どうなされたので?」


 「帰ってゆっくりしようと思ってたのに、仕事仕事仕事‼︎もう二ヶ月は休んでないぞ‼︎」


 「しかし南部家の政務は晴政様がいないと何も始まりませぬ……」


 「それがおかしいと言っているのだ‼︎もういい、オレは息抜きにしばらくどこかへ遊びに行くから、たまにはオレ無しでやってみろ‼︎ほらハンコやるから‼︎お前がしばらくの間、南部晴政だ‼︎」

 

 「そんな‼︎無茶苦茶です‼︎あぁっ、待って下さい晴政様‼︎晴政様ああああぁぁぁぁぁ‼︎‼︎」




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




 「という感じで、晴政様は小姓に花印を渡して、どこかに行ってしまわれました。始めは冗談だろうと思っていたのですが、いつまで経っても帰って来ず……、捜索隊を出そうにも、えぇっと……」


 「どうした、何か問題でも?」


 信愛が女中にそう尋ねると、彼女は気まずそうに部屋の壁を指差す。

 

 


 [探さないで下さい、命令です]


 


 そこには無駄に達筆な文字で書かれた、城の下働きの者では逆らうことの出来ない主の意向が書かれていた。


 信愛は大きな溜息をつくと、部屋を後にする。直感で大冒険になりそうだと思い大掛かりな支度をすると、何人かの者を引き連れ晴政を探しに出掛けるのだった。


 



 青空に清々しい爽やかな笑みを浮かべた主君の顔が見えた気がした。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




 何をするにもヒントが無さ過ぎる。聞き込みから始めないと埒が開かない。そう判断した信愛は城下での晴政の目撃情報を集め始めた。


 しかし、手がかりは一向に掴めない。


 無理もない、城下に住んでいるのは南部領の発展に伴って、最近住み始めた商人達なのだ。晴政の顔を知らない者も多い。


 すっかり疲れてしまった信愛は、その辺りの茶屋に入り休息を取ることにした。


 店に入り程なくすると、店の女主人が茶を持って来る。


 「ふふふっ、御立派なお武家様ねえ。刀差してるだけで踏ん反り返ってる、そこらの浪人とは立ち振る舞いからして違うわ」


 「ご冗談を、我が主君に比べたら私も見た目だけの人間です」


 「あらあら見た目だけじゃなくて、謙虚で中身まで格好良いのねえ。あの乱暴な浪人達も皆あなたみたいだったら良いのに……」


 「何かお困り事でも?私で良かったら力になりましょう」


 「ああ、ごめんなさい。もう解決はしているのよ。あれは確か一週間程前だったかしら」




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




 その日の茶屋には、最悪の客人が訪れていた。


 「おう婆さん、相変わらず寂れた店だな」


 最近この辺りで様々な悪事を働いているという浪人達。茶屋にも度々訪れて、無銭飲食をして帰って行く迷惑な客だった。


 彼らは逃げ足が速く、南部家の武士達も彼らを捕らえようと躍起になっているが、通報を受け駆けつけたときにはいつもどこかへ消えている。


 領民は彼らが捕まるまでの間は、泣き寝入りをするしかないのが現状だ。


 「どうぞ……」


 店で暴れられては困る。


 いつも通り大人しく言うことを聞いて、穏便に帰ってもらおう。そう思って恐る恐る茶と菓子を出す。


 彼らは店で大声で下品な話をしたり、他の客を脅したり迷惑な行為をしたが、逆に言えばそれだけで、刀傷沙汰などにはならず、帰ってくれればそれで良い。


 彼らがいつもの様に代金を払わず、店を出ようとしたその時だった。




 「おい、あんたら。金払うの忘れてるぞ」




 店の出入り口の側に行儀悪く座り、酒を飲んでいた男が、浪人達を呼び止めた。


 髪の毛も髭もボサボサで、身なりは浪人達とそう変わらない。目付きに至って彼らよりも悪い。こちらもどこぞの浪人だろうか?


