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経験をスキルにする万能な能力を手に入れて、最強の探索者になりました〜JKと一緒にダンジョン探索で成り上がる〜【コミカライズ】  作者: わんた


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カンパーイ!

 奪われたスキルカードを入手した正人たちは、アイリスやハリーの死体を置いて地上に戻った。


 入り口を封鎖していた警官には犯人はダンジョンでモンスターによって殺されたと伝え、探索協会に取り戻したと報告して依頼は完了する。


 スキルカードを取り戻した功績によって、ユーリだけではなく正人も探索協会内の評価は大きく上昇していた。


◇ ◇ ◇


 依頼も終わり明日には東京に帰る。今日は沖縄のホテルで過ごす最後の夜だ。いくつかの店をはしごしてジュースやお菓子を大量に買うと、正人たちは部屋で打ち上げを開催することになっていた。


「カンパーイ!」


 かけ声と共に四人はグラスに入ったオレンジジュースを飲む。ヒナタは一気に飲み干し、里香と冷夏は半分ほど。正人は軽く口をつけるだけだった。


 誰も気にしないような差ではあるが、沖縄ダンジョンからずっと正人のことを意識している冷夏だけは違った。


「甘い飲み物は嫌いなんですか?」


 何気ない普通の質問だ。これが同級生や妹のヒナタに言ったのであれば里香は気にしなかっただろう。だが正人に対してであれば違和感が残る。


 彼とは一定の距離を保ち、仕事以外の会話はあまりしてこなかった冷夏が積極的に話しかけたのだ。しかもジュースを少ししか飲まなかったという些細なことで。何か心情の変化があったと里香が考えるには十分な出来事であった。


「喉が渇いてないだけだよ。先に何か食べたくてね」


 親しみやすい優しい声を出しながら、正人は袋からポテトチップスを取り出して食べている。普段と変わらない雰囲気だ。変わったのは冷夏だけだと里香は結論を出す。


「ねー! 怖い顔してどうしたの!?」


 黙って二人を観察していた里香にヒナタが声をかけた。


「え、別に普通だよ」


 内心で慌てながらも里香は表には出さないように意識してゆっくりと顔を動かし、ヒナタを見る。いつも通りの何も考えてなさそうに笑っていて、変わっていないことに安堵する。


「えー! 絶対何か考えてたよー! あ、もしかして最初に食べるお菓子を悩んでた!?」

「う、うん。チョコもいいけど、お腹にたまるお煎餅(せんべい)もいいよね」

「わかるー! ヒナタは先にチョコを食べたよ! これ美味しかった!」


 ヒナタが食べたのは黒い箱に小分けされたチョコレートだ。一粒で数百円するほどの高級品で数は多くない。


 オススメされたチョコレートを手に取ると里香は口に入れる。甘さは控えめで、ほんのりと果実の香りもする。


「ほんとだ。美味しいね」

「だよねー!」


 偶然にも里香とヒナタ、正人と冷夏といったグループに別れてしまい、それぞれ話しが盛り上がる。こうなってしまうとトイレや新しい話題がない限り話す相手を変えるのは難しい。


 嫉妬に近い焦りを感じている里香は、ヒナタと話しながらも正人の会話を聞き取ろうと意識を割いていた。


「やっぱり男の人っていっぱい食べるんですね」

「音楽は何を聴いてるんですか?」

「料理もできるなんて、すごいですね!」


 冷夏の言葉はいたって普通だ。友だちや年上の先輩と話しているといっても通用する。恋愛感情は含まれてないようにも聞こえるが、里香は全てが正人のプライベートに関する話題ばかりだというのに気づいていた。今までなら逆で仕事のことが多かった。


 探索者として生き残る方法やダンジョン内の出来事など、話題は豊富なのだが今日に限って探索者関連の話しは一切しない。


 パーティー内のメンバーが仲良くなっていると前向きに考えることもできるが、里香はどうしても必要以上に近づいていると感じてしまっていた。


「ごめん。ユーリさんから電話だ」


 スマホを取り出した正人は、冷夏との会話を中断するとバルコニーに出て行った。


 会話の相手がいなくなり、ジュースを飲みながら外を眺めている冷夏に里香とヒナタが近づく。


「お姉ちゃん、このチョコ美味しいよ!!」


 いつもの楽天的な笑顔を浮かべたヒナタは、手に持っていた箱から四角いチョコレートを取り出すと冷夏の口に入れた。


 小さいころから食べ物を強引にねじ込まれることはよくあったので、多少驚きながらも口の中で溶けていく甘い味を楽しむ。


 さらにもう一つ。ヒナタが持っている箱から冷夏はチョコレートを取ると口に放り込んだ。


「ほんとだね」


 美味しいものを食べて心が緩んだ冷夏に里香が話しかける。


「正人さんにも慣れた?」

「え、うん。最初は男性だからって、ちょっと緊張してたけど仕事の付き合いだけであれば、もう大丈夫だよ」

「そっか。よかった」


 心配してくれた友達に嘘をついてしまい冷夏は罪悪感を覚えてしまった。先ほどまで正人と二人で会話していたことを反省するとともに、バルコニーにいる正人を意識から無理やり引き離す。


「このケーキも美味しそうだね。皆で食べない?」


 今は恋愛関係のことを忘れたいと思った冷夏は、依頼が終わった解放感を楽しむため、二人に提案したのだった。


◇ ◇ ◇


 バルコニーに出た正人は、周囲の建物が発する光と遠くに見える真っ暗な海を見ながらユーリと通話していた。


「それで、どういったご要件でしょうか?」


 スキル昇華の存在に気づかれたこともあって正人が発する声は固い。ユーリは誰にも言わないと約束していたが不安は残っている。


「まあ、そう警戒するなって。健康長寿のスキルカードは返却したが、お前のスキルについては何も言っていない。もし俺が報告していたら、今頃、職員に取り囲まれているはずだ」

「確かにそうですね。ありがとうございます」


 ユーリの言っていることは正しい。もし他者に漏れていたら、今みたいに自由な生活はできていないだろう。探索協会につかまって生活の保障をされる代わりに様々なスキルを覚えさせられたはずだ。


 そういった変化もなく、今も変わらない日常を過ごせている。その事実こそが、ユーリの言葉を真実だと裏付けていた。


「報酬は月末に口座に振り込まれる。金額に間違いがあったら俺に連絡してくれ」

「わかりました」


 短い通話が終わり正人はスマホをポケットにしまう。部屋は三人がケーキを分け合いながら楽しそうに談笑している。男性である正人が入ってよい雰囲気ではない。仕方なく手すりに寄り掛かり星空を見上げた。


 東京より空はきれいで星がいくつも輝いている。ユーリや探索協会など面倒なことをすべて忘れられそうな光景だった。



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