歓喜と人気
エンゾが引き受けた実験とは……
「うぉぉぉ! これは凄いッ!」
魔物の群れを壊滅させたエンゾが歓喜の声を上げた。
「救世主様! 凄い、凄いですよ、この冒険プレートとか言うものの力は!」
俺がエンゾに頼んだのは彼にホムラの冒険者になって貰うこと。ロザラムを出る前に思いついたアイデアと言うのがこれだ。
(獣人達が冒険者になれば、スキルの恩恵で魔物と戦いやすくなる。で、ホムラとしても所属する冒険者が増えればクエスト達成数が増える……)
アイラやアメリアさんにも確認を取ったが、獣人を冒険者にすることには何の問題もないらしい。だから、これはどちらにも得がある考えだと思ったのだ。
「スゲーぜ、エンゾの兄貴! 元々強かったのにまさかそこまで強くなっちまうなんて!」
「ガハハハ! これも全て救世主様のおかげよ!」
「違うし、その“救世主様”ってのは止めてくれ」
エンゾにはもう何度もそう言ったのだが、今のところ直る見込みが全くない。だが、それ以外の部分の飲み込みはめちゃくちゃ早く、もうスキルもバリバリに使いこなしている。
(戦闘センスってやつがあるんだろうな)
ちなみにエンゾのステータスはこんな感じだ。
◆◆◆
エンゾ 獣人(男)
Lv 12
力 30
防御 16
魔力 2
精神 2
素早さ 30
スキル
〈剛連撃〉
◆◆◆
まあ、これは冒険者プレートを渡した直後のやつだからさっきの戦闘でレベルアップしてるかもだが。
(魔物は……片付いたな)
なら、次が来る前にやってしまうか。
「じゃあ、〈雑用〉で追加効果をつけるから来てくれ」
「先程話されていたものですね。謹んてお受けします」
エンゾが口調とは裏腹にウキウキした足取りで俺の方へやって来る。うん、上手く行きそうだな。
「良かったら君達も試してみてくれないか?」
俺は羨ましそうにしているエンゾの仲間達にも声をかけてみた。すると……
「良いんですか!」
「是非! あ、俺もボウケンシャってやつになりたいです」
「あ、ずるいぞ! 俺もです、救世主様!」
「お、おう。分かった」
エンゾの仲間達の熱気に圧倒されながらも俺はテキパキと作業をやっていった。こういう作業も早くなる〈雑用〉は本当に便利だとギルド長になってからは痛感するよ……
*
ミゲル達によって村の周囲に魔物がほぼいなくなったことが確認された後、俺とアイラ、そしてハーディアはドライアドの記憶にあった場所へ向かった。
(エンゾやミゲル達も大分強くなったし、エレインもいるから大丈夫だろう)
ちなみにエンゾ達もエレインのことは“姉御”と呼んで慕っている。多分、あのさっぱりした性格がウケてるんだろう。
「エレインの人気は凄いですよね」
「いや、アイラの人気も凄いぞ」
アイラはその神秘的な美貌に加え、ハーディアが常に傍にいることから巫女として崇める人がいるくらいの人気なのだ。
「それを言うならレオだって……」
「いや、”土地神様“には勝てないよ」
「ぐぐっ……レオ、それは言わない約束だよ!」
“土地神”の言葉を出され、ハーディアは渋い顔をした。まあ、知らないところで神様呼ばわりされるってのはちょっと困るよな。
(でも、本当に関係ないのかな……)
本人が知らないって言ってるんだから偶然の一致なんだろうけど……
「まあまあ。とにかく最初はどうなることかと思いましたが、何とかなりそうですね」
「ああ」
俺達自身のこともそうだが、あの様子だと冒険者やギルドについても獣人達に受け入れて貰える可能性は高いだろう。
(エンゾは何気に人望があるみたいだからな……)
村に戻ったエンゾは頼んでもいないのに興奮しながら冒険者プレートの効果について皆に話してくれた。戦闘力では皆に一目置かれているエンゾが語る冒険者プレートの効果にかなりの獣人達が興味津々のようだ。
「だから後はこの件を何とかしないとな」
「ええ」
「だね……」
精霊さえ支配下に置く謎の存在……それが人なのか魔物なのかさえ分からない。だが……
(そいつが今回の全ての元凶である可能性が高い)
ドライアドの話を通訳してくれたハーディアによれば、魔物達もあの黒い炎のような靄に覆われた奴の影響で活性化し、村を襲うようになったとのことだった。
(つまり、あいつを何とかすればこの騒動は収まる……か)
だが、そんな簡単に見つかるのだろうか……
「そろそろドライアドの話してくれた場所だよ」
ハーディアがそう教えてくれた場所は確かにドライアドの記憶と一致する。何か手がかりがみつかると良いが……
読んで頂きありがとうございました!
次話は来週の昼12時に投稿します。
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