スパイ
アイラの精霊魔法が炸裂! しかし、直後に何故かレオは体が動かなくなり……
体が動かなくなった理由、それは……
「ありがとうございます、レオさん……」
感極まったのか、アイラが俺に抱きついてきたのだ。だが、別にスケベ根性で硬直しているわけじゃない。
(……震えてる)
急に緊張から解放されたためか、アイラは震えている。無理はないと思うのだが……
(え……これどうしたらいいの?)
いや、何か言葉をかけるとか色々と浮かびはするよ? 年はそれなりに食ってるからね。
(……!)
でも、今更ならなんだけど、アイラの甘い香りとか柔らかな感触に意識がいってしまうと頭がやたらとパニくって……
「ご、ごめんなさい! 私……」
だが、俺が何かを言う前にアイラは慌てふためきながら体を離す。ほっ……助かった。
「大丈夫、気にするな」
いや、何を?と自分で突っ込みたくなるな、全く。
「早く先に進まないと行けませんね!」
「あ、ああ!」
“確かに時間が迫ってるし……けどアイラ、やったね!”
アイラは嬉しそうに頷くとギルドの方へ駆け出した。積もる話はあるだろうけど、確かに今は先へ──
「待って下さい! 僕も──」
双子の一人……エリオットの方か?
(そういや、どっちかが同行するっていってたな)
戦力バランス的にルイーザは孤児院に残った方が良いという話だったから双子の片方にも来てもらうことになったのだ。
(確かハーディアが監視のためにも連れていきたいって言ってたな)
まあ、そこまで心配しなくてもいいと思うけど。
(とにかく今は急がないと!)
オレはエリオットに声をかけながらアイラを追う。だが──
(そう言えばさっきアイラの邪魔をしようとした奴は……)
走りながらふとさっきの人影のことを思い出す。が、アイラに追いついてギルドに乗り込むと同時に見たもののせいでそのことは意識の外に追いやられてしまった。
※
「な、なんだ、これ……」
目の前に広がっていたのはすし詰めになっていたゴブリンもどき(?)。まあ、外に溢れ出ているんだから当たり前かも知れないけど……
(外にいる奴らはアイラが何とかしてくれたが、ギルド内にいた奴らは無事だよな)
当たり前の話だ。まあ、つまり……
”これを何とかしないと進めないのか……弱ったな“
アイラがギルド内で精霊魔法を使えば間違いなく設備は全部使えなくなるな。まあ、ここの設備がまだ使えるかどうかは既に怪しいレベルではあるが。
「あの……実は非常用の隠し通路がありますが」
隠し通路!? そんなものが……
「緊急時に一番頑丈な祭器の部屋に立てこもるためのものですから、多分大丈夫なはずです」
なるほど……緊急用か。
「なんでそんなことを知ってるの? レオだって知らなかったんでしょ?」
ギルドに入るなり具現化したハーディアが眉間にしわを寄せながらエリオットにそう尋ねる。けど……
(元ギルド職員っていってもオレは非正規だったしな……)
ザガリーギルド長がこんな大事なことをオレに教えるとは思えないな……
「えっと……いざというときのために色々と調べておくことも僕の仕事だったので」
ううむ、スパイ業務もしていたということか。
「まあ、おかげで助かった訳だからとりあえず今は急ごうぜ」
「……そうだね」
剣呑な雰囲気になりかけたハーディアにそう声をかけると、彼も渋々頷いた。今は細々と尋ねている場合じゃないのだ。
「隠し通路は確か……ここです!」
エリオットが周りを確かめながら奥にあった装飾品を操作した。
ズズズッ
重い音を立てながら床が動き、通路が現れた。
「じゃあ行きましょう!」
「待ってくれ、アイラ! 先頭はオレが!」
勢いよく飛び込もうとするアイラを慌てて制止する。オイオイ、はりきり過ぎじゃないか?
「アイラ……気合いが入るのは良いんだけど、落ち着いて。周りの精霊も心配しているよ」
「あ、うん。そだね」
アイラも精霊の声に気づいたのか、少しシュンとした顔をした。そんな様子も子犬みたいで可愛い……じゃなくて!
「じゃあ、オレが先頭で。エリオットはオレの後ろ。ハーディアは最後尾で良いか?」
後ろの警戒が一番難しいから最後尾はハーディア。そして、アイラはハーディアの傍にいなきゃだから後ろから二番目。エリオットは戦闘要員じゃないが、近くで色々情報を教えてくれると助かるから俺の後ろだ。
「了解です、レオ様」
「分かりました!」
「良いよ! 後ろは任せて」
オレの意図が伝わったのか、皆は俺の提案に賛同して隠し通路に足を踏み入れた。いよいよ正念場だな!
読んで頂きありがとうございました!
次話は明日の昼12時に投稿します。
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