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【改正版】正しい聖女さまのつくりかた  作者: みるくてぃー
スチュワート編(一年)
36/120

第36話 第一回、パジャマパーティー

「第一回、女性だけのぶっちゃけ恋バナ、パジャマパーティー!!」

 パチパチパチー。

 ココリナちゃんの一言で突然始まった、第一回恋バナパジャマパーティー in レガリア城 。

 何故かたったひとりだけが盛り上がり、その様子を冷めた目で見る子と、若干怯えた様子をみせる子が入り乱れ、ティアお義姉様の趣味で作られた東の島国伝統の畳部屋の中に、みっしりと敷かれた布団上で鎮座したお馴染みのメンバー。中央に少しだけ空間を開けて、お茶とお菓子を囲みながら直接布団に座っているが、これが島国の伝統なマナーだと説かれれば素直に従うしかないだろう。

 若干約1名、リコちゃんに無理矢理連れてこられたイリアさんが、先ほどからガクガクと震え、なんとか逃げ出そうとしているのをリコちゃんとミリィが左右から挟んで捕まえているが、ここは初参加の心情を察してあげ、全員一致のアイコンタクトで気づかないフリを決め込む。


 二学期もいよいよ終盤となり、何か想い出作りをしたいねという話をしていたら、いつの間にかティアお義姉様主体で企画されていたこのお泊まり会。

 本来は東の島国で毎年この時期に開催されるクリスマスというイベントらしいが、詳しく知らない私たちはケーキとお茶を楽しみ、そのままお泊まり会であるパジャマパーティーへと突入した。


「何なのよその恋バナっていうのは」

「恋バナは恋バナです。アリスちゃんがジーク様とどうなっているとか」

「えっ!?」

「ミリアリア様がアストリア様と何処まで進んだとか」

「ちょっ」

「リリアナさんの様子が最近どうもおかしいだとか」

「ブフッ」

「個人的にはリコリス様とイリアさんの関係が一番気になるんですが」

「「グフッ」」

 私から順番に、ココリナちゃんの言葉で明らかに動揺するメンバー。王女様とご令嬢がいると言うのに、一切お構い無しの言葉に関係のないメンバーから称賛の声が上がるが、名前を挙げられた私達はたまったものじゃない。


 ついにこの国の最強……コホン、最重要人物であるお義姉様の免疫がついてしまい、すっかり絶対無敵に生まれ変わってしまったココリナちゃん。

 これにはさすがのミリィも若干引き気味の表情を浮かべるが、最近ミリィの王女様らしくない行動を気にかけていたメイド長のノエルさんや、私たちの専属メイドであるエレノアさんからの評判は上がっており、現在ココリナちゃんの採用が前向きに進んでいるんだという。

 私としては最近リリアナさんの様子がおかしかった事も気になっていたし、ちょっぴりリコちゃんの動揺する姿が妙に新鮮で気になる処ではあるが、標的の一人になってしまった私も、すっかり逃げ腰の態勢に入ってしまっている。


「それじゃまず最初の標的は……ジャカジャカジャカジャカジャン! リリアナさーん!」

「ブフッ、ゴホッ、ゴホッ」

 必死に平静を装っていたリリアナさんが、突然標的になった事で飲んでいたお茶で咽せて激しく咳を繰り返す。

「わ、私ですか!? ここはセオリー通り一人目はアリスさんが標的になる方が私の為……コホン、皆さんの期待を裏切らないかと」

 って、リリアナさん何言っちゃってるんですか!

 いつもならココリナちゃんの言動ぐらいサラッと冷静に受け流してしまうリリアナさんが、明らかに動揺しながら普段口にしないような言葉を発言する。


「アリスちゃんはどうせポヤポヤのほほんとしてるだけだから、場合によっては彼氏いない歴14年のこちらの方が惨めになるんです。ここはリリアナさんで場を温めてからリコリス様とイリアさんの仲へと、話を持って行った方がいいに決まってるじゃないですか」

 ココリナちゃんの勢いに徐々に後ずさるリリアナさん。

 私とミリィは標的から外れた事でリリアナさんを逃さないように捕まえ、同じく逃げ出そうとしているリコちゃんとイリアさんを、ルテアちゃんとカトレアさんがそれぞれ逃亡を防ぐ。

 皆んな標的が自分に向くのが怖いのか、あのカトレアさんですら必死にイリアさんを押さえつけている。ただ一人、パフィオさんだけは普段から男性の噂がない為、後ろを向いてイジケてしまっている。

