腑抜け
村長に紹介された村人と共に魔物と戦おうとするレオですが……
次の日、村長に声をかけられた獣人達を前に俺は作戦を説明した。
「……という作戦でやりたいと思う。質問は?」
作戦と言っても大したことはない。単に魔物が襲ってきたら協力して倒そうと言うことと、助けが欲しい時は言って欲しいと言うこと。さらに……
「つまり何か? あんたの作る朝食を食べたらいつも通りにやっていいってことか?」
集まった獣人達の中で一際大きく、強そうな若者がそう聞いてくる。彼の周りにいる獣人も含め、”信じられない“と言った顔だ。
「ああ。さっきも言ったが、これを食べればスキルを──」
「けっ! 馬鹿馬鹿しい!」
俺の返答を待たずにさっきの獣人は背を向けた。
「どうやって村長を丸め込んだのかは知らねーが、俺はお前を信用しねぇ! 村を守るのは俺達だ!」
そう言うと取り巻きと共に去っていく。血気盛んな若者って感じだな……
「ごめん、レオさん。エンゾさんも悪気があるわけじゃないだ」
ミゲルがそう声をかけてくる。そう、集まった獣人の中には彼もいたのだ。
(エンゾってのはさっきの獣人の名前かな)
若者のリーダーって感じだったが、相当強いんだろうな。
「いや、当然だと思うよ。まあ、ボチボチやるさ。ミゲルは食ってくよな?」
「うん! みんなも食ってけよ!」
「おう!」「ああ!」「頂きます!」
ミゲルの声に一緒にいた獣人の子どもが気合いの入った声を出す。彼らはミゲルの友達で、今回どうしても参加したいと言って聞かなかった子達らしい。
“戦闘は無理でしょうが、魔物の居場所を見つけることくらいは出来るかと思います”
村長は申し訳なさそうにそう言っていたな。まあ、魔物の居場所を教えてくれるだけでも助かるしな。
(さて、俺達も腹ごしらえをしておくか)
*
(エンゾ視点)
(けっ、気に食わねぇ!)
人間なんぞに頼ると聞いた時には村長もついにぼけたかと思ったが……何だよ、あのレオとか言う腑抜けた野郎は!
(舐めた態度を取られたのにかかっても来ねぇのか!)
人間は気にいらねぇ。だが、強いやつなら話は別だ。だから俺より強いなら言うことを聞いてやろうとわざと悪態をついたってのに……
(かかってくるどころか、文句さえ言わないだと……舐めてんのか!)
やっぱりぼけたか、あの村長……
(だが、まあ良い。この村を守るのは俺達だ!)
そう。今まで通り俺達が村を襲う魔物を倒して倒して倒しまくってやる!
「エンゾ、どうする?」
そう聞いてきた仲間に俺は少し大げさに笑ってみせた。
「人間が来たというから見に行ってみれば……とんだ腑抜けだったな! アッハッハ!」
「ああ」「確かに」「腑抜けだぜ」
皆が頷きあって同意する。そんな奴らを鼓舞すべく、俺は上機嫌な様子で話し続けた。
「まあ、別に邪魔をしないなら別に構わねぇよ。邪魔するなら張っ倒すだけだしな。俺達は今まで通り変わらねぇ。村を守るのは俺達だぜ!」
「おおっ!」「そうだ、そうだ!」「やるぜ!」
俺の勢いが皆にも伝染していく。よし、何とか士気が上がってきたな!
(魔物はいつ襲ってくるかわからねぇ……いつでも戦えるようにしないと)
だが、こいつらとならやれる。俺達の力で村を守りきって見せる!
(……ッ! この匂いッ)
魔物……しかも近いッ!
「どうした、エンゾ……って、魔物か」
「来るぞ! 準備しろ!」
仲間も気づいたな。
「よし、いつも通りにやるぞ! 武具を持ってこい!」
「「「オオッ!」」」
多くが準備のために散っていき、数人は俺と共に現場へ向かう。魔物め……コテンパンにしてやるからな!
(目にもの見せてやるよ、村長!)
村を襲ってきた魔物の死体を見せてやれば気づくだろう。この村を守るのは人間じゃなく、俺達だってことをな!
「ラァ!」
襲ってきたのはイビルマンキーの群れ。俺達は奴らの不意をつき、攻撃を仕掛けた!
「キキキキッ!」「ギッ!」「キキキキキッ!」
俺達の不意内に群れが混乱しているうちにバッタバッタとなぎ倒す。こいつらは連携すると面倒くさいからこうやって協力する暇を与えずに不意打ちするのが一番楽に倒せるんだ。
「来たぜ……ってもう終わりか」
「流石エンゾだぜ!」
武具を持ってきた仲間が来た時にはイビルマンキーは残り二〜三匹。仲間も揃い、何もかも俺達が優位に立った!
(そうだ……俺達ならやれる!)
よそ者の手なんて借りる必要はない。そうだ、俺達で村を守──
「なっ……何だ、あいつは!」
仲間の一人が指を指した先にいたのは、見たことのない生き物。なんだ、こいつは……
「油断するな! いつも通──」
その瞬間、視界が暗転した。
読んで頂きありがとうございました!
次話は来週の昼12時に投稿します。
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