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帰郷

4ヶ月後の大晦日……朱莉は宗介と共に故郷へと帰ってきていた。


既に面識のある朱莉の両親達が車で駅まで迎えにきてくれており、4人で車へと乗り込む。


「ほら、気をつけて」


宗介は後部座席の扉を開くと、朱莉の乗車を横でサポートする。


「もう、大袈裟だよ。

乗り慣れてる車なんだから」


「そうは言っても、もう一人の身体じゃないんだから」


「そうだぞ!

ちゃんと母子共に健康にして、元気な孫の顔を見せてもらわないといけないからな」


「うふふ、本当にそうよね」


そう……朱莉のお腹の中には既に新しい命が宿っていた。


大事そうに自分のお腹をさする左手の小指には光る指輪が見えた。


宗佑がそっとその手に添えるように自身の左手を添えたのだが、その手にも同じように指輪の宝石が光っていた。


正式な式はまた後日という話になっているのだが、妊娠が発覚した時点で両親に結婚の了承を取り付け、その日のうち指輪を用意して役所に届け出を出し、その後に事務所を通して結婚を発表したというわけである。


「こんな事になってしまったにも関わらず、お義父様とお義母様には快く許可を頂き本当に感謝の心しかありません。

朱莉さんが学生結婚をするというのは不安もあったでしょうに」


「いやいや、宗介くんが相手ならば心配など皆無だよ。

寧ろ娘の結婚に孫まで付いてきて最高にハッピーな報告だったよな、母さん」


「ええ、本当に。

宗介さんなら安心して朱莉を任せられますわ」


「お父さん……お母さん……本当にありがとう」


結婚の経緯は世間体は悪く聞こえるかもしれないが、当人達にとっては最高に良い結果になったと言えるだろう。


そのまま和やかに会話をしながら自宅前に到着する。


すると、そこに偶然にも圭太の母親が通りかかった。


「あら、お帰りなさい……って、朱莉ちゃん帰ってきてたのね!

こんなに綺麗になっちゃって!」


「おばさん、ただいま!

あ、宗介さん。

この人は私が幼い頃からお世話になっていて、私は第二の母親と慕っているんですよ」


車から降りてきた朱莉を見かけて声をかける圭太母に答えつつ、朱莉は降車を手伝ってくれた宗介に紹介をする。


「そうなんですね。

朱莉にとって母親であるならば、僕にとっても同様です。

こちらに滞在している間はよろしくお願いします」


宗介がそう言って微笑みながら握手を求めると、圭太母は顔を真っ赤にしながら握手に応じた。


「あらあら、こんな素敵な人にそんなこと言われたら照れてしまって仕方ないね。

朱莉ちゃん、この人はどうゆう……」


関係を聞こうとした時に気づいてしまった……仲睦まじげに隣り合う二人の薬指にお揃いの指輪がある事に。


そして、時折愛おしそうにお腹を撫でる朱莉。


その時点で全てを察してしまった圭太母。


「あ、ごめんなさい。

痛みやすいものを運んでいる最中だったから一旦家に帰るわね。

また、後で挨拶に行くわ!」


圭太母はそう言うと急いで自分の家へと向かっていった。


いまだに何も知らないのであろう息子に、残酷な真実を伝えるために。


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