時と状況
ホムラの元エース、オスカーとばったり出くわしたレオですが……
「あ、オスカーか」
そう言えば、さっきアメリアさんの家に来ていたな。まだ里にいたのか。
「“オスカーか”じゃねーよ! なんでこんなとこにいるんだよ! 今、ホムラは大変なんだぜ!」
いや、お前もいるじゃねーか!と内心ツッコミを入れるが、今は関係ないので口にはしない。それよりも……
「俺はもうホムラの職員じゃないからな。ホムラがどうなっていても関係ないな」
俺がそう答えると、オスカーは驚いた顔をした。あれ、知らなかったのか? まあ、俺は基本雑用係だから普段接点はほぼないしな。
「“もうホムラの職員じゃない”って遂に首か! 今のホムラにはお前みたいな役立たずを雇ってる余裕はないか」
どちらかといえば、俺が辞めさせられたのが先かな? いや、どうなんだ?
「ちょっと! さっきから何なんですか! レオさんに失礼じゃないですか!」
うおっ! どうした、アイラ!
「キミ……レオは僕の友達だ。馬鹿なことを言うと後悔するよ!」
っ! ハーディアまで具現化してきた!
「ハヒッ!」
オスカーはアイラの剣幕と急に現れたハーディアに驚き、尻もちをつく。
(まあ、びっくりするよな)
特にハーディアには。いや、アイラの怒りようもかなりのも──
“ちょっと! 自分のことなのに何で他人事なの!?”
あ、悪い!
「オスカー、俺はホムラを抜けて新しい生活を始めてる。だからもう構わないでくれ」
「……! お前は──」
オスカーが何か言いかけたその時、エレインがやってきた。
「レオ様! 良かった、こちらでしたか」
あれ、アイラじゃなくて俺を探してたのか。
「準備が出来たので来てほしいと里長が。アイラ様もお願いします」
「分かった。じゃあ、行こうか」
最後の言葉は未だ何か言いたげな二人に向けた言葉だ。
「……アメリアさんが呼んでいるなら仕方ありませんね」
「……確かにあれは見逃せない」
二人はやや不満げであったが、オスカーに背を向けた。
(ふぅ……一触即発って奴だな)
オスカーはオスカーで鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしている。まあ、無理もないな。
(しかし、説明しようにもなあ……)
まあ、とにかく次会った時に考えるか。
※
「急にお呼び出しして申し訳ありません」
着くなりアメリアさんに謝られた。何でも祭器を作る際には時と場所が大事らしい。ある程度なら目安があるのだが、今回のように予測が狂うこともあるらしい。
(初めて入る部屋だな……)
こじんまりとした静かな部屋の中心には芳しい煙が湧き出てくる香炉がある。ここは一体……
「気が満ちるにはまだ時間がかかるはずだったのですが、強力な精霊が近くにいるらしく……ただ何処に存在するのかは分からないのですが」
アメリアさんは困惑気味だ。それくらい見当がつかないことが起こってるんだろう。
(待てよ、もしかして……)
俺には若干心当たりが……
「アメリアさん、実は」
そう言うと同時に俺はシオンに語りかける。すると、シオンが紫の光球の姿で現れた。
「こ、これは一体!?」
「あ、僕から説明するよ」
驚くアメリアさんにハーディアが一部始終を説明してくれた。
「……! 間違いなくダグラス家の仕業!」
「で……」
「まさか、切れ端とはいえそんなことが! またもやレオさんのおかげでしたか!」
ハーディアの話を聞くアメリアさんのリアクションは中々豊富だ。まあ、よくわからないが、まあまあレアな出来事なのだろう。
「お礼を申し上げないといけないところではありますが、そろそろ時間です。祭器の創造に取り掛かりたいのですが、構いませんか?」
「よろしくお願いします」
って言うか、道中のことは事前に報告しておくべきだったかな。後で謝っておこう。
(って、一体何をするんだ?)
そういや、俺が何をするかについては一切説明を受けてなかったな。
「ではレオさん、ここに手をかざしてください」
俺は言われた通りに部屋の中心にあった香炉に手をかざす。すると……
フワッ!
何かが流れ込んでくる感覚。そして……
「た、大変です!」
突然、厳かな雰囲気を壊すような慌てた声と共に扉が開かれた!
「何ですか! 今がどう言う時か分かっているのですか!」
アメリアさんが聞いたことがないような声を上げる。入ってきた使用人はアメリアさんの剣幕に顔を青くし、謝罪した。
「申し訳ありません。しかし、緊急事態です!」
「……どうしたというのですか」
まだ怒気が残るアメリアさんの声に使用人は再び平伏した。
「スタンピードです! 場所はロザラム近郊です!」
な、何だって!?
読んで頂きありがとうございました!
次話は明日の昼12時に投稿します。
◆お願い◆
「面白い」「悪くないな」「まあ次話を読んでみるか」等などと思われた方、ブクマやポイントをポチッとして頂けれると筆者のモチベが爆上がりします。是非ご一考下さいませm(_ _)m




