温泉
アメリアさんに歓待の礼を言うレオ。すると……
「よろしければそろそろ入浴なさっては如何ですか? この里は温泉も自慢なんです」
へぇ……温泉か。初めてだな。
「では、使わせてもらいます」
「ごゆっくりお楽しみ下さい」
そう言うと、アメリアさんは温泉の場所を教えてくれた。
(温泉って確か色んな効能があるんだよな)
昔、誰かからそんな話を聞いたことあるような……ちなみに、今俺がお世話になっているのはアメリアさんの家だ。アメリアさんは里長なので、ゲストを歓待するのも仕事らしい。
「あ、ここか」
タオルは……うん、ちゃんとあるな。男女別に分かれた入り口から入っていくのだが、風呂が二つあるなんて宿みたいだよな。
(まあ、流石に宿ほどは広くないが……)
だが、無駄にだだっ広いのも好きじゃないので居心地はいい。
(よし、準備は出来たな)
服を抜いて手ぬぐいを持ち、温泉にさあ出発!
(ふぅ……気持ちいい……)
誰も居なかったので俺が独り占め。というのも今アメリアさんから歓待を受けているのは俺だけだし。
ちなみに、アイラやエレインも一緒にお世話になっている。これは本人達の希望があったからだが、多分俺への配慮も含まれているんだろう。
(いや、本当に至れり尽くせりだな……)
色々して頂き過ぎて申し訳ないくらいだ。
「ふぅ……やっぱり里の温泉はいいですね、アイラ様!」
ん? 隣に誰かいるのか?
「そうね。本当に気持ちいい」
アイラか! エレインも一緒にいるのか。
「それにしても……相変わらずスタイル抜群ですね、アイラ様」
!?
「へ!? 一体何を言い出すの、エレイン!」
「だってこのくびれ……」
「やっ! 何よ急に!」
一体何が起こったんだ?
「もうッ……大体腰ならエレインの方が細いでしょ! ほら!」
「アンッ! ア、アイラ様!?」
…………
「さっきの仕返しなんだから。背中も綺麗だよね、エレインは」
「ヤンッ! アイラ様の背中の方が綺麗ですよ。それにこの谷間が凄──」
「やっ! ちょっとそこは駄目だって、エレイン!」
…………………
「洗って差し上げてるだけですよ、アイラ様! 私には縁がないですが、谷間には汗もかくでしょうし……」
「だ、だめぇ〜! やっ! あっ! ああッ!」
……これ、聞いてちゃ駄目なやつだよな。
※
その後は特に大きなトラブルはなく、朝を迎えたのだが……
「……騒がしいですね」
朝食後にアメリアさんやアイラ、エレインと今後のことを話し合っていると、屋敷の入口の方から押し問答をする声が聞こえてきた。
「何事ですか?」
アメリアさんがそう尋ねると、家人が様子を見てきて報告をしてくれた。
「ホムラの冒険者が精霊守に会わせろと訴えているようです」
「またホムラですか……」
アメリアさんが頭を抱える。俺にはどうしようもないことだが、気の毒だな……
「私が行きましょうか?」
いや、アイラが行くと……
「いえ、押しかければ精霊守に会えるなどと思って貰っては困ります。私が会いましょう。アイラ様はここでご覧下さい」
そう言うと、アメリアさんはなにかの印を結んで、冒険者プレートを操作した時に出てくるウインドウを出した。
「ご迷惑でなければレオさんもアイラ様と一緒に見ていただけますか」
「勿論です」
俺が快諾すると、アメリアさんは軽く頭を下げて部屋を出ていった。
(これは……)
ウインドウには誰もいない部屋が……あ、アメリアさんが入ってきた!
“これは魔導具さ。遠くの景色を見ることが出来るんだ”
へえ〜
“里長、お連してきました”
“ありがとう、メアリー”
あ、ウインドウから声が。
“アンタが精霊守か”
メアリーと呼ばれた女性に連れられて来たのは二十代後半くらいの年の一人の男だ。
(あれ、コイツは……)
何処かで見たような……
“私は里長のアメリアです。いきなり押しかけてくる無礼な人をアイラ様に合わせるわけには行きません”
“うっ……悪か──申し訳ありませんでした。つい気がたっていて”
アメリアさんの有無を言わせぬ態度に男は畏まり、跪いた。
“大変申し訳ありませんでした。私は今のところホムラ所属している冒険者、オスカーと申します”
オスカーって、ザガリーギルド長がやたらと褒めていたホムラのエースじゃないか!
(確か最初に授かったスキルが〔剣術〕だったんだよな)
〔剣術〕はLv1で「剣攻撃力+20」、Lv2で〔スラッシュ〕という単体攻撃スキルを習得できるという強スキルだ。
(ユニークスキルじゃないからSPを払えば習得できるけどな……)
〔剣術〕は強スキルだけあって必要なSPは100。普通なら最初に授からない限り手に入れられない。
“実はギルド長に取り合って貰えない要望がありまして仲裁をお願いしに参りました”
“なるほど。そういうことなら聞かない訳には行きませんね”
精霊守、及び精霊守がいる里は各冒険者ギルドの言わば元締め。だから、ギルドで解決出来ないことは今だとアイラかルースリーの里へ訴えることになる。
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次話は明日の昼12時に投稿します。
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