作戦開始
窮地……! どうなる!?
ドンッ!
まるで後ろから押されるような感触がして、オレは前に倒れるように屈み込む。
スッ!
背中スレスレにタイタンの拳が通過していく……
(一体何が!?)
後ろを見ると、ロープのようなものを持ったエリオットが。多分オレの背中を蹴ることでヤツの攻撃をかわす手伝いをしてくれたのだろう。
「大丈夫ですか? 〈ヒール〉!」
ルイーザが駆け寄り、回復スキルを発動する。それと共にオレは不思議な感覚をあじわった。
(なんだ? 体が軽くなるような……頭から靄が消えていくような……)
多分知らず知らずのうちにHPを削ったことで心身ともに影響が出ていたんだろう。
(数値上は変わってないはずなのにな)
もしかしたらHPとMPは単に数値の問題として考えたら不味いから普段ステータスで確認できないのかも知れない……って今はそんなことはどうでもいいか。
「レオさん、一人で突っ走ったら駄目ですよ。」
そうか……そうだな。今のオレには仲間がいるんだった。
(なのに一人で突っ走って……そんなんで上手く行くはずがないな)
自分の力を試すってことは一人で何でもやることとは違う。いや、そうだという人もいるかもしれないが、俺にとっては違うんだ。
「今、エレインさんとアイラさんが足止めしてますから、作戦を考えましょう」
ルイーザがそういった瞬間、オレはふと気づいた。
(あれ……オレ、いつの間にか勘違いしてたな)
何をやっても倒れないタイタン相手に焦っていたオレだが、そもそもタイタンを倒すことが目的じゃないよな。
(……なら、やりようは幾らでもあるじゃないか!)
我ながら視野が狭まっていたというか、何というか……まあ、反省は後だ。
(アイラ、ルイーザ、聞こえるか!)
*
(???視点)
何のためにここに居るのか。
何をすべきなのか。
タイタンの中にそれはない。ただただ、生み出される衝動のままに歩き、壊すだけ。
(僕と一緒か)
そんな思考が頭をよぎる。けど、僕はお前とは違うよ、タイタン。だって、大切なものがあるからね。
(よし、ここまではまずまず)
アクシデントは色々あった。まず、精霊守が精霊魔法を使えるようになったことだ。とっさに妨害したはずだったのだが……
(大体発動を妨害したにも関わらず、ギルドの入口付近にいた魔物が全滅したのは何でなんだ?)
妨害の影響で精々低級の魔法程度の威力しか無かったはずなのに。
(まあ、いいや。精霊がロザラムを破壊すれば精霊守の権威は失墜。後ろ盾であるルースリーの里も勢いを失う)
結果としては予定通り。タイタンが憑依した以上、もう誰にも止められない。それはタイタン自身でさえ例外じゃない。だって……
“コウゲキガヤンダナ……”
タイタンの思考……自我は押し潰したはずなのに!
(訝しんでる……くそっ、何も考えずに暴れてくれればいいのに)
自我、つまり心を取り去ったはずのタイタンだが、それでも残っているものがあるらしいな。
(戦士としての技術と思考。無計画に暴れているようだが、自らを攻撃してくる相手にはそれとは別に思考が働く、な)
おそらくそれはタイタンにとって心というより反射に近いものだからだ。
“皆、いいか? 作戦は以上だ。タイミングが命だから頼むぞ”
自分が発動したものじゃない念話が脳内に響く。これは一体どうやったのか……
(冒険者レオ、か。姉さんが集めた情報の中には無かった名だけど、厄介だな)
タイタン相手にあそこまで立ち回るとか有り得ないぞ。
(まあ、だからどうこうなるとは思えないけど)
とりあえずはお手並み拝見かな。ま、正体がバレない程度には手伝うけどね。
*
(レオ視点)
「……という段取りだが、皆行けるか?」
エレインやアイラが時間を稼いでくれている間に皆に作戦を伝えたのだが、どうかな……やはり無謀だろうか。
“了解です、レオ様!”
“やれます!”
“大丈夫です!”
“分かりました!”
エレイン、ルイーザ、アイラ、エリオットがそれぞれ勢いよく返答してくれる。
“しかし、レオは本当に面白いね。よくこんなことを思いつくな……”
ハーディアがいつものように呑気なことを言っているのは、上手く行きそうだからだろう。多分!
(じゃあ、作戦開始だ。エレインとアイラでルイーザのいるところまで誘導を頼む!)
読んで頂きありがとうございました!
次話は明日の昼12時に投稿します。
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