 男に呼び止められた浪人達は当然の如く激昂した。


 「あん、テメェ喧嘩売ってんのか?こんな店に代金なんざ払わなくて良いんだよ。こちとら昨日だって隣の村で舐めた真似したガキをぶっ殺してやったんだぜ?テメェもそうなりたくなかったら」


 男達が言葉を言い切る前に、異変が起こる。


 だらだらと昼間から酒を飲んで俯いていた男が、突然素早く立ち上がったかと思うと、男を脅していた浪人に向かって手を突き出した。


 


 突き出された手は迷い無く浪人の顔面に伸びて行き、()()()()()()()()()




 「⁉︎っぎゃああああぁぁぁぁぁ‼︎‼︎」


 「もっぺん言ってみろよおい、南部の領民を、それも子供を殺したんだな?えぇ?」


 のたうち回る浪人の男を逃げられない様に抑えつけ、ぐりぐりと目玉を更に抉って行く。


 「て、テメェ‼︎」


 あまりに突然の事態に、固まっていた他の浪人が仲間を助けようと男へ向かう。


 男はそれを見て眼球を引きずり出すと、倒れる浪人の顔面を強かに踏みつける。


 向かって来た浪人の方へ振り返り、掴み掛かろうとする浪人の指を躊躇なく掴むと、本来なら曲がらない方向に折り曲げた。


 ボキッという音が呆然とする女主人の耳にまで聞こえた。


 男は骨折した指を離さず、そのまま浪人を振り回し勢いをつけるとその頭に強烈な頭突きを繰り出した。


 「があああぁぁぁぁ‼︎」


 指を折られ頭から血を吹き出しながら、浪人は倒れ伏した。


 男は倒れた浪人の顔面を踏み付けて、残った3人の浪人に向き直る。


 「くそっ‼︎殺せ‼︎」


 3人の浪人は一瞬で2人の仲間を倒した男に、恐れを抱きながら刀を抜く。


 それでも男は焦りを見せず、驚くほど冷たい声で呟く。




 「左様(さよ)か」




 男は壁に立て掛けてあった、布に巻かれた長い何かを抜き払った。


 女主人は瞠目した。


 釣竿か、何かだと思っていた布の中身は、絵でしか見たことがない。


 長柄の先に鋭い刃を取り付けた武器、薙刀だった。




 「研ぎは荒いし、刃は鎌倉刀より分厚く作ってある。殺すための武器だ。斬られたら痛いぞ?」


 「ひっ」




 浪人達が怯む。男はその隙を見逃さず、さっきまで飲んでいた酒を投げ付けた。先頭にいた浪人は、酒で一瞬視界が潰される。


 遠心力のついた薙刀の一撃が叩き込まれ、真紅の袈裟が咲いた。


 絶命した浪人の手から刀を奪い取り、残った2人の内、片方には刀を投げつけ、もう片方には浪人の死体を押し付ける。


 2人の浪人は、それぞれの対応に追われる。


 男はその隙に悠々と薙刀を振りかぶり力を溜めると、押し付けた死体と投げた刀ごと、横一文字に間合にあるもの全てを断ち切った。


 男は切った3人には見向きもせず、地面にうずくまる最初に倒した2人に歩み寄り、その喉元に薙刀を突き立てた。


 



 気付けばたった数秒で、


 店内に5人分の血が散乱していた。





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 

 その後男は掃除代として代金を多目に払って茶屋を出て行ったという。


 「そ、それは大変なことがありましたね」


 信愛は戦慄していた。人死にには慣れたものだがそれはあくまで戦場の話、真昼間の往来でそんな大暴れをする馬鹿がいるとは。


 「ほんとよ‼︎確かにあの迷惑な浪人達をやっつけてくれたのはありがたいけどさ、その男の方もきっとまともな奴じゃ無いわよ。何より目付きが怖かったし、あれはきっと3桁は殺してるわね」


 「そこまでですか……、確かに気になりますね。そこまでの武勇の士だったら南部家に仕官してくれると、良い戦力になるかも知れません」


 「ええっ、やめといた方が良いわよ。あんな野蛮な奴、南部様の家臣に相応しくないわ」


 「まあまあ落ち着いて、どんな方だったんですか?顔とか身長とか」


 「あっ、任せて。絵には自信あるのよ」


 女主人はさらさらと木の棒で、地面に似顔絵を描いていく。そしてしばらくすると、非常に見覚えのある胡散臭い髭面がそこに現れた。


 「……ちなみにその方、どんな服着てました?」


 「変なこと聞くのね。あんなの忘れもしないわ、服も足袋も、その薙刀だって全部真っ黒けよ」

 

 「……何か言いませんでしたか?どこに行くとか」


 「うーん、そういえば蝦夷(北海道)に行くとか言ってたような……、とんだ物好きがいたものよね」


 「全くもって同感です」





 

 北信愛、晴政を追って北へ。






ああ⁉︎晴政がまたもや大暴れ‼︎


何だこのバーバリアンは……、たまげたなあ。


そして驚くなかれ、作者はこれを日常回のつもりで書いている。

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