終わりと始まり
黒い炎を纏った謎の存在を倒したレオは獣人の村へと帰ります……
異変の元凶らしき存在を倒した後、俺達はエントへ報告し、獣人の村へと戻った。
「流石兄貴だ!」
「俺達が手も足も出なかった奴らの親玉をもう……やはり兄貴は救世主!」
「兄貴は救世主! 救世主兄貴!」
村の入口で俺達の帰りを待っていたエンゾ達に何かあったのかを簡単に説明しただけでこんな騒ぎになってしまった。
(オイオイ、いくら何でもはしゃぎ過ぎだろ!)
まあ、気持ちが全く分からないわけじゃないがな……って救世主兄貴って何だ?
「いや、アイラや精霊にも力を借りたし、まだ油断は出来ないし……」
そんなことをつらつらと口にしていると、村の防衛のために残ってくれるように頼んでいたエレインがやってきた。
(良かった! エレインなら上手く説明してくれるはずだ!)
エレインは何たって精霊守であるアイラの護衛で、ルースリーの里のエルフなんだ。精霊の凄さについては誰よりも詳しいはず!
「レオ様の仰る通りです。精霊の加護の力はがあれば魔に屈する必要はありません!」
おおっ! 流石エレイン! デキる女だ!
「そして、レオ様は精霊から“導き手”として選ばれた方であり、大精霊タイタンにも認められた方! まさしく救世主なのです!」
は、はぁぁぁ?
(違うだろ、エレイン!)
いや、間違ったことは言ってないが、俺が言って欲しいのは……
「おおっ! やはり兄貴はすげー!」
「兄貴はやはり救世主!」
「俺、兄貴に一生ついていきますぜ、姉御!」
エレインの檄でまたもやエンゾ達のテンションが上がっていく。オイオイ、一体どう収拾をつけるつもりなんだ……?
*
(エリオット視点)
(あ〜あ、やられちゃったか……)
奴は跡形もなく消滅してしまい、残ったのは僅かな染みだけ……流石にこれでは修復も再生も出来ない。
(ま、データは取れたから良いけど)
ただ精霊守暗殺については別の手立てを考えないとな……まあ、何とでもなるだろうけど。
「……サ」
ん? 今、声がしたか?
「イキ……」
やはり声……しかもこれはアイツの……
(嘘だろ? 体は完全に消滅してるんだぞ!)
目には何も見えない。が、確かにそこに在ると分かるような存在感がある。いや、これは存在感というよりプレッシャーに近い!?
(まさか堕石が? いや……)
俺があのザガリーとか言う男に埋め込んだ黒い石、堕石はそのものの在り方を歪め、変異させる力がある。俺はその力で様々な体を持った化け物を生み出してきたのだが、まさかコイツ……
(体だけでなく魂まで変異させたとでも言うのか!?)
勿論、分かってやっているはずはない。が、この男の底しれぬ欲……祭器を求める妄執が堕石の力を取り込み、利用していると言うなら、あり得ない話じゃない。
「サイ……サイキ……サイ……キ」
声とプレッシャーは段々強くなる。そして、遂にそれは陽炎のような姿になった。
「化け物め!」
全く気持ち悪い奴だ! ただの実験体の癖に生意気な……僕の想定外の変化をするなんて、許されることじゃないぞ!
ユラリ……
僕が睨みつけると陽炎はそれに反応するように揺らめき、そして……
「〈凍剣〉!」
僅かに僕の方へ伸びた体に向かって魔法を撃ち込む。が、相手は実体さえ危うい存在。効果はほとんどない。それどころか……
(こいつ……僕に近づいてくる!?)
亀が這うような鈍い動きだが、僕に気づき、近づいてくる。こいつ、一体何のつもりだ!
「〈凍剣〉! 〈凍剣〉! 〈凍剣〉ッ!」
次々に魔法を撃ち込むが、あまり効果はない。いや、気の所為かも知れないが、こいつ段々大きくなってないか!?
(僕の〈凍剣〉をエネルギーに? いや……)
僕の注目自体が存在の安定に繋がってる? いや……
(馬鹿な! だとしたら、もはやそれは生物どころか精──)
僕が攻撃すればするほど、奴は大きく、そして確かな実体を得ていく。そして、俺へと体を広げてくる!
(くそ! 注目したら……奴の存在を認めたら駄目だ!)
だが、こんな気持ち悪い奴を無視するなんて無理だ。だって、もう死んでる癖に抗って……無茶苦茶だ!
(お前はもう終わってる。祭器を手に入れようともうそれは変わらないんだよ!)
だから、最後に使ってやろうと思ったのに!
(お前はあの完成体のための……姉さんのための素材なんだよッ!)
だから消えろ! 消えろッ!
「〈大凍剣〉!」
僕の全魔力を注ぎ込んだ大魔法……しかし、奴の体はそれをも呑み込むほどに大きくなって……
「エリオット!」
僕が死を予感したその時、聞き慣れた声がした……
読んで頂きありがとうございました!
次話は来週の昼12時に投稿します。
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