妄執
まさかの遭遇……レオは何とか出来るのか!?
(レオ視点)
「サイ……キ! サイキ!!!」
うわ言……いや、まるで呪詛のようにそう呟きながら俺に飛びかかる。
(まさかこんなタイミングでこいつに会うなんて……)
しかも、”サイキ“ってまさか祭器のことか? 祭器を使ったから出てきたってことか?
(分からないが、それならとりあえず……)
ロザラムの祭器をしまい、ミスリルの剣を出して俺に向かって振るわれた腕を防いだ。
(がっ……重いッ!)
それにミスリルの剣で切れないくらいに硬い。腕に篭手のように巻き付いてる黒い炎のせいだろうか。奴の全身は黒い炎が靄のように巻き付いているが、腕はその靄の濃度が段違いなのだ。
「レオさんっ!」
バババッ!
奴の背中に石礫が当たる。アイラの〈石弾〉だ。
(ナイスだ、アイラ!)
俺とこいつが密着し過ぎてるから小規模な攻撃魔法でしか援護は出来ない。が、注意を逸らす効果はある。その隙を狙えば……
「サ……サイキヲ!」
が、奴はアイラには目もくれず、俺に向けた腕に更に力を込める。
(効いてないのか!? いや……)
どちらかと言うと注意が一つのものに向き過ぎてる感じか。
「グッ!」
更に強まる力に危険を感じた俺はミスリルの剣で奴の腕をいなして距離を取ろうとする。が、奴は再び俺に突進し、黒い炎に覆われた腕を振るってくる!
ブン! カン! ブン! カン!
さっきみたいに押し合いになると不利だから、今度は振るわれる腕をミスリルの剣で弾いて防御する。が、奴の力はやたら強く、弾くだけでも大きく態勢を崩されてしまう!
”レオ、大丈夫!?“
ハーディアの念話だ。
(大丈夫だ。アイラを頼む)
そう答えたものの、何か策があるわけじゃない。今のところ防御に精一杯で攻撃する暇さえないしな……
ブン! カン! ブン! カン!
奴は止まることなく腕を振り続ける。攻撃パターンは単調だが、とにかくパワーとスピードが半端ない。
(何か糸口は……)
俺の心に少し焦りが生まれたその時……
“!!!”
(シオン!)
シオンの呼びかけに従って奴の胸元にチラリと視線を向ける。すると、そこには何か石のようなものが埋まっていた。
(あれは……?)
黒っぽい石……アウルベア亜種につけられていた石に似てるな。
(こいつもあの石の影響でこうなったんだとしたら、あそこを攻撃すればもしかして……)
一か八かの賭け……だが、今のままじゃどうにもならないしな。
(ロザラムの祭器よ、頼めるか?)
俺の想いに応えた祭器は突然上空へと飛ぶ。咄嗟のことだったが、ヤツは遅れることなく反応した!
「サイキ!」
ヤツは俺から注意を逸らし、宙に飛び出した祭器へと手を伸ばした!
(今だ!)
俺は武器をミスリルの剣から自分の祭器に変え、胸にある石をついた!
バキッ!
何かが割れるような音と共に石に亀裂が走る。そして……
「ガ……ガガガガッ!」
突然ヤツは地に伏せたかと思うと辺りをのたうち回り始めた!
(やったか?)
地面に落ちてきたロザラムの祭器を受け止めて─その瞬間、祭器は左腕に装着された──、距離を取る。
「レオ、今だ!」
「ああ!」
俺はロザラムの祭器をヤツに向けた。
「いくぞっ!」
バババッ!
ヤツを焼きつくすかのようにロザラムの祭器から矢が連続で発射される! さらにアイラとハーディアからも精霊魔法が放たれて……
ドッカーン!
次々に放たれた魔法力が干渉しあい、爆音が鳴り響く。大気さえ悲鳴を上げる攻撃にヤツの体は当然耐えられるはずもなく……
ドロドロ……
俺達の攻撃で傷ついた腕が、足が泥のように溶けていく。そして、最後には黒い染みだけが残った。
“……やったのか?”
俺はなおも警戒を解かずにハーディアに尋ねる。俺の祭器は現れると同時に糸を撒いてくれたから、既に念話で話が出来るようになっている。
”流石にもう終わったと思いますが……“
原型どころか最早ヤツがいた痕跡さえほとんど残ってない。が、アイラもまだ警戒しているみたいだ。
“念には念を入れて、結界を貼ろう。レオ、手伝ってくれる?”
“ああ”
”じゃあ、祭器で……“
俺はハーディアに言われた通りにモップの網手を伸ばし、黒い染みを囲う。すると、囲われた空間が光に包まれた。
“これでとりあえず大丈夫“
ふぅ……これで解決かな。しかし、一体あいつは何だったんだろうな。
読んで頂きありがとうございました!
次話は来週の昼12時に投稿します。
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