アイラの秘密
謎の魔物とアイラの不調には関係が……?
ハーディアの指示通りに通路を進み、アイラのいる部屋から少し離れた場所にある小部屋に移る。そして、言われた通りに扉を閉めると、ハーディアはため息をついた。
「ふぅ。すまないね、レオ」
何のことだ?
(ここまでの道中歩かずに俺の肩に乗っていたこと……じゃないよな)
その程度のことは日常茶飯事だし……
「なんか色々巻き込んじゃってるし、アイラもボクも面倒をかけてるし」
「……?」
アイラのことは……ここまで運んだことかな? ハーディアに何かしたかな?
「あの子らのことさ。ボクはダグラス家と聞いて過剰に反応しちゃったけど、レオが上手くやってくれたからこんなに早くロザラムまで来れたよ」
「いや、まあそれは……仕方ないだろ」
今まで何があったのかは分からない。だが、ハーディアのアイラに対する想いは本物だ。アイラに害する組織の人間に良い感情が持てるはずがない。
「いや、まあ、そう言ってくれると助かるけどね……実は謝りついでにレオにお願いがあるんだけど」
お願い?
「ちょっと遠回しに話すけど……あのゴブリンみたいな魔物は祭器の暴走で生まれた魔物だ。だから、祭器を鎮めればスタンピードは止まる。ここまでは良いよね?」
「ああ」
ここまではほぼザガリーギルド長から聞いた話だ。
「祭器を暴走させているのは、例の黒い石。恐らくマナの働きを乱す力があるんだろうけど、祭器はまだ完全に黒い石に支配された訳じゃない。だから、魔物は出てきても、その動きを祭器によって封じられてるんだ」
……!
(そう言えば、街に魔物が侵入しにくいのは祭器の影響もあるって聞いたことがあるな)
普通の魔物でも影響を与えるんだから、祭器のせいで生まれた魔物ならそれくらいのことがあってもおかしくないかも知れない。
「でも、黒い石によって祭器は確実に蝕まれている。だから、時折魔物が動けるようになるんだ」
「……!」
待てよ。ってことは……
「さっきここの人は魔物が動く間隔が短くなってるって……」
「確かに祭器を鎮めるにはもうあまり猶予はない。保って二〜三日だろう」
二〜三日か……
「祭器が黒い石に完全に飲み込まれれば、暴れる魔物を生み出し続けることになる」
ぞっとする話だな、それ。まさしく最悪の事態じゃないか……
「けど、ボクにとってそれは最悪じゃない」
!?
(それよりも酷い事態! 一体どんな……)
だが、ハーディアがこんなに深刻な表情をしてるんだ。恐らく相当な事態が……
「それはアイラの身に危険が及ぶことさ。ボクにとっては魔物が出るよりも、祭器が暴走するよりもアイラに何がある方が困ることなのさ」
そっか、それはそうだ……って待てよ! 今の話だとまさか!
「祭器がこのままだとアイラにも影響があるってことか?」
「そうなんだ。アイラは精霊守だから精霊を通して祭器に干渉出来る。そのせいか祭器の暴走の近くにいると、その余波を受けることをみたいなんだ」
そんな……
「話が回りくどくてゴメン。つまり、祭器を取り戻すための時間はまだ二〜三日の猶予がある。けど、ボクにとって時間はもっと短い。出来れば次に魔物が暴れだす前に祭器を鎮めたいんだ」
魔物は今まで数時間周期で活動と静止を繰り返していたらしい。次に魔物が動き出す時間は分からないが、あまり時間があるとは言えないな……
「オレに出来ることは?」
ハーディアがこの話を俺にした理由、それは力になって欲しいってことだった。なら、俺にもアイラの力になれることがあるってことだ。
「ありがとう、レオ。レオにはアイラの手伝いをして欲しいんだ」
……手伝い?
「祭器のあるギルド本部まで向かうためには魔物をどうにかしなきゃいけない。あいつらはギルドに近づくにつれ、数が増えてるし、いつ動くか分からない敵を放置したまま中に突っ込むなんて無謀な真似は出来ないからね」
確かに。
「実はそのためのスキルをアイラは既に持っている。レオに貰ったSPで手に入れた中級精霊魔法の一つに広範囲を攻撃出来るものがあるんだ」
広範囲を攻撃……〈雨弾〉の強化版みたいやものかな。スゲーな。
「それを使えば良いんだけど、一つ問題がある」
問題? 一体何が……
「実はアイラは精霊魔法を使えないんだ」
!?
読んで頂きありがとうございました!
次話は明日の昼12時に投稿します。
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