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ドライアドの記憶

 何があったのかを知るためにレオは助けたドライアドの記憶を覗きます……

(……これは?)


 視界が一瞬真っ黒になった後、まるでまどろみから目覚めるように徐々に視界が広がり、鮮明になっていく。


(森……か?)


 眼の前には、樹木や花などの植物が生い茂っている。そして、所々にドライアドや精霊の眷属達の姿もある。


(そう言えば、ハーディアは”記憶の転送“とか言ってたな)


 ということは、これはドライアドの記憶ということか。


(……静かだなぁ)


 ドライアド達の生活は常に森共に在る。朝日を浴びて少しずつ少しずつ育っていく生活は一見変化に乏しいかも知れないが、俺にとっては好ましい。


(こうやって少しずつ森が広がっていくんだな)


 こうして静かな生活を送っていたドライアド達だが……


(ん? あれは何だ?)


 急に明らかにこの森に似つかわしくない何かが現れた。それは黒い炎のような靄を纏い、森を彷徨っては辺りを黒く汚していく。


(やめろ! せっかくここまで育ったのに!)


 何年……いや、何十年と時間をかけて育った緑が一瞬で黒く汚されていく。そんな不条理な光景は見ているだけの俺にさえ怒りを覚えさせるものだった。


(眷属達!)


 勿論、そんな不条理に眷属達が怒らぬ訳がない。森を汚し、損なうその存在に眷属達は雄々しく立ち向かったのだが……


(……くそっ)


 立ち向かった眷属達は次々に黒い炎のような靄で覆い尽くされ、支配されてしまう。そして、今度は森を汚す側になってしまうのだ。


(何なんだ、こいつは!)


 精霊やその眷属を支配する力を持つ存在なんて見たことも聞いたこともない。一体何なんだ、こいつは!


(……! 駄目だ、ドライアド!)


 森が、眷属達が次々にやられていくのを見たドライアドが遂に立ち上がる。しかし、その力はあまりに邪で……


 ブッ……


 黒い炎のような靄を纏ったあいつがドライアドと向きあったところで急に映像は途切れた。


“これで終わりだよ、レオ”


 ハーディアの声と共に視界に映る光景が変わっていく。真っ黒だった空間は次第に明るくなり、最後には俺が寝泊りさせてもらってる部屋へと戻った。


「どう? 何か分かった?」

「いや……何なんだろうな、あいつは」


 ハーディアの問いにそう答えた瞬間、脳裏にドライアドの見た最後の光景が蘇る。靄のせいで顔はおろか、全身の輪郭さえ曖昧な存在。しかし……


(……あれ、でも何処かで)


 だが、その既視感はそれ以上深まらず、逆に薄れていく。一体何に見覚えがあったんだ?


「そっか。まあ、そうだよね。ドライアドがあいつと出会った場所は分かりそうだけど、行ってみる?」


「ああ、そうだな」


 まだあいつがその場にいる可能性はかなり低い。が、何か手がかりはあるかもしれないしな。


 ピチピチ! ピチチチチ!


 そうこうしている間に小鳥の鳴き声と共に夜が明けてきた。一足早く準備を始めるか!



「今までのご無礼、どうかお許し下さいッ!」


「「「お許し下さいッ!」」」


 いよいよ出発しようかと言うタイミングで俺達の前に現れたのはエンゾとその仲間達だ。


(無礼って……何だっけ?)


 色々なことがあって忘れてたが、最初に俺達とは一緒に戦わないとかなんとか言ってたっけ?


「土地神の導きで旅する救世主様に対する数々の無礼と非礼……この罪はこのエンゾの首で贖いたく──」


「待て待て!」


 救世主って何だ!──じゃなくて、エンゾは刃物を自分の首筋にあてがい、今にも首を切り落としそうな勢いなのだ。


「レオは怒ってないから気にしなくていいよ……多分だけど」


 ハーディアがそう言うが、面倒くさそうな表情と末尾の“多分だけど”で全て台無しだ。


「怒ってないから! だから気にしなくていい」


 エンゾが何かを言い出す前に俺は慌ててそう言った。実際怒ってもないし、気にしてもいないのだ。


「別に俺はエンゾが無礼をしたとは思ってない。君なりに村を思ってした行動だろう? そして、今は俺のことを信用してくれたようだ。なら、もう何の問題もない」


 これは俺の本心だ。正直、俺はエンゾに共感さえ覚えてる。いきなりやってきて”これからは俺達が村を守る“とか言われれば、今まで村を必死に守ってきたエンゾ達が反感を持つのは当たり前だろう。


(だからこそ、これだけ慕われてるんだろうしな)


 エンゾと共に頭を地面に擦り付けている仲間達は最初から人数が減っていない。つまり、仲間は皆、エンゾと生死を共にするつもりだと言うことだ。


「し、しかしそれでは……」


 だが、エンゾは俺の言葉に戸惑ったように口籠る。まあ、確かになんにも無しで赦すとか言われても納得出来ないか。


(何か罰か、特別な仕事でもしないと駄目か?)


 うーん、どうよう……あ!


「じゃあ、ちょっと実験台になってくれ。それでチャラにしよう」


「実験台……分かりました! 全力でやります」


 実験台というのはエンゾのためにわざと大げさに言っただけだ。ずっと考えていたことだしな。エンゾが第一号になってくれるなら、願ったりかなったりだ。

 読んで頂きありがとうございました!

 次話は来週の昼12時に投稿します。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 黒い炎ですか。ドライアドすら屈服させる存在とは何か、まだ見当もつきません。 何のためにこのようなことをしたのかも不明な以上、後手に回らざるを得ないのがもどかしいですね。 エンゾを実験台に…
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