道中

　ステータスを開くと、〈雑用〉のスキル発動条件を満たした時のようにウインドウが開いた。

◆◆◆

〈雑用〉の発動条件を満たしました。付与される追加効果を選択しますか？

　　　　→　Yes　　　　　No

◆◆◆

　勿論Yesだ。

◆◆◆

ルイーザに付与できる追加効果:

力UP(大)・防御力UP(大)・魔力UP(大)・精神UP(大)・素早さUP(大)・HP自動回復・MP自動回復・状態異常無効(大)・経験値UP(大)・取得SPUP(大)・先制(妨害スキル使用時)・先制(回復魔法使用時)

◆◆◆

　見たことがないものが混ざってるな。

「ねえねえ、どうなったの？　僕にも見せてよ」

「もぅ、ハーディア！　ちょっとは遠慮して！」

　全くいつもの光景だ……

(ルイーザに見せるんだし、二人にも見せてもいいか)

　俺は皆に見えるようにウインドウを操作した。

「この中から五つ……！　凄い！」

　ルイーザは心底驚いている。防御力UP(大)とかどれくらい効果があるか分かりにくいものもあるが、MP自動回復なんかは魔法職にとってたとえ効果が薄くても欲しいものだろう。

「戦い方にあったものを選んでくれたらいいけど、最後の二つは見たことないな。もしかしたらルイーザに合ったものかもしれない」

「お話にあった日替わりで出てくるものっていうものですね。人によっても違うんですか？」

「実はそこまではよく分かってないんだけど……」

　本当にそこはまだ謎だ。スキルの説明文にも書いてないしな……

「分かりました。じゃあ、先制(妨害スキル使用時)・先制(回復魔法使用時)とそれから……」

「あ、経験値UP(大)・取得SPUP(大)はどちらかなら選んでもいいよ。アイラもレオもそうしてるから」

「えっ、良いんですか？」

「ああ。こんな時じゃなかったらどちらも選んで貰いたいところなんだけど」

　何が起こるか分からないからな……出来るだけステータスは強化しておきたいからな。

「そんな、流石にそこまでは……」

「まあ、良いから良いから。僕のオススメは……」

　

　半ばハーディアに押される形でルイーザの追加効果はこんなふうに決まった。

◆◆◆

ルイーザ　人間(女)

Lv　　　30

力　　　7

防御　　11

魔力　　8

精神　　10

素早さ　8

スキル

〈フラッシュ〉

〈ヒール(Lv2)〉

＊魔力UP(大)・MP自動回復・素早さUP(大)・取得SPUP(大)・先制(妨害スキル使用時)・先制(回復魔法使用時) 付与中 new!

SP　70

◆◆◆

　

　新しい追加効果がどれくらい有効に効いてくれるのか楽しみだな。

「じゃあ、そろそろ進もうか」

「あ、じゃあ私が馬を」

「いや、それは私が…:」

　ルイーザがそう言うが、エレインが頑として譲らない。結局エレインが手綱を、ルイーザが道案内をすることになった。

(最近の変化について情報を持ってるって言うのは有り難いな)

　ルイーザによれば、スタンピードによってかなり状況が変わっているらしいからな。ちなみに得た情報はアイラが精霊に頼んでルースリーの里へと伝えている。低位の精霊に頼めばこんなことも出来るらしい。

(さて、道中どうなるか……)

　普段なら比較的安全な道なのだが……

※

　それから二〜三時間進むが、幸いなことに魔物の襲撃はなかった。そして、とりあえず今日の目的地であるクルモ村に着いたのだが……

「ここは無事みたいですね」

　村の中に動いてる人がいるのを見て、アイラが安堵の息をつく。ロザラムから距離はあるから大丈夫とは思ってはいたが、この目で確認するまでは安心は出来ないからな。

(だが、この先の村は無事かどうか……)

　スタンピードの行先にもよるが、ロザラムへ近づけば近づくほど被害を受けている可能性は高くなる。その辺りを調べるのも俺達の仕事だ。

「アイラ様、良かった！」

　そう言いながら壮年の男性が駆け寄ってくる。クルモ村の村長かな？

「トビーさん、お世話になります」

「とんでもない！　本当はゆっくりして行っていただきたいのですが……」

　明日にはクルモ村を立たなくてはいけないしな。

「おっと！　お疲れでしょう。今、部屋へ案内させて頂きま──」

「村長！　大変だ！」

　トビー村長が俺達を案内しようとしたその時、数人の村人が慌てた様子で走ってくると、早口で次々に話し出した。

「村長、柵の修理が夜までに終わりそうにないだ！」

「どうしたらいいだか？　近くでブルーボアがいるかもしれないって話なのに！」

「ええい！　うるさい！　アイラ様の前だぞ！」