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宝物殿

 レオは気分新たに自分の祭器を選びに行きますが……

 ハーディアに急かされ、俺達は祭器が保管されている宝物殿へと移動した。


「これが祭器……」


 剣や槍、それに杖……形は基本的に普通の武具と似ているが、意匠が凝っていたり、形状が独特だったりと何処か並の物との違いを感じさせる。


(ん、どうした?)


 俺の中でシオンが蠢くのを感じて声をかけたが、返事はない。ふむ、シオンも祭器に何かを感じたんだろうな。


(祭器は普通の武器とはちょっと違う感じがあるよな)


 再び何らかの反応が返ってくる。YesかNoかは分からないが……


「どうしたんですか、レオさん」

「ああ、実は……」


 シオンとのやり取りを話すと、アイラは感心したように何度も頷いた。


「祭器は精霊と人を繋ぐ鍵のようなものですからね。精霊が惹かれるのは当然ですし、魔力に敏感な人にも何かを感じさせるものみたいです」


 ふーん、そうなのか。


(今の口ぶりだと、アイラはその“魔力に敏感な人”に入ってないのか?)


 魔力めちゃくちゃ高いのに……


「どうぞ惹かれるものがあったら手にとって見てください」


 アメリアさんにそう言われるが、正直どれも同じに見える。惹かれる……う〜ん。


「……おかしいですね。祭器の反応がないですね」


 え? それって俺が導き手じゃないってことかな。


「アメリア、反応はしてるよ。だけど、レオが所有するほどのものはないってだけだ」


「あっ、確かにそうですね。失礼しました、ハーディア様」


 どういうこと?


「説明が難しいけど、要は立候補制なんだ。“貴方に相応しい祭器は私です”みたいな。多分、レオが発現したスキルが今までのものと違うことが影響してるんじゃないかな」


「今までと違う……今まではどんなスキルがあったんだ?」


「今まであったのは……例えば、相手を燃やし尽くすまで消えない〈黒炎〉とか、相手の攻撃を防ぎながら仲間を癒やす〈聖域〉とか。とにかく、攻撃、防御、回復が中心だ」


 攻撃、防御、回復……似てるような似てないような。


「レオのスキルはどれとも違うし、どれも出来るとも言える。僕は祭器達が戸惑ってるのが感じ取れるな」


「なるほど。要は合うような合わないようなってことか」


 剣士に杖があっても使いこなせないし、魔法使いが剣を持っても同じこと。祭器は俺が何者なのか判断しかねているってことか。


(理屈は分かったが……要は合う祭器がないってことだよな?)


 長い雑用生活で発現したスキルだし、やっぱり駄目なのか……


「別に合うものがなければ作れば良いんですよ。今までもそうしてきました」


 祭器を作る!? 俺のために?


「まあ、最近では珍しいけどね。でも、本来祭器って言うのはその人に合ったものを用意する訳だから、別におかしな事じゃないよ」


 そ、そうなのか……しかし、簡単に作れるものなのか?


「アメリア、材料はあるかな?」


「今から集めなくてはなりませんが、問題ないかと。少し里でゆっくりして頂ければと思います。アイラ様を助けていただいた恩返しもさせて頂きたいですし」


「や、お構いなく。当然のことをしただけですし」


 とは言うが、有り難く歓待は受けることにしよう。じゃないと失礼になるしな。



(ふぅ……食った食った)


 凄く豪勢な食材って訳じゃないが、野菜の甘味など素材の旨味を漏らさず使う素晴しい料理だった。


(冒険者にはあまり縁のないタイプの料理だし、ついつい食べすぎちゃったな)


 ということで俺はちょっと夜風に当たりに来ている。


(しかし、こんないい思いをしていいのかな……)


 アイラを助けたお礼だということだが、俺にしたら逆に二人に感謝しなきゃって感じだ。


(だって二人のおかげで〈雑用〉の真価にきづけたんだもんな)


 俺は〈雑用〉を無能スキルだと決めつけていたし、アイラとハーディアがいなければ未だに〈雑用〉の真価に気づいてないと思う。


(まあ、その分何か返せると良いが……)


 勿論、アイラの力になりたい理由は恩云々だけじゃない。アイラは良い娘だし、何か困ってるなら力になりたいし。


「レオさん、お食事はお口に合いましたか」


 アメリアさんだ。


「ええ! これほど繊細な味の料理は初めてでついつい食べすぎてしまいました」


 素直な感想を言うとアメリアさんは嬉しそうな笑顔を浮かべた。


「良かった。この里は他の精霊使いの里と違ってあまり余裕がないのであまり贅沢なものは置いてなくて……失礼がなくて良かったです」


「そんな! 食材の力を余すことなく引き出す料理……冒険者の心得にも通じると思います」


「フフフ……ありがとうございます」


 言うのを忘れていたが、アメリアさんは美人だ。見た目は二十代後半といった印象だが、実年齢は分からない。それくらい謎に満ちた美女だと言うことだ。


(耳の形は少し変わってるな)


 尖った耳はこのルースリーの里の住民の特徴だ。そう言えば、アイラの耳は俺達と一緒だな……

 読んで頂きありがとうございました!

 次話は明日の昼12時に投稿します。


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― 新着の感想 ―
[良い点] アイラの事情は少しずつ明かされておりますが、私には一向に掴めません。 想像力が擽られ、伏線の出し方が巧いと感じます。 ここからは祭器の材料を捜索編と言ったところでしょうか? ルースリーの…
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