獣人
ハーディアが語る獣人達の生活は……
「そんな……じゃあ獣人達は普段どうやって魔物に対処してるんだ?」
そう言いつつも俺は獣人にも冒険者がいるんだろうとぼんやり考えていた。
(だけど、得手不得手ってものがあるし……)
魔法があまり得意じゃない獣人達なら魔法じゃないと効果が薄い魔物とかだと困るんじゃ……
「精霊の力なしで自力で対処してると思う。獣人に冒険者はいないから」
「なっ……」
ハーディアの言う”自力“って精霊の力──スキルの恩恵なしにという意味らしい。想像の斜め上を行く答えに俺は絶句した。
「獣人に冒険者がいないっていうのは、さっき言ってたエルフと獣人の仲が悪いことと何か関係があるの?」
アイラがそう聞くと、ハーディアは苦々しそうに頷いた。
「精霊の力を獣人が必要としなかった……みたいに伝わっていることが多いみたい。勿論、それが100%真実かと言うと怪しいような気はするけど」
つまり、エルフと獣人の仲の悪さは今も続いてるってことか。
「エルフはやたら寿命が長いからね。世代交代で消えていくはずの恨みや怒りも長続きしやすい。別に精霊としてはエルフも獣人も分け経たてなく助けたいんだけど」
なるほどな……
(さて、どうするか。心情的には受けてあげたい気もするが……)
普通の冒険者ギルドなら受けにくい依頼なのかも知れないが、どうもアイラやハーディアの様子を見ていると、この依頼を受けることに反対はしなさそうだ。
(けど、リスクもある……)
リスクとは言うまでもなく、金だ。遠い上にあまり報酬が貰えそうにない。本当に情けないが、今ホムラは赤字ギリギリの状態でとにかく金を稼がなきゃならないんだ。
(それに俺がギルドを空ければ、追加効果が付与できないから皆がこなせる依頼も少なくなる……)
つまり、金という面から見ると二重に痛いのだ。
(どうしたものかな……)
命が最優先なのは間違いない。だが、俺は仮にもギルド長。“人命優先の結果、赤字になりました”だけでは誰も納得しないだろう。
(俺達も獣人達も助かる……そんな方法は……)
*
次の日、準備を終えた俺達はホムラを出発した。
(クエストが終わったルイーザにミゲルを癒やして貰えて良かったか)
ミゲルは置いていこうと思ったんだが、本人の強い希望で連れて行かざるを得なかった。
(治療を受けて食事をしたら元気になるなんて……これが獣人の力か)
まあ、でもハーディアからは”体が衰弱してることに変わりはないから無理は禁物“と言われているし、気をつけないとな。
“それにしてもレオは面白いことを考えるね”
昨日俺の考えを聞いてからハーディアは何だか楽しそうだ。
(”嬉しそう“じゃなくて、“楽しそう”なのがハーディアっぽいよな)
まあ、我ながら大胆なことを思いついたもんだと思うが……
「もうっ、ハーディアったら! でも、私も賛成ですよ。精霊の力無しで魔物と戦わないといけないなんて可愛そうです」
俺のアイデアはホムラとしては一石二鳥だが、今までの常識からするとアウト。だから、ハーディアやアイラだけでなく、アメリアさん、ホムラの皆にも聞いてみたんだが、皆大賛成だった。
”私達エルフもおかしいと思ってたんです! 全力でサポートします!“
通信用の魔道具で話したアメリアさんからは激励の言葉まで頂いてしまった。
(後は獣人達の信頼を得られるかどうかだな……)
実は俺は獣人に会ったことはない。そもそも獣人は森の深くに住んでいて他種族とあまり交流がないのだ。
(あるとすれば、奴隷か……)
俺みたいな一般人が獣人と出会うとしたら、それは奴隷くらいだろう。人間が──それも極悪非道な奴らが──奴隷を求めて獣人の村を襲うことも稀にあるのだ。
(とにかくやってみるしかないか)
そのためにも出来るだけ早くミゲルの村に着きたい。俺達の馬車の御者に立候補してくれたエレインもやる気満々だし、大丈夫さ!
(説明のための資料とかあった方がいいかな……)
あ、俺のアイデア? それは……
読んで頂きありがとうございました!
次話は来週月曜の昼12時に投稿します。
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