新たな決意
エリオットの問いにレオが出した答えは……
「俺は──」
何だろう……この気持ち。目新しいような、懐かしいような、そんな気持ち。
(ロザラムを守りたいというのは嘘じゃない)
良い思い出ばかりではないが、長く過ごした街なんだ。ここで出会った人、仲良くしている人はいる。
(アイラを助けてあげたいのも本当だ)
何だか訳ありで今までに苦労しているみたいだ。せっかく精霊守になれたんだし、ここからは良いことがあるといいし、そのための手助けならしてあげたい。
(──だけど、一番根本にあるのは)
ちょっと恥ずかしい。年甲斐もなくこんなことを言うのはどうなんだと自分でも思う。
“俺なんかがそんなこと考えていいはずが──”
今までの虐げされた経験から生まれた悪い俺がそんなことを口走るのも聞こえる。だが……
「俺はあの化け物相手にどこまでやれるか試したい」
そう、そうなんだ。俺は自分の力を試してみたい!
(こんなことを思う資格があるかは分からない。それでも──)
試したい……その気持ちがどうしても抑えられないんだ!
フワッ……
何だ? 胸の底から熱い何かが湧き出てくる……
“祭器だ! レオの気持ちに応えて中の祭器が覚醒したんだ!”
確か、“君が何のために祭器を使いたいのかをきちんと念じれば応えてくれる”ってハーディアが言ってたよな。
“そうさ。特に最初に呼び出すときにはそれが大事なんだ。何かを始めるときの決意表明みたいな感じ?”
え、マジで!? これで良かったのか?
“ほらほら、祭器が目覚めるよ! 余計なことは考えない!”
お、おう……
パァァァ……
俺の胸から白い光が飛び出すと球状だったそれは徐々に形が変えていく。一体どんな武器が……
「……!」
“祭器は最初の決意でその形態と能力が決まる! レオの祭器はどんなんだろう!”
オイオイ、ハーディア! 何かさっきから事前に知っておいたほうが良さそうな大事な情報がちょくちょく出てきてないか!
ズズズッ
光が伸びて柄のようなものが出来、それから……
(これって……)
光が止み、姿を表したものは……
“これは……モップ?”
長い柄の先についた太い麺のような、縄のようなもの……目の前に現れたのは正にモップだった。
(……武器なんだよな、これ?)
戦うどころか何に使ったらいいのか分からないが……これが俺の祭器なのか?
“流石レオ! これは予想外だよ!”
ハーディアは嬉しそうな声を上げる……が、今はそんな場合か?
「……とにかくやってみるか。アイラは援護を頼む。エリオットは住民の避難を!」
「任せてくだい!」「分かりました」
俺は祭器……いや、モップを握りしめた。何が出来るかは分からないが、何も試さずに“使えない”と思い込むのは良くない。
(〈雑用〉とか役立たずだと決めつけてたからな……)
〈雑用〉のおかげで今のオレがあるんだ。このモップにもまだ俺が知らない力が眠っている可能性は十分にある。
(そうだ、ステータス!)
俺の現在のステータスは……
◆◆◆
レオ 人間(男)
Lv 57
力 40
防御 35
魔力 33
精神 33
素早さ 36
スキル
〈雑用(Lv3)〉
※スキル効果UP(大)・力UP(大)・防御UP(大)・素早さUp(大) • 危機感知
〈ブースト(Lv3)〉
〈ステータス操作〉
〈鑑定(Lv3)〉
〈アイテムボックス〉
〈糸魔法(Lv1)〉
SP 470
※連続撃破ボーナス及び異常種討伐
◆◆◆
日替わり効果はスキル効果UP(大)を選んだ。スキル効果(大)は〈雑用(Lv3)〉や〈ブースト(Lv3)〉攻撃力を上げてくれるし、危機感知はオレの生存確率を上げてくれる。
(あ、さっきの魔物を倒したからSPが入ってるな)
惜しいな……あと少しで〈ステータス操作〉をLv2に出来たのにな。
(取得SPUP(大)を選んでおけば……いや、贅沢は言ってられないか)
何せ危機感知が無かったら魔物の群れに入って〈糸弾〉を巻くなんてことは出来なかったしな。
(とりあえず行ってみるか)
オレはアイラに合図を送ると、バカでかい魔物の元へ向かったのだが……
(……デカすぎるな)
サイズが違いすぎて急所まで武器が届かない。魔法なら話は別だが、ハーディアはアイラの中で休眠中だしな……
(せめて屋根の上に登れれば……)
そう思った瞬間……
ビュッ!
祭器の縄(?)の部分が伸びて近くの屋根の煙突に巻き付いた。
(……これって)
直感的に祭器を両手でしっかり握ると、縄はどんどん縮まり、オレはあっという間に屋根の上。
(よし、これなら!)
早速祭器が役に立ってくれたな!
読んで頂きありがとうございました!
次話は明日の昼12時に投稿します。
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