時間
視点は変わって彼らの話に……
〈エリオット視点〉
(まあまあかな……)
まあまあ。それが奴の仕上がり具合に対する評価だ。つまり、特別に良いわけじゃないが、悪くもないということだ。
(完成度は三割……といったところかな)
ザガリーとか言ったあの男……肉体のピークはとっくに過ぎてるが、とにかく欲が凄い。
(まあ、よくもそこまで自分に執着出来るな……)
勿論、その欲のおかげでここまでの力を持ったのだから文句を言いたい訳じゃないが。
(しかし力はそれなりについたとはいえ、まだ活動時間が短すぎるな……)
多分力だけならもうあの精霊守を殺すだけのものは持ってるだろう。こいつのパラメーターはもう常人の域は超えている上、精霊でさえ狂わせる力があるからな。
(まあ、まだ任務遂行までには時間がある。今は休ませないとな)
ザガリーだった存在は今、特殊な薬液の入った水槽の中で休眠中だ。奴に埋め込んだ石──名を堕石というが──は命のあり方を変えるもの。それは力を与える可能性があるが、その反面命を蝕むことにもなる。なので、完全に馴染むまではこうして休眠させる必要があるのだ。
(全裸のおっさんが水槽に入ってる絵ってのはキモいが……)
だが、この休眠時間は魔道具によるデータ収集の時間でもある。やきもきする時間ではあるが、必要な時間でもある。
(良いデータを頼むよ、実験体くん)
俺の目指す完成体、俺の理想を実現するあいつのために……
*
〈レオ視点〉
次の日の夜明け前、俺は突然ハーディアに叩き起こされた。
「レオ! 起きてってば、レオ!」
「どうしたんだよ、ハーディア……」
若者と違って朝早く目覚めたりはしない……ってまだ日が上ってないじゃないか。
「二人の治療が終わったんだ! ほら、出ておいでよ!」
「おい、待て、ハーディア!」
俺の制止を遮るようにして鹿の姿をした眷属が現れる。眷属はかなり立派な体をしているのでこの部屋では狭そうだ……ってまだ終わりじゃない!
ドサッ!
部屋の空いたスペース、つまりは俺の上にドライアドがちょこんと座った姿で現れる。うん、まあ、こうなるわな。
「ゴメン、レオ……」
小さくなったハーディアが俺の枕元で謝罪する。別に気持ちがしゅんとなったから小さくなっている訳じゃなく、単にスペースがないんだろう。
「いや、気持ちは分かるから気にするな」
俺がそう言うと、眷属は姿を消し、部屋にはドライアドとハーディアだけが残った。
(ハーディアはドライアドや眷属のことをかなり心配してたからな。ま、しゃーないだろう)
俺だって気になってたし。まあ、時間だけはネックだけど。
(あれ……そう言えば何でアイラのとこじゃないんだろう?)
アイラは精霊守だし……ハーディアと同じくらい心配なんじゃないかな。
「アイラはもう知ってるのか?」
「やだな、レオ。こんな時間にアイラを起こせる訳ないじゃないか」
俺ならいいんかいっ!
「冗談だよ、レオ! まだ夜だからね。アイラとは会えないんだ」
……???
「精霊ってそう言うものなのか?」
シオンもその他の精霊も時間に縛られてる感じはなかったが……
「いや、違うよ。僕は特別。凄い精霊だからね」
……良くわからないが、あまり突っ込まない方が良いのかな? 何だか訳ありみたいだし。
「レオのところに来たのはそう言う事情以外に、彼女が会いたがっていたってのもあるんだ」
そう言うと、ハーディアはドライアドを指した。ドライアドはいつの間にか、俺の体から降りて腰の辺りに座っている。
「助けてもらったお礼が言いたいみたい」
ハーディアがそう言うと、ドライアドはちょこんと頭を下げる。何だか可愛いな。
「それと伝えたいことがあるらしいんだけど、今からでも大丈夫?」
伝えたいこと? というか、何故確認?
(話が長くなるってことか?)
まあ、頭は完全に起きたし、皆が起きるまで時間もあるし、大丈夫か。
「ああ。大丈夫だ」
「じゃ、行くよ。ドライアドは人の言葉を話せないから記憶を転送するから」
何? ドライアドの記憶を転送だと? 聞いてないぞ!
読んで頂きありがとうございました!
次話は来週の昼12時に投稿します。
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