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オスカーの話とホムラの今

 かつてホムラのエースと呼ばれ、レオをドヤ顔で馬鹿にしたオスカーでしたが……

“一体何があったのですか?”


“ホムラから移籍したいのですが、ザガリーギルド長が取りあってくれないのです”


 オイオイ、それは……


(ギルド長にそんな権限はないぞ……)


 通常移籍したいといった冒険者を止めることは出来ない。


(まあ、逆に新しく加わりたいという冒険者に試験を課したりすることは出来るが……)


 それだって死なない程度の実力があるかを見極める程度のものだ。


“冒険者がどの冒険者ギルドに所属するかは自由です。が、一応理由を聞かせてもらえますか”


“全てです!”


 再びオスカーの語気が荒くなる。が、今度はアメリアさんに何かを言われる前に佇まいを正した。


“も、申し訳ありません。まずは冒険者プレートの不備が一向に改善されないことです”


 まあ、確かに俺も苦労してる。俺はクエストを受注してなくてもこうなんだから、オスカーみたいにクエストを受注して日銭を稼ぐ冒険者にはキツイよな……


“それに特定のクエストの受注を強要されることです”


 ん?


“どういうことですか?”


“ザガリーギルド長は難癖をつけてやり手のないB〜Cランクのクエストを受注するように言ってくるんです!”


 それは問題ではあるが、オスカーはAに限りなく近いBランクと言われてなかったっけ? B〜Cランクのクエストを受けるように言われてもここまで困らないんじゃ……


“確かにそれは問題です。ちなみにオスカーさん、冒険者ランクは?”


“Bです。あ、でも最近は調子が悪くてC〜Dランクを中心に回したくて”


 まあ、そういう時もあるよな。


「Bランクの冒険者がC〜Dランクのクエストを受けたくなる時ってあるんですか? ランクが上がるほど報酬が良くなると聞いたんですが……」


 アイラが首を傾げながらそう聞いてくる。そうか、アイラは冒険者として活動してる訳じゃないもんな。


「怪我した時とか、後は久しぶりにクエストを受ける時とかかな」


“でも、この人は怪我とかしてないよね?”


 俺の言葉にすかさずハーディアがツッコミを入れる。つまり、オスカーの不調の原因は〔雑用〕の恩恵を失ったからだ。


“なるほど。不調だから自分の冒険者ランクよりも下のランクのクエストを受けたいが、許可されないということですか?”


 あ、アメリアさんの声だ。


“そうです! そしたら、案の定失敗するんですが、そうなるとザガリーギルド長は俺に怒るんです! 悪いのは俺じゃなくて、不調なのに高ランクのクエストを受けさせたギルド長なのに!”


 なるほど。オスカーからしたら理不尽極まりないということか。


「……気持ちは分からないでもないですが、C〜Dランクのクエストを受けられたら解決という話でもない気もしますが」


 厳しいな、アイラ!


「大体、レオ様の恩恵を受けていながらそのことに対する感謝もない時点で駄目ですね」


 エレインはさらに厳しいな!


“まあ、レオのおかげってことはまだみんな知らないんだから仕方ないけど”

 

 おっ、ハーディアはオスカーに好意的か……?


“でも不調ならその原因についてもっと考えないと。ギルドを変われば全部解決するって訳でもないからね”


 あ、そうでもないか。


(まあ、責めやすいところだけに目を向けてる感はあるか……)


 まあ、今までチヤホヤされてた分、失敗に弱いのかも。


“分かりました。移籍ということだと、次に所属する冒険者ギルドは決まっているのですか?”


 あ、また話が始まった!


“いえ……ただ普通のギルドならどこでも良いのであまり深く考えていません”


 アメリアさんは一瞬何かを言いたげな顔をしたが、直ぐに表情を消した。


“そうですか。私に出来るのはあなたの所属をホムラから外すところまでですが、構いませんか?”


“勿論です。ありがとうございます”


 オスカーはアメリアさんに深々と頭を下げた。



「お見苦しいところをお見せしました」


「とんでもない! おかげで事情がよく分かりました」


 部屋にもどるなり、そう言うアメリアさんを俺はすかさず労った。だって多分……


“これから似たような騒動が起きそうだね……”


 ハーディアの言う通りだ。この分だと同じような訴えをしてくる冒険者が沢山出て来るだろうなぁ。



 読んで頂きありがとうございました!

 次話は明日の昼12時に投稿します。


◆お願い◆

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― 新着の感想 ―
[良い点] こんなことがあれば冒険者の流出は、さらに激しくなるのは目に見えてますが…… しかしこの問題に対してギルド長は、どんな対処をしてくれるのか。 斜め下のものを期待しております。
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