暴走
色々ありましたが、いよいよレオ達はスタンピードの発生源、祭器の元にたどり着きました!
ドカン!
封印が解除された壁を蹴破り、中に入ると……
「……いないな」
例のゴブリンもどきがいると思ったんだが、いないな。
「まあ、暴走していても祭器は祭器だからね。魔物も離れていくんじゃないかな?」
ハーディアも首を傾げる。まあ、正確な理由は分からないが、今は悪いことじゃないか。
「あ、祭器が!」
アイラが部屋の中央を指差しながらそう叫ぶ。そこには台座のようなものに固定されたクロスボウが……
(あれが祭器か)
何だか、見てるとモヤモヤした気分になるが……
“!!!”
シオンから何かが伝わってくる。……暴走しているせいだ、みたいな感じかな?
(早く鎮めてやらないとな)
”!“
シオンが頷くのを感じるぞ。大分このやり取りにも慣れてきたな。
「邪魔が入らないならやりやすい。アイラ、浄化しよう」
「うん」
アイラはそう答えると、大型犬くらいのサイズになったハーディアと共に祭器へと近づいていく。
(暴走を止めると、あのもやもやした感じも消えるのかな)
多分そうなんだろう。アイラは凄──
“!”
シオンが鋭く何かを訴えてる! これはヤバい!
「アイラッ!」
オレは後ろから二人を突き飛ばす。だが、あまりにもとっさのことだったので気づかなかった。
(あ、ヤベーな)
二人を襲おうと伸びてきたソレに対してオレは何も出来ない!
ボゴッ! ドッカーン!
胸の辺りに激しい衝撃……それと同時に後ろの壁に激突する。が、生きてはいるし、意識もある。
(防具と……シオンのおかげだな)
祭器から伸びた黒い槍のようなものには大量の〈糸弾〉が付着している。これとルースリーの里で借りた防具が無ければ俺の体に風穴が空いていたに違いない。
「レオさん!?」「レオ!」
振り返る二人にハンドルシグナルで大丈夫だと伝えながら呼吸を整える。とにかく動けるようにならないと……
(これは……祭器の暴走なのか?)
魔物が出てきたわけじゃないってのが、今までと違うとこだけど。
「レオさん、ポーションです」
エリオットか、助かるぜ!
「……サンキュ」
低級のポーションでもあるとないとでは全然違う。ふぅ……助かったぜ。
「くそっ、侵食が進んでる!」
祭器を見ているハーディアが焦った声を出す。多分、オレには見えないマナの流れを見ての言葉だろう。
(それってアイラへの影響は!?)
反射的にアイラを見たが、特に大丈夫そうだ。だが……
ボコ……ボコボコボコ!
な、なんだ? 形が変わっていく!
「みんな、伏せて!」
言うが早いか、ハーディアが全身から光を放つ。すると、祭器の変化が止まった。
「一時的にだけど、あの石の侵食を止めた。だけど、刺激したら効果はなくなるから気をつけて!」
刺激したら効果がなくなる……気をつけないと。だが、とりあえず時間が稼げたのはデカいな。
「ふぅ……レオ、大丈夫? 君のおかげで助かったよ」
「大丈夫だ。エリオットもありがとう」
「いえ、低級ポーションしかなくて申し訳ありません……」
いや、マジでありがたかったぞ。神がかったタイミングだった。
「しかし、どうしたら良いんだ? 祭器を攻撃する訳にはいかないし……」
気になることは色々あるが、今は祭器をどうするかを考えないと。ハーディアが稼いだ時間も長くはないだろうし。
「大丈夫。手段ならある」
え、マジで! 流石大精霊!
「……と言ってもボクが出来ることじゃないけどね」
あ、祭器のことは精霊守の管轄か。アイラはやっぱり凄いな。
「君だ、レオ」
え、オレ!?
「君の祭器ならあの黒い石の侵食を止められるはずだ」
「オレの祭器……」
アイラやハーディアでも無理なのにオレなら出来る? そんなことって……
「餅は餅屋っていうだろ? 祭器には祭器が一番効果的なのさ」
……分かるような、分からないような
「だけど、どうやって使うんだ? オレ、祭器の出し方も分からないぞ」
「大丈夫。君が何のために祭器を使いたいのかをきちんと念じれば応えてくれる」
そう言うシステムなのか……
(何のために……)
それは勿論スタンピードを終わらせるため
(……だけど)
でもスタンピードを止めたいのはそもそも……
ダッ!
誰かが走り出す音か!?
「ハッハッハ! 取り返したぞ、俺の祭器を!」
ザガリーギルド長! いつの間に!
「駄目だ! 今、祭器を動かしちゃ!」
ハーディアが叫ぶと同時に祭器が膨れ上がった!
読んで頂きありがとうございました!
次話は明日の昼12時に投稿します。
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