想定外
一行は堕ちた精霊の眠る遺跡を進みますが……
“いいよ、レオ。その調子だ!”
頭の上に乗ったハーディアには“早すぎず遅すぎず歩いてほしい”といわれたが……なるほど。これくらいか。
(俺が先頭でアイラが真ん中、エレインが殿の隊列。で、ハーディアが霧で気配を誤魔化す魔法を使う……か)
精霊は感覚が敏感なので、ハーディアの魔法を持ってしても派手な動きをするとバレてしまうらしい。で、歩き方にも注文がつくわけだが……
(忍び足、便利だな)
忍び足は今日の日替わり追加効果だ。テキストは……
◆◆◆
忍び足
敵に気づかれにくくなる。また、不意打ちを受けない
◆◆◆
“不意打ちを受けない”っていうのはどういう意味なのか分からな──
(──ッ!)
何かが脳裏によぎるような、何か予感めいた感覚と共に俺は右を向く。そこには、今こちらに気づき、攻撃態勢を取る精霊の姿が……
(〔鑑定〕!)
◆◆◆
下級精霊 Lv15
◆◆◆
(弱点は……あそこか!)
俺は〔鑑定(Lv3)〕が教えてくれた場所に刺突を放つ! すると、精霊はまるでかき消えるようにして消えた。
“一撃か! 凄いね、レオ!”
とハーディアが騒ぐ。多分落ち着いたら色々聞いてくるだろうな……
「下級とはいえ精霊を一瞬で……私がした無礼は思っていたよりもさらに重いですね」
そういうと、エレインは“”追加で罰を“などと呟き始めるが……オイオイ、もうヤメてくれよ!
「これなら苦しまずに還れたと思います。ありがとうございます」
アイラは少し涙を滲ませている。精霊と繋がりが深い彼女には色んな思いが沸き起こるのは無理もないな。
「……次もうまく行くとは限らない。先は長いし、気を引き締めて行こう」
皆がしっかりと頷く。道はまだまだ始まったばかりなのだ。
※
“いよいよ山場だよ”
何度か休憩をとった後、今までのような細い通路ではなく、広間のような場所にさしかかるとハーディアが緊張した声色を出した。
“例の精霊の気配を感じる。これは……寝てる。チャンスだ”
寝てるってことはさらに気づかれにくくなるな。
(ん? 精霊も寝るのか?)
でも、ハーディアも姿を消していたりすりし……って今はそんなことどうでもいい!
“基本今まで通りだけど、気をつけて。動きもそうだけど、高位の精霊は感情の揺らぎに反応してくる。緊張したりするじゃなくて自然体を心がけて”
言わんとすることは分かるが、なかなか難しいな。
(まあ、やるしかないか)
なるべく気持ちを落ち着けて……
“そうそう、その調子!“
そうか。こんな感じで……ソロリソロリ
“よし、もうすぐ部屋の中央までたどり着くよ!”
ソロリソロリソロリ……忍び足であるきながら周りをそっと見渡すが、部屋の隅は薄暗くてよく見えない。
(あの暗がりの何処かに狂った大精霊がいるのか……?)
精霊守の里が手を出せないような相手ってどんなだよ……
(ん、どうしたんだ?)
アイラが立ち止まってる……
「あれはまさか……っ」
「ち、違いますよ、アイラ様! そんなはずはありません!」
二人が何かを見て言い合っている。視線の先に転がっているあれはローブか?
“やばい、感情の揺れ幅が大き過ぎる! エレイン、アイラを抱えて部屋を出るんだ!”
「わ、分かりました!」
口に出して返答してしまったのはエレインも動揺しているからだろうか。エレインは座り込んでしまったアイラに近寄るが……
ズルっ
こ、ここでこけるのか! ヤバいこれは気づかれたん──
「オオオォォ!!!」
この迫力……間違いない! 話に出ていた精霊だ!
「ハーディア、アイラを外へ! 俺が足止めする!」
そう叫んで前に出るが、その瞬間、俺は立ち尽くした……
(何だ、こいつは……)
一言で言うなら紫の靄だ。その中に黄色い光が二つ。ただそれだけの存在だが、プレッシャーが半端ない。
(〔ヘイト〕の魔導具を使うか……いや、それはアイラ達が襲われそうになってからでも遅くはないか)
バシッ!
急に体が吹き飛ばされる! 一体何をされたんだ!?
(これは触手か!?)
宙を飛ぶ俺の視界に紫の靄から伸びている触手が見える。ハーディア同様、実体化している。
ゴロゴロゴロ……
壁に叩きつけられて落ちた反動を活かしてそのまま転がる俺に触手が数本かする。ダメージはないが、反応出来るレベルじゃない。
(どこかに隠れないと……)
柱だ! あそこに!
バシッ! バシッ! バシッ!
何とか柱の影に逃げ込めたものの、相手の攻撃で柱はどんどん削られていく。長くは持ちそうにないぞ、これ……
読んで頂きありがとうございました!
次話は明日の昼12時に投稿します。
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