早朝のあれこれ
次の日の朝、周りの様子は……
次の日の朝、様子を見に行ってみるとやはり木の柵は健在。魔物の死体こそ無かったが、攻撃をうけた形跡はある。
(やっぱり作っておいてよかったな)
ちなみにスキルが発動してるのは昨日の時点で確認済みだ。
(物に発動するスキルは常に同じなのかな……)
まだ試した数が少ないため何とも言えないが、少なくとも昨日発動したスキルとクルモ斑で発動したスキルは同じだった。
「おはようございます、レオさん。やっぱりレオさんのスキルは凄いですね」
”レオのスキルがあれば、野宿も安全快適だね“
アイラとハーディアか。まだ寝てても大丈夫なのに。
「二人共早いな……大丈夫なのか? 今日は忙しくなるぞ」
「どうなってるかが気になって早く目が覚めただけですから。昨日は早く休ませて貰いましたし」
“僕は朝方だからね”
まあ、アイラは精霊守だし、この状況じゃ眠るどころじゃないよな……
「辛かったら教えてくれよ。出来ることはするから」
心の底から本当にそう思う。精霊守になったばかりなのにこんな大事件……アイラのせいじゃないのに。
「ありがとうございます……じゃあ、今度肩叩きとか頼んじゃおうかな」
え?
“あ、じゃあ、僕はまた撫でてよ。この件が解決してからでいいからさ”
呟くような声色のアイラにハーディアが続いてそう言うけど……これって冗談なの?
”よし! 楽しみも出来たし、頑張らないと!“
「そだね! 頑張ろう!」
「ああ」
そう言って三人で頷く。この二人とはまだあって間もないけど、色々と助けてもらってるし、正直気に入ってる。なんとか問題解決のための助けになりたいな。
*
(アイラ視点)
スタンピード……それは災害だ。だけど、それは台風や大雨による洪水のような自然の脅威として受け止めるべきものじゃない。
(そう……悪しき意志による企み、挫くべきもの。そのために精霊は私達に力を貸してくれている)
そして、生きとし生けるものと精霊を繋ぐ鍵として精霊守(私)が存在している。だから、スタンピードは私が何とかしなきゃ……
(為すべきことを為す……そうすれば、きっとみんな私のことを認めてくれる!)
レオさん達のおかげで、このスタンピードは普通のものと違って原因を断てば収まることが分かった。なら、被害を最小限に抑えることが出来るはず。
(そうすれば、皆の期待通りの力──精霊使いとしての力を受け継がなかった私でも認めてもらえる!)
出来損ないの私の力になってくれてるハーディアのためにも、私を拾ってくれたルースリーの里の皆のためにも、私がここで!
「辛かったら教えてくれよ。出来ることはするから」
何気なくレオさんの口からこぼれたその一言で、私は自分の視野が極端に狭まっていたことに気がついた。
(そうだ……私だけで頑張ってもうまく行かないんだ)
ルースリーの里に拾われた頃。何もできなかった私はとにかく必死に働いた。皆に認められたかったから……ううん、見捨てられたくなかったから。
“焦らなくていいの。出来ることだけをしたらいいの。だって、貴方を助けたいと思ってる人もいるんだから、頼ってあげないと可哀想でしょ?”
熱を出して寝込んだ私の枕元でアメリアさんはそう言って私を叱ってくれた。後で聞いたのだが、皆言っても聞かない私を心配してくれていたらしい。
(ありがとう、レオさん)
レオさんにまた助けられちゃった……
(ちょっとくらいなら甘えてもいいのかな……)
そんな気の緩みだろうか。私はとんでもないことを口にした!
「ありがとうございます……じゃあ、今度肩叩きとか頼んじゃおうかな」
ポロリと出たその言葉に一番驚いたのは私だ。わ、私ったら一体何を!?
“あ、じゃあ、僕はまた撫でてよ。この件が解決してからでいいからさ”
ハーディアのフォローで何とか誤魔化せたかな。ありがとう、ハーディア。
”どういたしまして。まあ、肩から力が抜けたみたいだし、お咎めなしにしてあげる“
ふふふ……ハーディアったら!
(私はもう一人じゃない。一人じゃないんだ!)
昔と違って、今はハーディアも、エレインも、ルイーザさんも、それに頼れるレオさんがいる!
(大丈夫! みんなを信じてやれば大丈夫!)
胸の奥が熱くなる。こんなことは初めてだけど、悪い気分じゃないな。
読んで頂きありがとうございました!
次話は明日の昼12時に投稿します。
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