目利き
防具を探すレオでしたが……
(他のはないかな……)
近くを探したが、鉄の胸当てはこれだけだ。人気の品ってこともあって在庫が少ないのかな。
(急造品ってのは人気があるからかな)
まあ、だがらといって仕方がない……という訳にはいかないな。
「それにするか? うちの看板商品だぞ」
「今はこれ一つしかないのか?」
「? ああ、そうだが何か問題でもあるのか?」
不思議そうな顔をする店主には何も説明せず、俺は他の鎧を物色し始めたのだが……
「何を文句を言ってるんだ、お前は!」
俺と店主の会話を聞いていたエレインが不機嫌そうにそう言うと、俺が戻した鉄の胸当てを手に取った。
「一体何が気に入ら──っ!」
エレインの顔が驚きに変わる。何だ? 一体どうしたんだ?
「まさか貴様、見抜いて!?」
凄っ! 見ただけで分かるのか。
「いや、そんなはずは……おい、待て。なら、これとこれならどちらを選ぶ?」
エレインが俺の前に出したのは二つの篭手だ。
(篭手か……これもありか?)
革に補強のための金属の板を取り付けた二つの篭手は見た目にはなんの違いもない。だが……
(まずは右の篭手から……〈鑑定〉!)
◆◆◆
鉄の篭手(ランク★★★)
なめした革で作ったグローブを鉄で補強したもの。敵を殴りつける時にも重宝する。防御+25
(特記事項)革が変質しかかっており、本来よりも能力が低い
◆◆◆
あちゃっ! これは駄目だな。ならもう片方は……
◆◆◆
鉄の篭手(ランク★★★)
なめした革で作ったグローブを鉄で補強したもの。敵を殴りつける時にも重宝する。防御+32
(特記事項)鉄の防錆処理が不十分のため、雨天時に使用すると錆びやすい。
◆◆◆
こっちも駄目じゃないか!
(あれっ、エレインの傍にも一つあるな)
一応見てみるか。
◆◆◆
鉄の篭手(ランク★★★)
なめした革で作ったグローブを鉄で補強したもの。敵を殴りつける時にも重宝する。防御+32
◆◆◆
おっ、これなら行けるな!
「どうした? どちらも同じに見えるか?」
「選ぶなら君の傍にある篭手だな」
「!!!」
エレインの勝ち誇った顔が、一瞬で崩れ去る。あ……何か悪いことしたかな。
「レオさん、こんなのありましたよ」
アイラが持って来たのは深い緑のマント。暖かそうだな。
(よく考えたら旅には必需品だな)
昔から使っていたものがないわけじゃないが、大分古いしな……
(鎧以外にも買い替えた方が良いものが色々ありそうだな)
※
ある程度旅支度を終えた後、宿を探そうとしたのだが、アイラに“既に部屋はとってある”と言われた。よく考えたら護衛なんだから同じ宿に寝泊まりした方が良いよな。
(護衛とか初めてだもんな、俺)
ちなみに商人の護衛とかは冒険者にとってかなり美味しいクエストだが、俺はやったことがない。ああ言うのはある程度実力がついてないと回ってこないからな。
「オイ、夕食の前に付き合え」
部屋に荷物を置いて今後の動きを打ち合わせた後、エレインは急にそんなことを言い出した。
「この宿は屋内の訓練場がある。ちょっと動きを見せてみろ」
動き……か。
(まあ、一緒に戦うならお互いのスタイルを知っておく必要があるが……)
そう言った要不要の話じゃなく、何か剣呑な感じがするな……
「ちょっとエレイン!」
「やたー! レオの戦ってるとこ見たいな!」
おっ、ハーディアじゃないか! 表に出てこられるようになったんだな!
(しかし、見事に割れたな)
この二人は俺が絡むといつも意見が割れるな。
(しかし、どうするか……)
ちょっと前なら速攻辞退していたが……今はちょっと自分の力を試したい気もする。
「えっと、Lvとか聞いてもいいか?」
「Lvは間もなく50。ギルドに所属してはいないが、長老からはCランク相当とのお言葉を頂いている」
精霊守の家は言わば冒険者ギルドの元締め。長老からCランク相当と言われたのならこちらでもそう判定されるはずだ。
(万年Eランクの俺がどこまでやれるか……)
あの頃とはLvも気持ちも何もかも違う。だったら結果も違ってくるはずだ!
「分かった。やろう」
「私が相手になるかどうか確かめたという訳か……気に入らんな。その自慢の顔に一発入れてやるからな!」
「エレイン!」
おいおい、殺気が漏れてるぞ……
読んで頂きありがとうございました!
次話は明日の昼12時に投稿します。
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