証明
大一番を前に過去と向き合うアイラ。様々な感情に振り回される彼女の心の内に湧き上がってくるものは……
(アイラ視点)
(でも、やっぱり私には精霊魔法は使えなかった……)
精霊守になっても何故か精霊の声は聞こえないまま。せっかく皆の役に立てるチャンスだったのに……
(そこで助けてくれたのがハーディアだった……)
ハーディアが何故私を助けてくれるのか、そして、何故ハーディアの声だけ聞こえるのかは分からない。とにかくハーディアは自分が精霊魔法を使うから、私はフリをすればいいと言ってくれたのだ。
(……けど、間違いだったのかな)
大量のゴブリン、でも精霊魔法を使えるちゃんとした精霊守ならなんの問題でもない。だって、精霊守はどんな属性の精霊とでも仲良く出来るんだから。でも……
”今は使えないとか、そんなことは問題じゃない。だって誰だって最初は何も出来ないんだから“
だけど、レオさんはこんな私にそう言ってくれた。なんでこんなに私の周りの人は優しいんだろう。なんでこんな駄目な私を助けてくれるんだろう。なんで、なんで、なんで……
(……応えたい)
意味のない“なんで”が心に溢れても……ううん、溢れれば溢れるほど強くなる。皆の役に立ちたい、期待に応えたいという気持ちが。
(前は見捨てられたくないって思ってた。でも今はちょっと違う……)
勿論、そういう不安が消えたわけじゃない。けど、少し。ほんの少しだけど、違う気持ちが生まれてるんだ。
(レオさんが信じてくれる……なら私はもしかして本当に精霊魔法が使えるのかも)
レオさんは凄いし、優しい。そんな素敵な人があんなふうに言ってくれたんだ。それが間違いとは思いたくない……
(いや……間違いにしたくない。嘘にしたくない)
私は嘘つきで、ズルな臆病者。でも、レオさんは違う。だから、一緒にしたくな──
”ヤッ◆@○◀※“
えっ、これは……
“ヤットキコウタ”
間違いない……これは精霊の声!
”ヤットキコエタ“
”ヤットツウジタ“
”ヤッタア! ヤッタア!“
声は次第に大きく、そして多くなっていく。
(私の周りにこんなに精霊が!?)
レオさんの言っていたことは本当だったんだ!
“ナニヲシタライイ?”
”オシエテ!“
精霊達は口々に私に尋ねて来てくれる。私がどうしたいのかを。
(私は……前へ進みたい!)
目の前の魔物を倒し、祭器を鎮めてスタンピードを終わらせる。
“ナンデマエニススミタイノ?”
”ドウシテ?“
それは………
(証明したいの)
そう、私は証明したい。
(アメリアさんやルースリーの里の人、ハーディアレオさん。他にも私のことを信じてくれた人達……)
私なんか……ううん、酷い扱いを受けても私を信じてくれた人達が……
(皆が正しかったんだと証明するために!)
その瞬間、精霊達のお喋りが止んだ。
(分かる……皆、私の指示を待ってるんだ)
今なら出来る!
「〈炎弾 : 連爆〉!」
私の詠唱を聞いた火の精霊が集まってくる。やったあ! 成功だ!
*
(レオ視点)
アイラは目を閉じ、精神を集中している。無理もない。今まで出来なかったことを土壇場でやろうとしてるんだから。
(でも出来る。君なら絶対に!)
俺にも誰かの役に立つことが出来たんだ。アイラに出来ないはずがない!
“!”
シオンが何かに気づいた? アイラの方を気にしてるっぽいな。
「〈炎弾 : 連爆〉!」
これは詠唱! もしかして!
ゴゥ! メラメラ!
宙から現れたかと炎が魔物へと降り注ぐ! やった、成功だ!
”!!!“
何だ? シオンが……
(誰かいる……)
シオンが気にした方向には怪しい人影が。そして……
シュゥゥ……
怪しい奴が手を上げたかと思うと、アイラの放った炎弾が魔物に届く前に次々に消え始めた。
(くそっ……このままじゃ発動に失敗したみたいになっちまう!)
ここまで来て……ちゃんとやれたのにそれはないだろうが!
”!“
シオン?……そうか!
(邪魔させるかよ! 〈網弾〉!)
俺はまだ消されていない炎弾に向かって〈糸弾〉の範囲攻撃バージョンの魔法、〈網弾〉を放った!
ボゥ!
〈網弾〉は〈炎弾〉に触れるやいなや燃え上がる。そして、そのまま真っ白になるくらい糸に絡まっている魔物の上に落ち……
バチバチバチッ! ゴゥゥ!
炎はどんどん勢いを増し、魔物を焼いていく! やった、成功だ!
(いや、待て! さっきのやつは!)
だが次の瞬間、オレの体は硬直した!
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次話は明日の昼12時に投稿します。
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