切り札
倒したはずが……倒せてない!?
フェイクゴブリンキングは白目を剥いたまま立ち上がる。すると、みるみるその姿が変貌していく!
グググッ!
角は引っ込み、体は引き締まった筋肉質の体に。デブっとした今までの体はまたたく間に変貌し、今やガッチリとしたたくましい体だ。それに伴い、体も少し大きくなっている。
(これはもう魔物というより……)
いや、そんなはずは……
“!!!”
シオン……ってことはやっぱり
「これはまさかタイタン……そんな」
“祭器を通じて地属性の大精霊が受肉したみたい。これは面倒だな……”
ハーディアがそう言いながら歯ぎしりする。こんなハーディア始めてだ。
「レオさん!」
「レオ様!」
「アイラ様! レオ様!」
ルイーザとエリオット、それにエレインか! さっきからの騒ぎを見て駆けつけてくれたのか。
「大規模な魔法の発動を感じてただ事ではないと思って……あれは何ですか?」
「一体何が? さっきの魔物は何処へ行ったんですか!?」
現場にいなかった二人にとってら最もな疑問だが、全部を説明している時間はないな……多分。
(ハーディア、どうすればいい? さっきまでみたいに倒せばなんとかなるのか?)
“そうだね……アイツも祭器の暴走のせいで現れたんだから、祭器を鎮めれば何とか。ほら、あれさ”
ハーディアに言われた方を向くとが額の辺りに何かが……あれはもしかして祭器か?
“あいつを倒して祭器に手にする、まずはそうしないと”
なるほど。内部に潜んでいた本体がようやく表に出てきた……ということにしよう。相手が魔物から精霊になったと考えるより大分楽だからな。
(鎮めるっていうのは具体的に何をしたらいいんだ?)
“……それはその時に説明するよ。大丈夫、そこまで来れば僕もサポート出来る”
なるほど、まずはヤツを倒すことを考えるか。
「……という訳だ。まずはアイツを倒す」
オレとハーディアの会話はみんなに聞こえていたようだが、今までの経過と合わせて簡単な説明をし、しなければならないことを伝えた。
「……分かりました。私は妨害と回復を」
「僕はルイーザさんの護衛ですね」
ルイーザとエリオットにとっては十分な説明にはなってないと思う。が、二人も冒険者だ。やらなければいけないことを理解してくれたみたいだ。
「私はレオさんの援護をしますね」
「頼む。負担がかかるかも知れないが、糸を使い分けるかもだから属性は……」
「大丈夫です!」
アイラが作ったガッツポーズにホッとしながらオレはタイタンの方を向く。丁度奴も変化に終わったようで、オレの方を向──
ビービー!
なッ!
周りの景色がゆっくりになった時には目の前に壁……一体何が!?
(タイタンの拳か! 速すぎだろ!!!)
オレはとにかく回避する。そして、その瞬間、周りの世界の速度が戻った!
「え? 何!?」「レオさん?」
突然オレの姿が消えたことに皆が一瞬混乱する。ヤバい。早く立て直さないと!
「オレは大丈夫だ! それより隠れながら戦うんだ! さっきまでとは段違いのスピードだ!」
そう言いながら建物の影に潜もうとするオレにタイタンが投げた礫が向かってくる。クソッ、このタイミングじゃ回避は無理か!
(頼む!)
オレの声に応えた祭器が先端を伸ばして壁を作る。よし、間に合っ──
ガガガガッ!
祭器の壁は確かにタイタンの放った礫を防御してくれた。が、その凄まじい衝撃は不十分な体勢の俺を吹き飛ばした!
(目を閉じて!)
宙を飛ぶオレにルイーザの声……念話か。いや、それより──
「〈フラッシュ〉!」
カッ!
まぶた越しでも網膜を焼きそうな白い光の奔流にタイタンの悲鳴が木霊する。よし、効いたか!
(今日も先制(妨害スキル使用時)が出てよかった……)
とにかく今のうちに体制を立て直さないと。
(ヤツの動きは早すぎる。見てからじゃ無理……というか、目にも止まらない速度だ)
なら、感じればいい!
「〈糸弾〉!」
オレは辺りを当てずっぽうに殴りつけるタイタンの周りに糸を張って結界を作る。糸が切れればその反応がオレに分かるという仕組みだ。
(だが、もう一手足りないな)
これではまだ回避がマシになったかなというレベル。ヤツへの攻撃については未解決なままだ。
(……あれしかないか)
〈ステータス操作(Lv2)〉の力を使う。もうそれしかない。
読んで頂きありがとうございました!
次話は明日の昼12時に投稿します。
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