遭遇
アウルベア亜種を下したレオ達が進んだ先には……
(レオ視点)
先へと進んでいくと、再び魔物の死体の山が……オイオイ、またこのパターンか。
(これはゴブリンか?)
ゴブリンもダークハウンド同様、群れを作る魔物だ。この辺りはさっきまでと違い、ひらけている。ここいらはゴブリンの縄張りだったってことかな?
“レオ、あそこ……”
ハーディアの示した先を見ると、皮膚の色が違うゴブリンの死体が……こいつは亜種か?
「まさか、ゴブリンの亜種までいたなんて……異常すぎますね」
確かに。亜種はこんな頻度で会うような魔物じゃないからな。
“だけど、またさっきみたいにこいつらを食べた魔物が出てくる可能性がある! 気をつけないと”
ハーディアの声が頭に響く。ちなみに、ハーディアは野営地にいるときと戦闘中以外は姿を消している。よく分からないが、何でも疲れ過ぎないためらしい。
(よし、周囲を警戒して……)
俺は辺りを伺いながら進──
むにゅ!
(ん?)
何だ、この感触……柔らかい……
「助けて!」
「!!!」
いつの間にか誰かに抱きつかれている……誰だ、この娘は。
(いや、それよりこの柔らかい感触ってまさか……)
「ちょっ……いきなり何ですか! レオさんに失礼じゃないですか!」
珍しくアイラが怒ってる。どうしたんだ?
「………急にごめんなさい。でも、つい」
「いいからレオさんから離れて下さい!」
そう言ってアイラが女の子を引き剥がすと、俺は初めていきなり抱きついてきた相手の顔を見た。
(綺麗だな……)
整った顔立ちに少し長めに伸ばした髪。どことなく包容力を感じさせる女性だ。
「で、一体どうしたんですか?」
アイラはまだ怒ってる……どうした?
「実は……」
話は壮絶なものだった。ギルド長に半ば強制されてクエストに向かった彼女のパーティーの前には事前情報よりもはるかに巨大なゴブリンの巣。なんとか善戦するものの、パーティーは敗走。彼女は逃げ遅れるが、そこにアウルベアがやって来て……
「身を隠したのは良かったんだけど、怖くて怖くて……ごめんなさい」
「っ! そんな! 事情も知らず、こちらこそごめんなさい」
アイラが心底申し訳無さそうに頭を下げる。まあ、こんな事情があったんじゃ仕方ないよな。
(まあ何にせよ、不幸中の幸いって奴か)
早く仲間にも彼女の無事を教えてやりたいな……って、そう言えば名前も聞いてないな。
「私の名はルイーザ。ヒーラーです」
ヒーラーか。こっちも助かるな。まあ、アイラと一緒になってからは全然怪我をしてないけど……
(いや……〈雑用〉の真価に気づいてからは、だな)
正直、まさかこんなスキルだとは思ってなかった。
「とりあえず、一緒にロザラムに帰るってことでいい?」
「そうですね」
「……よろしくお願いします」
そう言うとルイーザは頭を下げた。
(っ! アラート!)
俺がアイラに目配せを送ると彼女の表情が引き締まる。ハーディアも既に臨戦態勢だ。
ドンッ! ドンッ! ドンッ!……
一体のアウルベア亜種が近づいてくる。大きいな。
(それに今までのやつとは何か……)
“今までよりヤバイよ! 気をつけて!”
その言葉と共にハーディアが実体化する。最初から実体化って言うのは今までなかったな。
「………えっ、ワンちゃん!」
説明したいが、今はその時間がない。幸いアウルベアの出現にもパニックを起こしてはいないようだし、何とかなるか。
「こいっ!」
前に出てアウルベア亜種と向き合うとそのデカさに驚いた。アウルベア亜種は原種よりも一回り大きいが、こいつは他のアウルベア亜種よりも更に大きい!
ガキンっ!
爪の攻撃を剣の刃先で受けるが、奴の爪には目立った損傷はない。硬いな……
ザッ!
虚を突くタイミングで退き、距離を取る。その意図は……
「〈水弾〉!」
よし、アイラの魔法だ! これなら大ダメージだろう!
(何っ!)
だが、アウルベア亜種は俺に合わせて後ろに下がり、アイラの魔法を回避していたのだ!
(こいつ、俺の意図を読んだのか!)
魔法を回避するのは弓矢を回避するよりも難しいと言われている。が、予め来ることが予測できていれば話は別だ。こいつは俺が逃げたのではなく、味方の攻撃に巻き込まれないために下がったのだと理解していたのだ!
(身体のデカさや硬さ以上に厄介だな)
知能が高いのか、戦闘経験の為せる技なのかは分からない。が、どちらにしろ厄介だ。
ビービーピー!
なっ!
“レオ! 新手だ!”
こんなタイミングでか!
読んで頂きありがとうございました!
次話は明日の昼12時に投稿します。
◆お願い◆
「面白い」「悪くないな」「まあ次話を読んでみるか」等などと思われた方、ブクマやポイントをポチッとして頂けれると筆者のモチベが爆上がりします。是非ご一考下さいませm(_ _)m