 うん、ごめん。今は自分が大事だからフォロー出来ない。


「それじゃ聞かせて頂きましょうか。ふふふ」

「コ、ココリナさん……私に迫っても面白い話なんて出てきませんわ」

「惚けても無駄です、ネタは上がっているんですよ」

 いつになく強気のココリナちゃんと、すっかり怯えまくっているリリアナさん。ココリナちゃんの手つきが何かの物語で読んだ、卑猥ひわいなおじさんのようになっているのが、更に恐怖心を倍増させているのだろう。リリアナさんは両腕で必死に胸元を抑えながらフルフルと首を横へと振っている。

 なんだろうこれ、リリアナさんが可愛すぎてココリナちゃんに協力したくなる気持ちは。


「私が知らないとでも思っているんですか、リリアナさんがお世話になっているお屋敷のご子息様とのラブラブっぷり!」

「なな、なんの事ですかそれは!?」

「ネタは上がっていると言ったはずです。この間のお仕事体験で告白され、公爵様達からも祝福されている。

 さらにこの学園を卒業と同時に花嫁修行が始まる事だって分かっているんですからね!」

 ココリナちゃんからの衝撃の発言。

 まさかの状況に軽く戸惑ってしまうが、ライラック家のご子息と言えば長男であるアルベルトさんしか居なかったはず。すると未来のお嫁さんであるリリアナさんは時期公爵夫人となるわけで……

「ライラック家のご子息って言うとアルベルトよね? 私とアリスはそれ程付き合いがあるわけじゃないけど、どんな子なの?」

 私とミリィが唯一付き合いが少ないのがライラック公爵家。長女であるエスニア姉様は、ティアお義姉様と仲が良くエリクお義兄様の婚約者である為、親しい関係ではあるが、そのほとんどがお城での出来事なので、私たちがライラック家へと足を運ぶことは余りない。

 本当ならジークの妹であるユミナちゃんにしろ、アストリアの妹であるレティちゃんにしろ、同じ年である二人と友達になっていなければ、お屋敷に遊びに行く機会もなかっただろう。


「アルベルトは温厚で優しい子だよ。例えるならエリクシール様のような感じかな。昔から好きな子が居るとは言ってたけどまさかリリアナさんだったなんて、知ってたら初めから応援してたんだけどなぁ」

 同じ公爵家の人間として横の繋がりも深いのだろう、リコちゃんの逃亡を涼しい顔で抑えながらルテアちゃんが教えてくれる。

 何も知らない人が見た目が弱いルテアちゃんが、自分より背が高いリコちゃんを涼しい顔で押さえてる姿を見て不思議に思うかもしれないが、実はコレ、体力と腕力だけなら私たち4人の中ではルテアちゃんがダントツトップ。逆に一番非力と言われているのがリコちゃんと私だったりする。

 ルテアちゃんは元々聖女候補生として幼少の頃から体を鍛えている一方、私やリコちゃんはダンス以外で体を動かした経験がほとんどない。


 聖女の力を行使するのって凄く体力を使っちゃうのよね。今でこそミリィは剣術を習ってはいるが、当時聖女の修行から逃げていたから未だに腕力だけならルテアちゃんの方が上と言うわけ。ミリィもサボらずちゃんと教わっていれば、今頃最強無敵とも言われているティアお義姉様に敵うかも……いや、あの強さは男性であるお義兄様がまったく歯が立たないとおっしゃっていたので、次元が違うのかもしれない。間違っても悪口なんて聞かれでもすれば、お義姉様のお仕置きスペシャルが炸裂する羽目になるので、口が裂けても本人には聞けない。


「よく知ってたわね、ルテアでも知らない情報を」

 ミリィが言う通り同じ公爵家であるルテアちゃんが知らずに、なぜ縁遠いココリナちゃんが知っていたかは私も不思議に思う。

「ふふふ、この前のお仕事体験の時、エンジウム家に奥様が遊びに来られていたんです。その時給仕している時に嬉しそうに教えてくださいましたよ」

「お、奥様のばかぁーーー!」

 この時、部屋中にリリアナさんの嘆きの声が響いたのは言うまでもあるまい。

 そう言えば私ってお仕事体験中、お茶会とガールズトークしかしていないや。知らないところでココリナちゃんは働いていたんだね。


 結局ココリナちゃんの迫力に負けたリリアナさんは、洗いざらい喋らされていました。

 ココリナちゃん怖い、誰もがそう思う恐怖の夜が始まるのだった。

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