再会
孤児院についてもまだ落ち着くわけには行きません……〈雑用〉、発動!
それから何事もなく進むことが出来、三日目の夕方にはグラス孤児院に着くことが出来た。
「……無事みたいだな」
パッと見たところ魔物に壊されたっぽい箇所はない。まあ、中にいる人の無事はまだ分からないが……
「夜が近いな」
ロザラムからスタンピードが起こっているなら昨日まで無事だったからといって今日もそうだとは限らない。今すぐ柵を作った方が良いだろうな。
「そうですね……疲れているところ申し訳ないですが、お願いします」
中のことはアイラ達に任せるか。
「休む準備をしておきますね、レオさん」
“じゃあ頼むよ、レオ”
「いつも申し訳ありません。罰はまた後で」
皆に話すと、アイラ、ハーディア、エレインはそんな風に賛成してくれた。
「お手伝いしたいんですが……駄目なんですよね」
ルイーザには〈雑用〉のことを説明してあるが、抵抗はあるらしい。
「適材適所って奴だ。気にしないでくれ」
俺はルイーザにそう言うと、皆と別れて裏手に回った。
※
(都合よく適当な木材があるといいが……)
そんなことを思いながら裏手に回ると何やら言い争うような声が聞こえてきた。
「くそっ、何で俺が薪割りなんか……」
「ギルド長、早くしないと終わりませんよ!」
「うるさいぞ、トーマス! 俺に指図するな!」
あれ……この声ってまさか
(やっぱり!)
覗いてみると、そこにはザガリーギルド長とトーマス達がいた。
「あ、レオ! 何でこんなところに……」
いやいや、それはこっちのセリフだから。
(ロザラムから逃げてきた、とかか?)
大きな怪我はないが、小さな擦り傷や打ち身はあちこちにあるし、身につけているものもボロボロ。着の身着のまま逃げてきたって感じだな……
「てゆーか、何だよ、その装備! お前なんかが何でそんなに立派な装備を……」
「団子っ鼻の癖に……」
今の俺は兜こそ被っていないが、ルースリーの里で貸してもらった★★★★★以上のレアな鎧とグリーブを身に着けているからな……
「ギルド長、レオは放っておいてとにかく仕事をしましょう。間に合いませんよ」
「そうですよ、役立たずに構ってる暇はありません!」
エラい言われようだな……
(だが、時間がないのは俺も同じか……)
夜は基本魔物が活性化する。日が落ちる前に柵を設置しておかないとな。
「薪を用意しないと湯が沸かせませんし、夕飯の支度も出来ません。鬱陶しいですが、やってしまいましょう」
「分かってる!」
トーマスとザガリーギルド長がそんな会話をしながら薪を割ろうとするが……
スパン! ブン! ボカッ!
「痛ッ!」
勢いよく飛んだ薪が頭に当たり、ヘンリーは悲鳴を上げた。
「何でそんなところにいるんだ、間抜け!」
「す、すみません!」
不服そうな表情をしながらも頭を下げるヘンリー。しかし……
スパン! ブン! ボカッ!
「痛ッ!」
今度はマックスの頭に命中……
(慣れてないから力加減が下手なんだな……)
まあ、ギルド長なんだから薪割りなんてほとんどやったことないよな。
(まあ、俺は俺の仕事に集中するか)
俺は適当に斧を選ぶと丁度良さそうな大きさの木を探した。
「……? レオが何かしようとしているぞ」
「薪用に木を切る気でしょうか」
よし、これが良い!
ガスッ!
全て叩き切るような乱暴なことはしない。誰もいない方向にゆっくりと倒れることができそうくらいだけ残して切ると……
グググッ……ぱちぱちぱち
俺の狙った通りに木が倒れてくれた。
「は、速ッ!」
「レオの癖にッ!」
さて、次は切り分けていくか。
スパスパスパ!
小屋を立てるわけじゃないから、節の有無とかは考えなくて言い分、楽だな。
「も、もう切れてる……」
「それに形が揃ってる!」
ザガリーギルド長達は自分達の周りに散らばっている不揃いな薪と俺の作った木材を見比べてが目を白黒させている。
(後は……)
置いてあったロープで木材を纏めて立てかければ柵の完成だ。
「柵!? まさか、ここを囲うつもりか?」
「日没までにか? 無理だろ」
まあ、普通なら無理だけど……
グググッ……ぱちぱちぱち
スパスパスパ!
グググッ……ぱちぱちぱち
スパスパスパ!
グググッ……ぱちぱちぱち
スパスパスパ!
「……柵が出来ちまった」
「も、もう?」
まあ、こんなものだ。
「レオ様、見事な出来ですね」
あ、エレインだ。
「中にお入り下さい。後は私が」
「まだ何か仕事があるのか?」
「薪が足りないそうなんです。なので私が」
薪……あ、ザガリーギルド長たちの作業は全然進んでないな。
「俺がついでにやってしまうよ」
「いや、そう言う訳には……ってお前達、何故ここに!」
エレインはここで初めてザガリーギルド長達の存在に気づいたみたいだ。
「一体何故スタンピードなんか起こったんだ! 魔物の生息状況の管理はどうなってる!」
「ぐっ……それは」
「というか、それ以前に祭器はどうした! 祭器がちゃんと機能していれば、アイラ様自らが現場に出向く必要は無かったものを!」
「ぐぬぬぬ……」
「それ以前にこの木片はなんだ! 薪を割ってたんじゃないのか! 薪に使えそうなものなんてろくにないぞ!」
「ぐぐぐ……」
ギリギリというザガリーギルド長の歯ぎしりの音が聞こえた辺りで俺はエレインを止めた。確かに気持ちは分かるが、ここでザガリーギルド長を責めても問題は何も解決しないのだ。
読んで頂きありがとうございました!
次話は明日の昼12時に投稿します。
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