レオの答え
見ず知らず(?)の男の半生。それを見たレオは……
早々と副ギルド長になった彼だったが、快進撃はそこで止まった。何故ならギルド長になるためには……
“くそっ……何故俺は祭器に選ばれないんだ!”
何処かの部屋で男は一人、叫んでいる。
“何だって……俺は何だって手に入れてきた! なのに何故だ!”
何となく分かる気がする。村から出てきたばかりのオレもそれに近いことを思ってたからな。
(だからこそ、スキルが授からなかったなんて信じれなかった……)
誰でも一つ授かるはずなのに、何で……と。まあ、実際には授かっていたし、その経験があるから今のオレもあるわけだから、今となっては、まあ懐かしい思い出くらいのものだが。
(けど、この男は違うみたいだな……)
男は諦めなかった。まあ、そう言うと聞こえは良いのだが……
“ランクだ! ギルドのランクが低いから祭器に選ばれないんだ!”
男は自分が所属する冒険者ギルドのランクに固執し、強引な運営をし始めた。例えば、割に合わないクエストの破棄や冒険者に対するクエスト受注の強要等々……
(どれもバレたら処分を受けるようなことばかりだな……)
元ギルド職員のオレからしてみれば、何故そこまでして……と眉を顰めるようなことばかり。
(そうか……この祭器はそれが悲しかったのか)
この男には能力がある。だが、その使い方を間違った。もし、正しく努力していれば、いつか祭器に認められる日も来たかもしれないのに……
“貴方はどうなのですか?”
見知らぬ声が唐突にそう尋ねてきたが、オレは驚かなかった。何でかというと……何故かそう聞かれる気がしたからだ。
(間違わないなんてことは言えない)
だって今までたくさん間違えた。だから、これからもそうだ。
(ルールを破らないとも言い切れない)
個人的には破りたくないが、まあ、今ここにいる時点で厳密にはルール違反だしな。
(だけど、オレは誰かを……仲間を犠牲にはしたくない)
この男にとってギルド長という地位は何よりも勝るものだったみたいだが、オレは違う。こう言うと、この男よりもオレの方が人間が出来てるみたいな感じになるが、それは違う。いや、むしろ──
“何故ですか……?”
(だって、勿体ないから)
“勿体ない……?”
オレがこの映像をみて最初に思ったのが、これだった。
(だって、無理せず皆で協力すれば、絶対ランクは自然に上がっていったよな)
まあ、ギルドのランクを上げたら祭器に認められるかどうかはよくわからないが、やり方がとにかく勿体ない。だって、この男には能力があるんだから。
(オレは自分一人で出来ることで満足出来るほど人間が出来てないから、仲間と協力して色々やりたい。だから、仲間を切り捨てるようなやり方は勿体ないと思う)
もう少し綺麗な答えは言えないのかと我ながら思うが……でも、これが偽らざるオレの答えだ。
“なるほど……それで勿体ないと”
(ああ)
“………”
声の主は黙り込んだ。うーむ、駄目か?
(でも、嘘ついても仕方ないしな)
“不思議な人……優しく見えて欲深く、かといって他を搾取しようとしない。そして、それは勿体ないから……意味が分からない”
だよな……申し訳ない。
“だけど、その言葉には力を感じる。それが何を意味するのかが……知りたい”
何を意味する……か
“とりあえず私も貴方と共に行くとしよう”
その瞬間、黒い空間に白いヒビが入る。そのヒビはどんどん大きくなり……
*
“レオさん、レオさん!”
ハッ!
(アイラの声……)
気がつけば、荒れ果てたロザラムの中にオレは立っていた。
(あの空間は……)
いや、それよりも!
(タイタンや祭器は……あっ!)
周りはオレが祭器を掴んだ瞬間から変わっていないようだ。俺の左手には暴走していた祭器、そして祭器にはタイタンの額が……
ゴゴゴ……
出し抜けに地響き……地震か!?
“大丈夫だよ、落ち着いて!”
ハーディアはそう言うが、どう落ち着けと……と思っていると、タイタンの体が崩れ始めてる!
(祭器の暴走が止まった……?)
そう言えば、あまり深く考えてなかったが、祭器の暴走を止めればタイタンはどうなるんだ?
“受肉した精霊は肉体を失えば死ぬ”
なっ!
“案ずることはない。精霊界で再び転生するのだからな。我々の生死の概念は人間とは違う”
この声……タイタンか!
読んで頂きありがとうございました!
次話は明日の昼12時に投稿します。
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