現場
ドライアドが襲われた場所へたどり着いたレオ達。そこにあったのは……
ドライアドの記憶にあった場所にはあちこちに生々しい戦闘の跡が残っていた。が、それよりも目立ったのが……
「この焦げたみたいに黒くなってる場所……嫌な感じがしますね」
「ああ」
アイラはドライアドの記憶にあった場所のあちこちにある黒く変色した場所を指さす。一見焼けただけのように見えるが、確かに何か嫌な感じがする。
「……黒く変色した部分には精霊の力が働いてない」
変色していた部分をあれこれと調べていたハーディアがボソリとそう呟く。
(精霊の力が働いてない……ってことは植物が生えない場所になったってことか?)
アイラとハーディアから習ったんだが、この世の全ての命の営みには精霊の力が関与しているらしい。だから、精霊の力がなければ雑草さえ生えないってことだ。
「そうだね。だけど、それ以外にも良くないことが色々あるね」
ハーディアは黒く変色した部分から目を話さずに俺にそう答えた。まあ、そうだろうなぁ。
(しかし、どうしたら元に戻るのかな)
このままじゃ良くないことは分かるけど……ま、ハーディアとアイラがいるんだから何とかなるか。
「よし、ここはレオの出番だね!」
「え、俺!」
ハーディアやアイラじゃなくてか?
「精霊を呼んで再生させたいところだけど、このままじゃね……一度あの黒い炎みたいなものの影響を消さないと」
あの変色した部分には毒みたいなものがあるって感じか?
(黒い炎の影響を消す……どうしたら良いかな)
そう思った瞬間……
”私の出番ですね“
これはロザラムの祭器か?
(森を元に戻すために力を貸してくれ!)
俺がそう呼びかけた瞬間、左腕にロザラムの祭器が現れた!
「ロザラムの祭器ですね!」
「凄いよ、レオ! ロザラムの祭器とも完璧に同調できてるね」
二人がそう褒めてくれる。けど、別に俺が凄い訳じゃないけど……
(まあ、とにかく今は集中だ)
俺は祭器を構え、黒く変色した部分に狙いをつけた。
バシュ!
狙い通りロザラムの祭器から射出された矢が命中! そして……
ボゥ!
突き刺さった矢を中心に炎が立ち上る。炎は不思議と黒く変色した部分以外には燃え広がらない。
シュゥゥ……
炎は赤、青、白、黄色など様々な色に変わった後に消える。これで終わったのか?
「完璧だよ、レオ! 精霊が集まり始めてる!」
見た目はまだ黒っぽいけど、これで良いみたいだな。
「そんな感じで引き続きお願い!」
「分かった」
俺は同じように黒く変色した部分へ矢を当てていく。
(もうちょっとで終わりかな……)
残るは数ヶ所……となったその時、それは起った。
ビリビリ……バリバリバリバリ!
聞いたことがないような音と共に空にヒビが入る。呆気に取られる俺達を前にヒビはドンドン広がり、そして……
バリィィン!
破れた空と共に現れたのは、黒炎のような靄を纏った──
「サ……イ……ヨ……コセ!」
それは俺めがけて一直線に向かってきた!
*
(エリオット視点──時間はレオが祭器を使う直前にまで遡ります)
(回復まであと半日ってとこかな)
俺は計器が示す数字を見ながらそう判断した。じれったいが、こればかりは仕方ない。何せ本来相容れないものを混ぜ合わせようとしてるんだからな。
(だが、いよいよ最終段階だ。あと半日で俺の最高傑作が誕生する!)
最初は凡作だと思ったんだが、途中から異常な成長を遂げたんだ。理由は分からないが、まあ良い。それよりも……
(くくく……堕石と完璧にシンクロ出来そうだ!)
次にこいつが目覚めた時………その時にはこいつの体は堕石に完璧に順応し、100%の力を発揮出来るだろう。
(その時にはあの精霊守を……って何だ?)
計器が急に異常な数字になっていく。馬鹿な、今まで何一つ問題なかったのに!
“サイ……キ”
喋った? 意識が戻りつつあるのか!?
”サイ……キヲヨコ……セ“
うわ言のような言葉と共に、男を入れていた水槽にヒビが入る。ま、まずい! 今外に出たら……
“ヨコセッ!”
その瞬間、水槽が弾け飛び、俺の視界は真っ白になった!
読んで頂きありがとうございました!
次話は来週の昼12時に投稿します。
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