実戦
あけましておめでとうございます! 今年もよろしくお願いしますm(_ _)m
ラストに手を上げたのは……
「私にも協力させて下さい!」
突然手を上げたのはエレインだ。
「ど、どうしたの、エレイン?」
アイラが少し驚きながら尋ねると、エレインは
「私、今回役に立ててませんから最後くらい何かしたいんです!」
確かに今回は魔法の試し打ちをだったからエレインの出番はなかったな。
(まあ、だからといって何かしなきゃいけないってことはないけどな……)
まあ、気持ちは嬉しいが……
「具体的には何をするつもり?」
ハーディアは首を傾げながらそう尋ねると、エレインは勢いよく答えた。
「私、的になります!」
なるほど
(確かにそれは意味がある訓練になるかもな)
魔法が実戦で使えるレベルにまで仕上がってはいるとはいえ、それは規則正しく動く的に当てる程度。実際の敵はもっと複雑な動きをするからな。
「確かにそれならレオも助かるかも。レオ、最後はエレインに相手を頼もう」
「分かった。よろしくな、エレイン」
「お任せ下さい!」
そう言うと、エレインは肩口の辺りに手をかけ……
バッ!
剥ぎ取るように脱いだ上着の下からは動きやすい訓練着が! そうか、最初からやる気満々だったんだな。
「いつでも大丈夫です!」
今までの下りにはツッコミどころが多かったものの、木剣を構えたエレインは真剣そのもの。確かにいい訓練になるかもしれない。
(よし。やるぞ、シオン!)
“!”
俺はシオンに声をかけてエレインの方を向く。木剣を構えたエレインの気迫を前に俺の集中力も研ぎ澄まされていく。
「じゃあ、僕が合図するね。よし……じゃあ、始め!」
バッ!
エレインは勢いよく地面を蹴り、俺に向かってくる。
(流石エレイン……最善の選択肢だな)
エレインの手には木剣。対する俺の手には武器はない。接近戦に持ち込むことがエレインにとって最も有利な展開なのだ。
(だがっ!)
俺は横へ飛び、エレインの突進をかわそうとする。すると、少し遅れてエレインも向きを修正しようとする──が、その瞬間、僅かに速度が鈍る。
(ここだ! 行くぞ、シオン!)
“!”
俺はシオンと心を合わせ、魔法を発動した!
「〈糸弾〉!」
「!!!」
〈糸弾〉がエレインに降り注ぐ。布で視界を塞ぐように展開したかったのだが、そこまでは出来ず、小さな糸玉をいくつも放つような形にしかならなかった。しかし──
「アッ!」
急に飛んできた〈糸弾〉に驚いたためか、エレインはバランスを崩して転倒した。
「大丈夫か、エレイン?」
「大丈夫です。保護魔法がかかってますから」
それは分かってるんだが、正直ここまでの効果があるとは思ってなかったからな。
「害はないと分かっていても、突進中に撃たれると動きが鈍りますね。初見の相手なら完全に動きが止まるんじゃないでしょうか?」
……そこまでか? まあ、エレインが言うんだからそうなんだろう。
「しかもさっきまでと違いましたし……流石レオ様、意表をつくのがお上手です」
それは完全に咄嗟の思いつきだったんだかな。まあ、いい実験にはなったか。
「あれ……この白い糸」
髪についた糸を取ろうと指でつまんだエレインは驚いた声を上げた。
「どうしたんだ?」
「伸びますね。しかも、ベタベタしていて中々とれません」
エレインが取ろうとすればするほど伸び、他の場所にくっついてしまう。あれこれしているうちにエレインの顔は瞬く間に糸だらけになってしまった。
(……えっと)
まるで顔にベタベタな白い液体をかけられたような姿になったエレイン……うーん、これは絵的にヤバいな。
「意外と使えるかもしれませんよ! 動きを阻害するまでは行かないですが、相手の集中を削ぐ力はありますよ!」
力説するエレインの胸元にも糸が落ちていく……いや、早く洗い落とした方がいいんじゃないか? その……実害はないが、絵的にな。
「な、なるほど。参考になるよ」
何とか言葉を絞り出すのだが……
「網みたいに広げたらもっと効果的かもしれませんね」
「そこまで形状を変えるにはかなり慣れないと難しいかも」
アイラとハーディアまで加わり、どんどん会話が広がっていく。気になってるのは俺だけ???
※
そんなこともありつつ、急いで準備を終えた俺達は次の日にはルースリーの里を発つことになった。
「アイラ様、くれぐれも気をつけて」
「エレイン、頼むぞ」
「レオ様、アイラ様とエレインをよろしくお願いいたします」
里の人々は俺達に口々にそんな言葉をかけてくれる。アイラは本当にみんなから愛されてるんだな。
「ロザラムまでは比較的安全なルートがあるのですが、スタンピードのせいで不安定になっている可能性は高いです。気をつけましょう」
出発してすぐにエレインが御者台からそう言って教えてくれた。
(……既に油断できないということか)
仮にも元ギルド職員だからスタンピード時に周囲の魔物が活性化するなどといったことは知識として知っている。が、改めて聞くと緊張感が高まるな……
「ダグラス家の刺客にも気をつけた方がいいよな?」
“そうだね……こんなときには流石に大人しくするくらいの分別を期待したいけど”
確かにスタンピードにちゃんと対処しなきゃ被害が広がっちゃうからな。それを邪魔するなんて正気の沙汰じゃない。
読んで頂きありがとうございました!
次話は明日の昼12時に投稿します。
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