総力戦
皆の力を結集したレオの作戦……通じるのか!?
“エレイン、行くよ!”
“お願いします!”
アイラの〈風弾:連爆〉が炸裂し、タイタンが声を上げる。地属性には風属性が効果が高いから流石のタイタンもたまらないみたいだ。
(日替わりスキルの魔法バースト化や魔力UP(大)が加わった中級精霊魔法……大精霊でも痛いよな)
中級の精霊魔法は今までに習得したものを強化していくタイプ。Lv1では威力を上げる連爆、効果持続時間を上げるものなど使えるようになるのだとか。
「オオオ!」
勿論タイタンもやられっぱなしという訳じゃない。奴は急所をガードしながらアイラ目がけて突っ込んできた!
ダッ!
打ち合わせ通りにアイラは走る。脚の長さを考えれば、本来逃げれるはずもない。が、ここは人間の街。タイタンが歩くには狭すぎるから自然と速力が落ちる。それに……
スパン! スパスパンッ!
アイラを追うタイタンの注意を分散するようにエレインが攻撃を加える。彼女は俺がタイタンの周りや道中にさっき仕掛けてきた糸を器用に使って空中戦を仕掛けているため、ヤツも苦戦している。
「ォオオオッ!」
とはいえ、タイタンにとってはこんなものは小細工。ヤツはアイラとの距離を着実に詰め、遂にあと少──
「タイタン、偉大なる大地の精霊よ! 行きます!」
高い建物の上に立ったルイーザがそう叫ぶ。顔が若干青いのはタイタンが怖いというより高所恐怖症だからみたいだが──
「オオオッ!」
最初に食らった閃光はタイタンも警戒してるのだろう。ヤツは近くにいるアイラを無視してルイーザの元に向かって走り出した!
ダッダッダッ!
タイタンが先程とは違い、全力で走る。そりゃそうだろう。再び閃光で視力を奪われたところにアイラの精霊魔法を食らえばいくらタイタンでも危ない。
(タイタンは魔物じゃないからそれが分かる。だから、ルイーザのスキルを全力で阻止しに来るはず!)
思っていた通り! 後は……
「エリオット、いいか?」
「はい、大丈夫です!」
俺はエリオットを連れて屋根の上に上がる。何故かというと……
ピン! ズドーン!
弾力のある糸と硬い糸を使って作ったぶっとい縄に躓いたタイタンが地面に倒れ込む。普段なら姿勢を崩すことさえないのかもしれない。が、アイラの攻撃とルイーザのスキルへの警戒で視野が狭まった今なら話は別だ。
(状況が理解できるからこそだな。流石精霊……いや、戦士だよ)
こんなセコい手は二度と通じないだろうな……
“レオ! 今だ、祭器だ!”
ハーディアの声に急かされるまでもなく、俺は走ってる。こんなチャンスが二度もあるはずないからな!
(よし、あった!)
タイタンの額に祭器が!
“とにかく祭器に触れて!”
(分かった!)
俺はハーディアに言われるがままに、夢中で祭器を握った!
*
(ここは?)
目が覚めると、目の前は真っ暗。あれ、俺は確か……
“ここは祭器の……そうだね、心の中って言ったらいいのかな?”
ハーディアの声だ。
(心の中……祭器に心が?)
道具に心があるなんて普通なら信じられないだろう。だが、タイタンとの戦いでのオレの祭器の働きを考えると何か納得がいく。
(つまり、この真っ暗な状態は祭器が普通の状態じゃないことを意味してるのか?)
“さっすがレオ! 理解が早い!”
まあ、何となくだがな。
(しかし、どうしたら良いのか……)
そんなことを考えていると、真っ暗な空間に映像が現れた。
(……誰だ?)
誰かは分からないが、魔物と戦っている映像だ。かなりの腕なんだろう。戦ってるのは巨大なオーガだろうか。
(……新しい映像が!)
しばらくすると、さっきの映像の隣に新たな映像が現れた。今度は……
(引退してギルド職員に……)
ふとそんな説明が心に浮かぶ。これはひょっとしたら祭器が教えてくれたのか?
(それにしても引退してギルド職員ってオレみたいだな……)
実はよくある話……という訳でもない。まず、冒険者が引退するまで生きてるという時点でかなりレアだ。末路は魔物の腹の中……ってのも正直ザラにある職業だ。
(まあ、オレはもうギルド職員じゃないけど……)
だが、そこからはオレとは全く違った。映像の男はどんどん出世し、遂に副ギルド長にまでのし上がったのだ。
読んで頂きありがとうございました!
次話は明日の昼12時に投稿します。
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