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導き手

 アメリアさんに「導き手」と言われたレオでしたが……なにそれ美味しいの?

「“導き手”って……え、レオさんが!」


 アイラが驚くと


「ユニークスキルを超えるEXスキルを授けられる存在! レオ様なら納得です!」


 エレインはそう言って興奮しつつも納得しているのだが……


(導き手? EXスキル? 何の事だ?)


 俺が怪訝そうな顔をしているとアメリア族長が不思議そうな顔で俺に話しかけてきた。


「貴方はホムラの祭器を受け継ぐ次期ギルド長の資格を持った方なのですよ」


 え!? ギルド長!


「まさか、聞いておられない? ということは……なるほど、全て合点がいきました」


「どういうことですか、アメリア様?」


 アイラが尋ねると、アメリア族長は苦虫を噛んだような顔をした。


「説明しましょう……実はホムラのギルド長ザガリーさんは次に祭器を扱う人が現れるまでの代理だったのです」


「!!!」


 俺の驚きに比べて、二人はそうでもない。何でだ?


「祭器を扱えない時点で何かあるかと思っていたんですが……」


「あんな不誠実な男がギルド長だなんておかしいと思いました!」


 うーん、エレインの感想はともかく、確かにホムラでは祭器が原因でトラブルが多かった。


(あれはザガリーギルド長が祭器を使えていなかったからなのか)


 祭器とは冒険者と精霊を繋ぐもの。冒険者がスキルを得たり、冒険者プレートでステータスを確認できたりするのも全て精霊の加護があってこそ。それ故に祭器に選ばれることは冒険者ギルド長としての最低限の資格だとも言える。


「でも、レオさんが導き手で、祭器を扱う資格があるなら何故そのことを秘密にしておくのでしょうか」


「確かに。秘密にしていたから度々精霊守の助けを要請するなどといった無様を晒している訳ですし……」


 エレインの言葉は容赦のないものだが、一理ある。監査以外にも精霊守を呼ぶなんて普通は有り得ない。


「それは恐らく保身でしょう。レオさんが自らの力に目覚めれば、自分がギルド長の立場を追われると思ったのでしょう」


「「「!!!」」」


 俺がザガリーギルド長にとって代わる? そんな馬鹿な。


(いや……でも待てよ)


 導き手はEXスキルを持つという話じゃなかったか? 


「あの……俺は最初にプレートに触れた時、何もスキルを授からなかったんですが」


 忘れもしない。何も表示されないスキル欄を見て、ザガリーギルド長は……


「それこそが導き手の証です。導き手のスキルはその後の成長で発現するものなのです」


「なっ!」


 何だって!?


「己の保身を優先するあまり、後継者の育成を放棄するなど有り得ないことです。彼には厳正な処罰が必要です」


 育成を放棄? 処罰?

 ち、ちょっと待ってくれ!


「それはともかく、貴方には祭器をお渡ししなければなりません。まずは宝物殿に……」


 いやいや、ちょっと待て。急にそんなことを言われても……


「流石レオさん! 祭器を持てる冒険者はごく限られた方だけなんですよ!」


「レオ様の祭器、さぞかし素晴らしいものでしょうね!」


 二人は盛り上がっているが、正直ついていけない。一体どうなって……


「レオさん、どうしたんですか?」


 俺が困惑していることを察したのか、アイラが心配そうな顔を俺に向けてくる。


(あ……俺は今、そんなに酷い顔をしてるのか)


 こんな年下の女の子に心配されるなんて本当に俺は駄目なやつだ。クソッ!


「すみません、少し整理する時間を下さい」


 俺はそう口にすると皆の返事も聞かずに立ち上がった。



(ふぅ……)


 里の端にある高台。気がつけば、俺は里ののどかな風景が一望できるその場所にいた。


(夢中で走ったらこんな場所まで来ちまったな)


 里長のアメリア様のとこを出てから俺は夢中で走ったらしい。まるで何かを忘れるように。


(まあ、全部覚えてるけど)


 だが、どう考えていいか分からない。というが、自分が何を感じているかも分からない。


(怒ってないとは言わないけど、それよりも混乱してるってのが正しいな)


 何故俺にスキルがないなどと嘘をついたのか、そして……


(普通に過ごせたなら俺はどんなスキルを発現したんだろう……)


 俺は一体どうしたら……


 カサッ!


 そんな物思いに浸っていると、背後で遠慮がちな足音が。反射的に振り返ると、そこには……


「アイラ、どうしてここに……」


 

 読んで頂きありがとうございました!

 次話は明日の昼12時に投稿します。


◆お願い◆

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― 新着の感想 ―
[良い点] なるほど。導き手とはそのような存在でしたか。 とするとザガリーギルド長が転がり落ちる盤面が整いまくってますね。 彼は実際のところ、どんな感情をレオに抱いていたのか。 どのみち碌なものでは…
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