荒療治
皆の力で氾濫した川を渡って進む一行ですが……
*掲載する順番を間違ってました! 申し訳ありませんm(_ _)m
俺達が出来た橋を進んで行くと……
「えっ、何だこれ!?」
ミゲルの声を聞き、馬車から出た俺の前には道を塞ぐように生い茂る木々が……
(これじゃ進めないな)
ミゲルによれば村はもうすぐらしいけど……
(って言うか、道ってこんなふうに塞がったりするものかな……)
そりゃ長年誰も通らなかったりしたら木も生えるんだろうけど……
「ここも精霊が荒れてる……」
「話を聞いてみるね」
俺の話を聞いた二人はすぐに外に出てきてくれた。さっきみたいにアイラは精霊の話を聞こうとするが……
「……駄目。怒りに囚われていて話を聞いてくれない」
え!? それってまさか……
「タイタンみたいに暴走してるってことか?」
例のスタンピードの時に祭器を通して受肉した大精霊タイタン。彼は不調をきたした祭器の影響で狂ってしまい、俺達と戦うことになったんだけど……
「あ、いえ、そこまでではないんです。声をかけても応えてくれないだけで……もっと大きな声で呼びかければ応えてくれるかも知れませんが」
アイラが言う”声“は日常的に会話に使っている声のことじゃない。
(確か精霊に呼びかける時には思いの強さが影響するんだったな)
ハーディアとアイラから教わったんだけど、思いを込めれば込めるほど精霊は呼びかけに応えてくれやすくなるらしい。
(さっきアイラが精霊に話しかけたのは挨拶レベルくらいなのかも知れないな)
見知らぬ人に最初から大声で話しかける奴はいない。多分、今のやり取りはそれに似ているんだろう。
「う〜ん。まあ、確かに叱りつけるくらいの勢いなら聞いてくれるかも知れないけど……ここは荒療治が必要かな」
荒療治……?
「レオ、ぶっ飛ばしちゃってよ。ロザラムの祭器でさ!」
なっ……
「確かに祭器で攻撃したら怒ってる精霊もびっくりして頭が冷えるかも」
「そこでアイラが話しかければ……」
「うんうん。そうだね、ハーディア!」
アイラとハーディアは何やら盛り上がってるが、大丈夫なのか?
「さ、レオ! ロザラムの祭器を出してみてよ」
ワクワクした目でハーディアが俺を見る。まさかロザラムの祭器が見たいからこんなことを言い出したんじゃないよな!?
(だけどまぁ……とりあえずやってみるか)
道を塞いでいる木を何とかしないといけないことには変わりない。それに……
(ロザラムの祭器もやる気みたいだし……)
“早く出してくれ”というか、”やってやる“というか……とにかくそんな思いをロザラムから感じるのだ。
(そういや、力を借りるのは初めてだな……頼むぞ!)
獣人達を助けるためにあの道を塞ぐ木を何とかしたいんだ……
ガシャン……
俺の左腕にロザラムの祭器が現れる。見た目はちょっと形の変わったボウガンって感じだが……
ガシャ、ガシャ、ガシャン!
うわっ……形が変わった!
(矢が増えた!?)
形を変えたロザラムの祭器は先端に四本の矢がセットされている。しかも矢じりが今までと変わってる……
「うわっ! 凄い! 形が変わってる!」
「カッコイイ〜!」
「流石祭器ですね!」
「ロザラムの祭器がレオさんの思いに応えてる……凄い」
ハーディア、ミゲル、エレイン、アイラがそれぞれ驚いた声を上げる。まあ、俺も驚いてるのは一緒だ。
「レオ、早く早く!」
ハーディアが興奮した声を上げて、ぴょんぴょん跳ねる。まるで子犬みたいだな……
(ま、それはともかく……やるか!)
お前の力を見せてくれ!
バババババッ!
ロザラムの祭器から次々に矢が発射される! さらにその矢は次々に装填され、無くなることがない!
ドカンドカンドカンドカン!!!
矢が木に当たると爆発し、道を塞いでいた木が吹き飛んでいく! うわっ、これ、凄い威力だな!
ヒューン……
こんなものかなと俺が思った瞬間、ロザラムの祭器は矢を止めた。
(綺麗になったな……ってあれは!)
鬱蒼と生い茂げる木々に塞がれていた道の先に建物らしきものが……あれがミゲルの村か?
“祭器を持つ者よ……世話になりました”
声!?
「大丈夫です、レオさん。この森の精霊です」
アイラはそう言うと一歩前へ出て俺と並ぶ。すると、眼の前に長い髪の女性の姿が現れた。
”おお……貴方は精霊守。私ともあろう者が今まで貴方に気づかなかったとは“
読んで頂きありがとうございました!
次話は来週月曜の昼12時に投稿します。
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