次の日
一夜明けてレオが作った柵の効果が明らかになります……
そんなこんなで次の日の朝、とんでもない光景が広がっていた。
「なっ、なんじゃこりゃー!」
最初にそれを見つけた村人が声を上げる。
「どうしただ!」
「ブルーボアか!」
狭い村だし、今は皆が警戒ムードということもあって次々に人が集まってくる。勿論、俺もその一人だ。
「さ、柵の向こう……」
村人が指した先には頭から血を流して倒れているブルーボアの死体が。しかも……
「二十……いや、四十は越えてる」
「何だこの数は……」
「いや、その前に何でこいつらは死んでるんだ? この数なら昨夜のうちにこの村が滅んでいなきゃおかしいぞ」
確かに……
(一体何が?)
そう思って柵の外に目を向けると……
(なんだこりゃ!)
何と柵には血がべっとり。これはブルーボアの血か!?
(まさかこの柵を破ろうと突進し続けてこうなったのか!?)
イヤイヤ、ただの木の柵だぞ! 鋼鉄の壁に突進し続けたならともかく、木の柵に頭をぶつけた程度でブルーボアが死ぬ訳な──
(待てよ、もしかして……)
俺が昨日作った柵を〈鑑定〉で調べてみると……
◆◆◆
木の柵
切った気を組み合わせただけのシンプルな構造の柵。生活をする上ではこれで十分。
(特記事項)熟練者により作られているため、強度が高い。またスキル効果で性能に一時的にブーストがかかっている。追加効果 : 鉄壁化
◆◆◆
やっぱり! 〈雑用(Lv3)〉で強化されていたか!
(それにしてもただの木の柵をここまで強化してしまうとはな……)
〈雑用〉は凄いスキルだとは思っていたが、Lv3になるとまた今までとは一味違った凄さがあるな。
(ものに対してはコツコツ手入れすることで恒常的に性能を上げる効果と一時的に性能を引き上げ、追加効果を付与する力があるみたいだな)
Lv2では古くてボロい──少なくともあの時点では──ミスリルの剣にアウルベア亜種の硬い体を安々と切り裂くレベルの斬れ味を与えてくれたが、Lv3 だとただの木材にここまでの強度を与えてくれるのか……
(あ、追加効果に秘密があるのかな……)
◆◆◆
鉄壁化
素材の強度をかなり高める。木材でも中級程度の魔物では突破出来ないレベルの硬さになる。
◆◆◆
ヤバいな……これ
「とにかく村長に報告だべ」
「そうだべな」
村人達が大騒ぎしながら村長の元へと向かう。俺もアイラたちにこのことを知らせなきゃな。
※
〈雑用(Lv3)〉のおかげで野営の安全度が増した俺達は朝早くにクルモ村を出発した。
(一応補修はしたから追加効果の上書きは出来たはずだけど……大丈夫かな?)
人に与えた追加効果は一日しか保たないので、物に対しても同じだろう……ということで今日は日替わりの追加効果をスキル効果UP(大)にした上で柵の手入れをしている。少しは長持ちすればいいのだが……
「レオさん、お疲れではないですか? スキル発動のためとはいえ、朝から動きっぱなしでは?」
馬車に揺られながらルイーザがそう気遣ってくれるが、〈雑用(Lv3)〉のおかげで正直疲れはさほどない。
(まあ、柵の補修の後、皆に追加効果を付与するためにお茶を淹れたりしてるから忙しそうに見えるよな)
そういう意味では、俺の体感と周りからの評価がズレやすいな。
「いや、別に疲れてはないよ」
ん? いや、そもそもルイーザに〈雑用〉の効果で雑用が手早く出来ることは説明したっけ?
「私にできることがあったら遠慮なく言って下さいね。あ、私、マッサージとか得意ですよ!」
マッサージ……あ、腰とかしてもらえると嬉しいかも。
「馬車の中じゃ流石に無理ですけど、テントとかでも出来ますから」
なるほど。じゃあ、ちょっと辛い時とかにも頼めるな。
「夜、お休み前とか良かったら……」
え──
「えっと、レオさん今はどの辺でしたっけ?」
急にアイラが地図を広げて俺とルイーザの間に入って来た。
(あれっ、ルートは地図で何度も確認したよな?)
村を出たばかりだし、今何処にいるかが分からないなんてことがあるのか?
「ああ、この辺りを──」
内心首を傾げながら教えていると、エレインの傍にいて周囲を警戒していたハーディアが声を上げた。
“止まって! 誰かいる!”
(((!!!)))
事前に取り決めていた通りの念話での警告。だが……
(敵……とは限らないってことか?)
こんなタイミングで出会うのはほぼダグラス家の刺客。だから、先ずは俺とハーディでの先制攻撃を基本にしようと言っていたんだが、取り決めとは違うパターンの行動だな……
読んで頂きありがとうございました!
次話は明日の昼12時に投稿します。
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