救出
エンゾをボコッた新手に向き合うレオでしたが……
俺は気合い十分にクレイジーウッドに向きあったのだったが……
ガサガサ……
何と俺を見るなり逃げ出したのだ!
(まあ、逃げるなら追わなくてもいいか……)
そんなふうに思っていると……
ビュッ!
突然クレイジーウッドに何かが巻き付いた!
(新手……!?)
クレイジーウッドには蔦のようなものが絡みつき、動きを封じている。いや、それだけじゃない!
ドクン、ドクン、ドクン……
クレイジーウッドが見る見る力尽きていく。生命力か何かを吸い上げているのか?
「皆、下がるんだ。今度のやつは雰囲気が違う!」
エレインは後ろで油断なく剣を構え、ミゲル達は距離を取って身を隠す。俺の指示を聞いたというよりは奴のヤバさを肌で感じ取っての行動って感じだな。
ガサッ!
クレイジーウッドが力尽き、文字通り枯れ木のようになると、それは姿を現した。
(!!!)
シオンが俺の中で何かを囁く。”これは魔物じゃない“だって?
(魔物じゃない……じゃあ、エントの眷属か? けど、姿が大分違うな)
目の前にいる相手は木の根が人の形をしたような姿をしている。ちなみに顔は長く伸びたツタのようなもので隠れて見えない。
「レオ様、逃げましょう。恐らく下級精霊のドライアドです」
エレインの囁きに俺は驚きを隠せなかった。
(下級精霊!……精霊でさえ操られているのか!)
下級精霊とはシオンと出会った例の谷底で戦ったことがある。が、あれは特定の属性を得る前に狂ったもので、言わば精霊のなり損ないだと後にアイラやハーディアに習った。
(しかも、場所も悪い……)
精霊は自然と深く結びついている。だから、自分の属性と関わりがある場所では力が強くなるのだ。植物を操るドライアドが森の中にいたら……それはもうどうしょうもない。
(けど……)
俺の中でシオンが必死に“助けてあげて”と訴えかける。二つの祭器も同じだ。
「皆は下がっていてくれ」
そう言うと俺は自分の祭器を出した。
(頼むぞ……力を貸してくれ)
すると、祭器は俺のつぶやきに応えるように形を変えた!
(これは……鎌か?)
先の方にある縄のような部分──房糸とか言うらしいが──が鎌のように孤をかいた形になっている。
(これで刈れってことか。よし……)
拘束するといっても今みたいに元気いっぱいの状態じゃ無理。どうにか弱らせなきゃいけないが、ホムラの祭器だと攻撃力が高すぎるからな。
(問題はドライアドの再生能力だが……)
以前、アイラとハーディアに木属性は再生力の高さが特徴だと習った。まあ、とにかくやってみるしか……
ブンッ!
ドライアドが伸ばしていたツタを絡め取るように刈る。予想以上の切れ味だ!
(よし、これなら前みたいに〈霊刀〉のスキルをつければ何とか……)
〈霊刀〉は実体がない相手にもダメージを与えられるようになるスキルだ。以前谷底の精霊と戦った時にもお世話になったスキルだから効き目は保証済──
(あれ……ツタが再生しない)
祭器で刈ったドライアドのツタが再生しないのだ。どうもドライアドにとっても予想外なようで戸惑っている感じだ。
(ん……刈った部分が凍ってるのか?)
よく見ると、ツタを刈った部分が凍っているのが見える。多分そのせいで再生することが出来ないんだろう。
(これなら必要以上に傷つけずに拘束出来るな)
俺は祭器を振るった!
ブン! ブン! ブン!
祭器で刈った部分が増えると、それは徐々にドライアドの全身へと広がっていく。そして凍った部分が広がれば広がるほど、ドライアドの動きは鈍っていく……
(よしっ……今だ!)
俺は〈網弾〉を放った!
「ッ!」
〈網弾〉が直撃したドライアドが身動きを封じられ、声にならない悲鳴を上げる。ちょっと可愛そうだが……
(シオン、行けるか?)
“!”
シオンの返事と共にドライアドの姿が消えていく。良かった、後はハーディアに見せるだけだな。
「レオ兄ちゃんスゲー! 何だよ、その武器は!」
わっ、ミゲルか! そういや、俺の祭器を見るのは初めてか。
「凄いです、レオさん! ドライアドを倒すなんて! しかも森の中でなんて!」
エレインまで! というか、距離近い!
「なっ……」
エンゾ達はあんぐりと口を開けたまま、声も出さない。どうも大分驚かせてしまったらしい。
「とりあえず村へ帰ろう! 話はそれからだ!」
皆の騒ぎは俺が声を枯らしてそう言っても中々治まらなかった。
読んで頂きありがとうございました!
次話は来週の昼12時に投稿します。
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