シオン
アイラの涙で立ち直ったレオ。一件落着に見えましたが……
一騒動あって、ようやくアメリア様のところへ向かうことになったのだが……ふぅ、大変だった。
「そう言えば、どうやって俺の居場所が分かったんだ?」
“その子が教えてくれたんだ”
「?」
その瞬間、俺の肩に紫の光球が現れた。
「シオン、お前が?」
“薄々思ってはいたけど、やっぱりレオの意志じゃない……ってことはその子には自我があるんだ”
自我を持つ精霊……それって
「ってことはやっぱり相当高い精霊ってことですね!」
“まあ、まだまだ成長の余地はあるけどね”
成長……精霊も人間みたいに成長するのか。何だか意外だ。
「精霊ってどんなふうに成長するんだ?」
「うーん、私はあまり詳しくないですね。“あるがままが精霊だ”って教えられたことはありますけど」
うん、確かに精霊ってそんなイメージだ。
“表現が難しいけど……周りの影響で強くなったり、弱くなったりってことはあるよ。レオも雰囲気で流されて……ってことはあるだろ”
なるほど……って何かトゲを感じるな。
“話しかけたり、気にかけたりしてあげたら良いんじゃないかな。存在を認めてくれる誰かがいるかどうかで変わってくるのは人間も精霊も同じだよ”
そうか……そうだよな。
(助かった。ありがとう、シオン)
※
(アイラ視点)
言っちゃった……
雰囲気に流された感じはあるけど好きって言っちゃった……
いつも通りを演じてはいるけど、内心ドキドキが止まらない。
(レオさんは私のことどう思ってるのかな)
聞きたい……けど聞きたくない……
“あのー、アイラ?”
(ど、どうしたの、ハーディア?)
もう、びっくりさせないでよ!
“あの……言いにくいんだけどさ”
ん? 妙に歯切れが悪いのね。珍しい……
“その……伝わってないと思うよ”
伝わってない? 何が?
“いや、アイラの気持ちがレオには伝わってないと思う”
(え!?)
どういうこと?
“アイラの意図通りには伝わってないってこと。好意みたいなのは伝わったと思うけど、それ以上は多分……”
そ、そんな……何で?
“まあ、レオは鈍いよね……こういうことにも鈍そうだけど、自分に対して無茶苦茶過小評価してるから”
自分に過小評価? 何で?
(あんなに凄くて優しいのに……)
うーん、よく分からない。
“その……そもそもアイラがレオのことを好きになるなんてことは有り得ないとか思っていそう。釣り合わないとかそう言うことじゃなくて、そもそも次元が違うというか”
次元が違う……よく分からない。
(でも、それが分からないと私の想いは伝わらないってことなのかな……)
ふぅ……私一人が舞い上がっていただけか。
“……アイラ、大丈夫?”
(うん、大丈夫)
大丈夫じゃない。けど、大丈夫だ。
(だって、それって今まで通りで良いってことだよね)
正直、残念な気持ちよりも一緒に居られなくなるという不安がなくなった安堵感の方が大きい。
(それにどさくさに紛れて……って何だかズルいよね)
大事なことはちゃんと場を整えてはっきり言わなきゃ駄目だよね。
※
(レオ視点)
「失礼しました」
まずはアメリアさんに急に席を外したことを謝罪する。が、アメリアさんは逆に頭を下げてきた。
「こちらこそレオさんの気持ちを考えず、勝手に話を勧めて申し訳ありませんでした。待ち侘びた人物を眼の前にして浮かれてしまったようです」
いやいや、オレの事情はアメリアさんには関係ないし、悪いのはオレだ。
ボンッ!
「まあまあ、とにかく話を先に進めようよ。レオの祭器を選ばなきゃ」
わっ! 急にハーディアが現れた!
「ハ、ハーディア様! 相変わらず神々しいお姿で!」
子犬のような姿のハーディアをアメリアさんは眩しそうに仰ぎ見る。こういうところを見ると、やっぱりハーディアは凄い精霊なんだと実感するな。
読んで頂きありがとうございました!
次話は明日の昼12時に投稿します。
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