好敵手
祭器との対話を終えたレオに語りかけて来たのはなんと倒したはずのタイタン!?
“見事な戦いだった。汝と戦えたことを誇りに思う”
(俺もです)
この言葉に嘘はない。大体、最後の攻撃もタイタンの凄さを信じた故のものだ。
(ルイーザを無視してアイラから先に狙われたりしたら大ピンチだったしな)
まあ、その時はその時で手段が無かった訳じゃないが……
“人の子よ……最後に名を教えてくれないか。我が最高の好敵手の名を来世も覚えておきたいのだ”
(レオです、タイタン様)
“レオか、良い名だ。それと我々は好敵手だ。次に会うときはもっと気楽にタイタンと呼んでくれ”
返事をしようとしたその時には既にタイタンの体は全て崩れて土になってしまった。
“タイタンにあそこまで言わせるなんて……凄いね、レオは”
(オレっていうか、皆の力だけどな)
皆が俺の無謀な作戦に協力してくれたおかげだ。
(皆に礼を言わないと──)
俺の意識はまるで幕が降りるように唐突に途切れた。
※
それから俺は三日三晩寝続けた。まあ、無理をしすぎたもんな。で、起きた時には心配そうなアイラとルイーザ、そして好奇心でウズウズしているハーティアに囲まれていた。
「みんな、大丈夫か?」
目が覚めるなりそう尋ねた俺に、ルイーザは苦笑しながら教えてくれたところによると、孤児院の子ども達も倉庫に避難していた人達も無事とのことだった。
(ルースリーの里からの援助も届きつつあって、復興作業も進んでる……良かった)
結果として祭器の暴走が早期に集結したことが良い結果に繋がったみたいだな。
「無茶し過ぎですよ、レオさん」
聞きたいことを教えてくれたあと、ルイーザはそう言って苦笑した。うーん、大分心配をかけてしまったみたいだな。
「ねえねえ、レオ! ロザラムの祭器が見つからないんだけど、ひょっとして……」
入れ替わるようにしてハーティアが前に出る。
(祭器……)
そう言えば最後に……
フッ
心の中で念じると、モップとクロスボウが現れた。やっぱりどちらも俺の中にあったようだ。
「……! やっぱり! レオはどちらの祭器にも選ばれたってことだね」
「いや、ホムラの祭器はとりあえずって感じだったけど?」
「そりゃそうですよ! 祭器を二つなんて前代未聞なんですから!」
アイラが興奮した様子でそう言うと、ルイーザも頷く。
(確かに凄いことなんだろうな……まあ、実感はないが)
とにかく必死だったからな……
「とりあえずゆっくりして下さい。まずは休まないと」
ルイーザはそう言って俺を寝かせようとするが……正直そんなにすぐには寝られない。何せ相当寝たからな。
(それに……)
祭器達が答えを求めて騒いでいるのを感じる。急かされている訳ではないようだが、とりあえず次に何をするかを考えないといけないようだ。
「悪い、ルイーザ。休む前に話を聞きたい人がいるんだ」
「えっ……」
ルイーザは驚いた顔をしている。ヒーラーの彼女からしたら、今の俺は養生するのが当たり前なんだろう。
(心配してくれているのに申し訳ないな……)
代わりに他のことはルイーザに言われる通りにしよう……苦い薬を飲むとか以外は。
「レオは誰に会いたいの?」
興味津々で身を乗り出すハーティアにアイラがそっとため息をつく。まあ、アイラの気持ちは分からないでもないが。
「実は……」
※
「お忙しいところすみません」
「いえいえ。私の方こそお会いしたかったので」
俺が話をしたかったのはアメリアさんだ。ロザラムまで来ているかどうか分からなかったのだが、来てくれていて良かった。
「とりあえずお礼を言わせて下さい。報酬についても十分なものを用意するつもりです」
「あ……はい。ありがとうございます」
お礼を言って貰えるのは嬉しいが……正直ただの結果オーライなんだよな。だから、報酬と言われてもな。
「正式にはまた改めてお礼を言わせてください。レオさんもまだまだ本調子ではないでしょうから」
みんなが心配してくれるほど調子が悪い訳じゃないが……まあ、皆の言葉に甘えておこう。
「ありがとうございます。実は……」
俺は祭器に囁かれている話をそのまま話した。
「なるほど……」
「いや、我ながら話がデカすぎて俺が決めて良い話とは思えないのですが」
「そんなことはありませんよ、レオさん」
アメリアさんは俺の言葉に首を振った。
「レオさんは真に祭器に選ばれた方なのです。ご自身の祭器もそうですが、ロザラムの祭器にも」
そう言うと、アメリアさんは俺の聞きたかったことに答えてくれた。
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次話は明日の昼12時に投稿します。
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