先遣隊
スタンピードが起こったとの知らせを受けたレオ達……どうする!?
(レオ視点)
スタンピードとは魔物が増えすぎ、本来の住処から溢れて別の場所──特に人が住んでいる場所へと押し寄せること。これを避けるために冒険者ギルドは魔物の生息状況を調査するクエストや増えすぎた魔物を間引くクエストを出して調整するのだが……
(しかし、何で今……?)
ホムラでは割のいいクエストが多く発行され、割の悪いクエスト──手間の割に経験値や素材などの戦利品が少ないもの──はなおざりではあった。しかし……
「アイラ様からも警告して頂いていましたが、こんなに早いとは」
「危険だとは思いましたが、レオさんがまとめて倒してくださったのでしばらくは大丈夫だと思っていたのですが……」
アメリアさんとアイラが話しているのは、俺達がパラライズクロウラーやランドタートル、クロムレイヴンの大群と出くわした場所のことだ。
“いや、異常だよ。やっぱり何かあるんだよ!”
実はさっき上げた三種の件は管理が不十分だったという理由で片が付く。だが、その後のアウルベアの亜種が多数いた件については今だ原因が不明のままだったのだ。
「とにかく何かしなくては。アイラ様、支度をお願いいたします。私は里の者に声をかけてきます」
大変なことになってきたな……
※
話し合いの結果、アイラとエレインは先遣隊としてスタンピードの現場へ向かうことになった。アメリアさんがルースリーの里の戦士を率いて移動するには時間がかかるし、情報がまだまだ足りないからだ。
「レオさん、本当についてきてくれるんですか?」
アイラが精霊守として先行することが決まった時、俺は彼女が心配になってその場で一緒に行くことを提案したのだ。
(反対されるかと思ったんだかな……)
俺としては恐る恐るといった感じだったのだが、意外や意外、その場にいる皆に感謝されたのだ。
(エレインがあれやこれや触れ回ってるおかげかな?)
ルースリーの里の人から見れば、俺なんて得体のしれない余所者だと思うのだが、どこでもエレインが俺を立てて──やり過ぎの感はあるが───くれるからな。
「乗りかかった船だ。それにロザラムやホムラのことは他人事じゃないし」
これは嘘だ。だが、本当のことを話すのは照れ臭すぎる……
「スタンピードの先遣隊なんて危険過ぎるからアイラちゃんにはさせられないと思ったが、レオさんが一緒なら大丈夫だよな」
「おいおい、アイラちゃんも今じゃレベルアップしてかなりの腕になってるんだぞ」
「それだってレオさんと旅をしたおかげだそうじゃないか。やっぱりイケメンは違うよな」
評価が過大だったり、表現がやや誇張されてはいるが、間違っていなくはないか?
……いや、最後のだけはどうかと。
「ありがとうございます、レオさん。勿論、里としても精一杯のサポートをさせて頂きます」
周囲のざわつきを静めながらアメリアさんは安心した顔でそう言ってくれるが……もう十分以上良くして貰ってる気がする。
(だけど、かなりバタバタしてるから限度が有るだろうな)
急に大勢の人間を動員するのは並大抵の仕事じゃない。しかも、今回はスタンピードへの対処だ。正直、ルースリーの里だけで対処出来るかどうかも怪しい。
(ま、食料とかポーションとか最低限のものさえ貰えたらいい方だな)
俺はそんな風に考えていたのだが……
※
(う、嘘だろ!?)
眼の前にあるのは凄い装備ばかり。なんだ、こりゃ。
(〔鑑定〕がなくても並の装備じゃないってことが分かる)
まあ、魔力の付与は精霊使いにとっては当たり前の技術だろうし、精霊守のいる里なんだからこれくらいの装備はあっても良いんだろうけど。
(……最低でも★★★★★レベルだ)
更に恐ろしいのが、必要なものは幾らでも持って行ってよいと言われてることだ。いやいや、俺のこと信用しすぎでしょ。売ったら偉い値段がつくものばかりだぞ!
「レオ様は祭器を授かられたんですよね。なら、防具を中心に見たほうが良いでしょうか」
いや、本当にもう十分だよ、エレイン。
(というか、二人共俺の世話なんかしてていいのか?)
アメリアさん達は忙しいし、二人は俺の戦い方をよく知ってるからという理由で武具を見繕う手伝いをしてくれることになったのだが……
“ボクもいるよ、レオ!”
あ! すまん、ハーディア。
「本当なら私達みたいに特注品を頼みたいけど、流石に時間がないし……」
おいおい、アイラ。俺はそんなに偉い人間じゃないぜ……
「でも、レオ様の剣、中々の業物ですね。クロムレイヴンの巣で拾ったと聞きましたが、下級モンスターから手に入るレベルの剣じゃないですよ!」
毎日手入れをしてるからな。〈雑用(Lv3)〉の効果でレア度が上がったかな。
(しばらく見るのを我慢してたが、頃合いかな……見てみるか)
最初はマメにチェックしていたのだが、流石に中々変化がないので最近は後の楽しみと思って見ていなかったのだ。
(〈鑑定〉!)
さて、結果は……
読んで頂きありがとうございました!
次話は明日の昼12時に投稿します。
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