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ウソツキ

 精霊魔法を使えない。

 アイラの秘密を聞いたレオは……

「こんな時にすみません」

「いや……」


 ハーディアの話が終わった後、俺はアイラから病室へ呼び出された。


「ハーディアから聞いたんですよね」

「ああ」


 消え入るようなアイラの声にオレは小さな声で答える。今、この部屋には誰もいない。だが、オレの声さえ部屋中に響いて聞こえるのはそのせいではないだろう。


「軽蔑しましたよね」

「軽蔑……?」


 思ってもない言葉に思わず首を傾げると、アイラは俯いていた顔をグイッと上げた。


「だってみんなに嘘ついてるんですよ! 精霊魔法が使えないのに使える振りをしてる! これって嘘つきじゃないですか!」


 アイラは精霊魔法が使えない。だから、普段はハーディアが代わりにアイラの望む通りに使ってるのだ。


(まあ、ハーディアも精霊だし、言うことを聞いてくれる精霊がいるってことは精霊魔法が使えるってことでいいんじゃ……)


 とは思うが、どうもそう言う話ではないらしい。


(友達と仲良く出来るだけならそれは素人、か)


 ハーディアはそんな喩えを口にしていた。まあ、分からなくはないが……


「精霊魔法が使えないのに、精霊守に選ばれた……本当なら断るべきなのに、みんなのがっかりした顔を見たくないから黙ってる。私は本当に最っ低の人間なんです!」


「……」


 最低か……


(同じだな、アイラに出会う前の俺と)


 アイラの姿が昔の自分と何故かダブる。自分の力の無さに絶望し、理不尽な現状に抗うことさえ考えなかった自分と。


(でも、俺はアイラのおかげで変われた。自分の力に気付くことが出来た)


 どうせ大したものじゃないと諦めていた〈雑用〉。だが、それは凄まじいスキルだった。それを教えてくれたのは間違いなくアイラとハーディアだ。


(なら、今度は俺がアイラに返す番か……)


 アイラに力がないなんてことは有り得ない。だって今、オレをこんな風に動かしているのは間違いなくアイラの力なんだから。


(それを信じてもらうには……)


 何を言えばいいかと考えた瞬間、俺は口を開いていた。


「アイラは嘘つきじゃない」

「!?」


 オレの言葉にアイラがビクッと体を震わせる。


「アイラは最低じゃない。」


 涙に濡れたアイラの瞳が俺を見つめる。だから、俺も彼女の瞳を覗きこんだ。


(綺麗な瞳だ……)


 まるで宝石のよう。人も精霊も惹きつけないはずがない。


「オレは魔法のことはよく分からない。でもシオンがオレに憑いてくれたおかげで一つ分かることがある」


「……」


 アイラが黙ってオレの言葉を待っている。


「アイラ、君には精霊を動かす力がある」

「いえ、そんな……」


 アイラが困惑した顔をする。そりゃそうだ。これはいわゆる嘘だから。


(だが、ステータスにスキルが記載されてるのに発動出来ないなんてこと、あるはずがないが)


 もしそんなことがあるとしたら、それは思い込み。出来るはずがないと思っていれば発動しない。それはスキルじゃなくても同じことだ。


「シオンが教えてくれた。アイラ、精霊は皆君を気にかけているって」


「……」


 信じられないかも知れない。でも、だからこそ、オレは信じなくちゃいけない。自分の言葉じゃなく、アイラの力を。


「今は使えないとか、そんなことは問題じゃない。だって誰だって最初は何も出来ないんだから」


「……」


 精霊使いになるための素質、それは精霊に愛されるか否かで決まるとハーディアは言っていた。なら、アイラが精霊魔法を使えないはずがないんだ。



(これで良し……っと)


 まだ動き出すまでに余裕はあるはずだが、流石に魔物の群れの中に一人で入り込むのは肝が冷えるな。


(こんなものかな?)


“……!”


 シオンが同意してくれたような気がする。なら、大丈夫か。


(〈糸弾〉の形状を糸のように細くして魔物に巻きつける……とりあえず上手くは言ったが)


 形状を変えたら飛ばせなくなったので〈糸弾〉を手で巻きつけていた訳だ。


(どこまで耐えられるかは分からないが……)


 要はこの巻きつけた糸で魔物の動きを封じたいのだ。アイラが精霊魔法をスムーズに撃てるとは限らないからな。


(ハーディアが代わりに魔法を使えないってのは良かったのか、悪かったのか……)


 今回こんな話になったのは、ハーディアの魔法がこの魔物と相性が悪いからだ。


(この妙なゴブリンもどきは土属性だが、ハーディアは水。土は水に吸収されるから効果が薄い……だったな)


 属性の相性は魔物の魔力が高ければ高いほど影響が大きくなる。普通のゴブリンなら問題ないが、目の前にいるゴブリンは残念ながら魔力が高いようだ。


(こいつらは祭器から生まれたから特別なのかもな……)


 勿論、魔法の威力をあげれば倒せるのだが、そうすると周りへ大きな被害が出かねないらしい。


(魔物を倒してもロザラムが壊滅したんじゃ意味がないもんな)


 街中での戦いはこう言う難しさもある。


「レオ、大丈夫かい?」


 あ、ハーディアか。

 読んで頂きありがとうございました!

 次話は明日の昼12時に投稿します。


◆お願い◆

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― 新着の感想 ―
[良い点] アイラが精霊魔法を使えるようになるか、成長を見たいと思えるシーンでした。 過去のコンプレックスがあったからこそ、真摯にアドバイスできるレオはまさに運命的出会いをしたかと思います。 彼も糸使…
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