魔導具
巣にあったのは赤い石がついた首飾り。それが何か俺は一目で分かった。
(これは魔道具か……)
魔道具とは魔力を注ぐことで魔法を発現する道具のことだ。点火するための小さな火を灯すもののようにありふれたものから世界に一つしかないものまで価値はバラつくが、基本安いものではない。
(何の魔法かは分からないが……使ってみる価値はあるか)
時間をかけてわざわざ作るものなので、人が不利になるような魔法は入ってないはず。俺は魔道具を首にかけると、魔力をこめた。
(さあ、何の魔法かな……)
ブンッ!
魔道具が起動し、音なき音が鳴り響く。その瞬間……
「ガァガァッ!」
「ガァッ!」
「ガガガァッ!」
クロムレイヴン達が急に俺に向かって襲いかかって来る。これは〈ヘイト〉の魔法か。
(丁度良いな)
今の俺には回避カウンターが発動している。だから……
スカッ……ズバッ!
攻撃を避けては反撃、次の攻撃も避けては反撃……回避から反撃までが自動的なので全く困らない。しかも……
グサグサグサッ!
的が絞られたことでアイラも魔法を撃ちやすくなる。これはいよいよ作業に近くなってきたな。
バタバタバタ……スカッ!
あまりにサクサク討伐が進むので。しまいには絶命して地上へと落ちてきたクロムレイヴンにさえ回避カウンターが発動する始末。
結局クロムレイヴンの討伐は二〜三時間で終わり、俺達は昼ごろまでクロムレイヴンの巣を漁る作業に従事した。
※
野営地に着き、掃除や補修が終わったあと、俺達はステータスを開いた。
◆◆◆
レオ 人間(男)
Lv 37
力 27
防御 25
魔力 24
精神 24
素早さ 26
スキル
〈雑用(Lv2)〉
※回避カウンター・力UP(中)・取得SPUP(中)付与中
SP 452
※クロムレイヴン連続撃破ボーナス
◆◆◆
おおっ! SPがほぼ元に戻ってる!
(〈雑用〉にSPを振って正解だったな)
本当、二人の助言には感謝だ。
「レオさん、見てください! 私、Lv37になりました!」
◆◆
アイラ ???(女)
Lv 37
力 13
防御 14
魔力 46
精神 45
素早さ 16
スキル
〈下級精霊魔法(Lv3)〉
〈中級精霊魔法(Lv1)〉
〈???〉
※魔法攻撃必中・魔力UP(中)・取得SPUP(中)付与中
SP 582
※クロムレイヴン連続撃破ボーナス new!
◆◆◆
SPは前回の野営地で使い切らなかったらしく、俺よりも多い。それにしても凄いパラメーターだな。
(まあ、今回稼いだ分も俺より多かっただろうな)
Lvが同じになっているのがその証拠だ。
「〈雑用〉、本当に面白いスキルだ。まさかこんなことが出来るなんて……」
ハーディアは俺達のステータスを見ながら何やらしきりと感心している。まあ、確かに予想外の結果ではある。
ちなみにクロムレイヴンの巣には剣と古びたポーションがあった。ポーションはもう使えないが、剣はミスリル製の業物。少し錆びてはいるため、後で手入れして俺が使わせてもらうことになっている。
「確かこの先はもう魔物がいないんでしたよね」
「ああ、この先からは定期的に間引きがされている地域だからな。ロザラムまでは後少しだ」
勿論絶対ではないが、それでも今まで通ってきた場所みたいに魔物が溢れているわけではない。
「まあ、レオのおかげでいいレベルアップになったけど、何で放っておいたんだろう」
「ロザラムからさほど離れていないのに結構な数の魔物がいて……スタンピード直前って感じだったよね」
スタンピードとは魔物が大挙して人のいる地域へとなだれ込んでくる現象のこと。魔物は数が増えて共食い寸前になると、新たな棲家を求めて街へと下りてくる。その被害は甚大で過去には国が一つ滅んだことさえある。
こんな恐ろしい災害を防ぐためにギルドは間引きをしたり、生息調査をしたりする。逆に言えば、冒険者ギルドの存在理由の一つがスタンピードの防止だと言えるくらいだ。
「定期監査だったら減点レベルだね、こりゃ」
「そうね……可哀想だけど」
え、目的は監査じゃないの?
「あれっ……その様子だと僕達の目的は聞いてないの?」
「聞いてないな。まあ、非正規職員だし」
「「非正規!?」」
アイラとハーディアが揃えて驚いた声をあげる。そ、そんなに驚くところか?
「こんな凄いスキルがあるのに?」
「こんなに強いのにですか!?」
引っかかった部分はそれぞれ違うみたいだな。




