(他国視点)全員、死ぬ気で戦い、生き残れ!
正人たちが蟻人族の巣に入る数時間前。
他国の探索者たちはマザーにつながる部屋の前に来ていた。総勢で100名を超えていて隠れている。
門番として5体のロイヤルガードがいる。隙は見せておらず姿を現せればすぐに発見されてしまうだろうし、『隠密』スキルを使っていたとしてもやり過ごすのは難しい。
門番に選ばれるほどの個体であるため、感知系のスキルを持っているからである。
遠くからだと精度は落ちてしまうが数メートル以内にいれば、ほぼ間違いなく見つかるだろう。完全に通り抜けられるとしたら、ユーリが持つ『透明化』スキルぐらいだ。
「どのぐらい集まると思う?」
「わからんが、日本のチームは来てくれると信じている」
仲間に問われた合同チームのリーダーは正人たちが来ると期待しているが、仮に来なくても今いるメンバーだけで十分戦えるとも思っていた。
「でも連絡がつかないんだろ? もう全滅しているんじゃないか?」
「日本からは死亡した発表は来ていない。恐らく大丈夫だろう」
「だといいんだがな」
これ以上話していても真偽がわかるわけではないため、部下はそれ以上の不満を口にすることはなかった。
黙ると『遠視』のスキルを使ってロイヤルガードの様子を確認する。
変わりはない。周囲を警戒している。交替するような行動も見せていない。
まだ自分たちの存在に気づいていないと安堵していると、数百にも及ぶ運び屋がやってきた。
背中には子供が乗せられている。詳しく観察すると肌色は良く、指先が動いていて生きているとわかった。
マザーに新鮮な肉を与えるために生きたまま連れてきたのだ。
「ヤバいことが起きた」
リーダーに数百名の生きた子供が運ばれていることを伝える。
このままではマザーに食われて死んでしまう。助けるべきだと熱弁したが、全て却下されてしまった。むしろ、好都合だと思われてしまったのだ。
「子供を運ぶために門が開くのであれば、その隙に俺たちも突っ込むのも悪くない」
ロイヤルガードの注意はエサに向いている。遠距離からの攻撃をすれば、通常よりも反応は遅れてしまうだろう。その際、子供が巻き込まれても尊い犠牲として割り切ればいい。
複数の国を束ねるリーダーとして冷静でかつ合理的な判断をしていたのだが、『遠視』スキルを使っている部下は納得できてない。
「子供を見殺しにするつもりか!?」
「人類の運命がかかっているんだ。当然だろ?」
冷徹な物言いに部下はより反発心を高めた。
「お前に人の心はないのか!」
「心だけで人類は救えない。プロフェッショナルとして冷静に状況を見極めるんだ」
トータルで救える人数の多さだけで考えれば、リーダーの言っていることは正しい。多くの人が支持をするだろう。
しかし、『遠視』を持つ部下は違った。生きている子供を助け、さらにロイヤルガードとマザーを倒す可能性に賭けたのだ。それが針を通す穴のように小さい可能性だったとしても、見捨てることは出来なかったのである。
「プロだからこそ全てを救うんだ」
リーダーが止めようとしたが、『エネルギーボルト』が上空に浮かび上がってしまった。魔力を込めて威力を高めているため、まだ発射はされていない。
「数秒後に放ちます。奇襲の命令を!」
部下を取り押さえようとしたところで、『エネルギーボルト』が放たれてしまうだろう。そうなれば奇襲は完全に失敗してしまう。
軽く舌打ちをしてから、リーダーは命令を下した。
「今からロイヤルガードへ奇襲を行う! ただし運び屋が持っている子供には当てるなよ! 総員、準備をしろ!」
探索者たちは覚えている遠距離攻撃スキルを発動させた。『ファイヤーボール』といった範囲系は除かれ、単体攻撃に特化したものばかりだ。
また遠距離スキルを持っていない探索者はライフルを構えている。狙いは運び屋だ。
戦闘能力が低いこともあって銃弾でも容易に殺せる。
倒した後は子供達を解放するつもりだった。
「撃て!」
号令を下すとスキルが放たれ、ロイヤルガードの頭部や腹部に当たる。何度か当たって外殻にヒビが入り、砕け散った。魔力を込めて準備ができたこともあって、狙い通りに倒せている。
運び屋も銃弾によって次々と倒れていき、捕まっていた子供たちは解放されていくが、何日もご飯を食べていないこともあって逃げ出すほどの元気はない。
門の奥から新しいロイヤルガードが出現した。
総勢で3体いる。倒れている仲間を見ると、怒りに燃えた目をして探索者たちを見る。
2体は盾を構えながら突進をしてきた。残った1体は体中から敵を発見したときに発生させるフェロモンを散布していた。空気を伝って他の蟻人族に伝わり、しばらくすればマザーを守るために集結してくるだろう。
「ここが正念場だ! 全員、死ぬ気で戦い、生き残れ!」
リーダーの声と共に探索者たちがロイヤルガードに攻撃を始めた。遠距離系スキルは盾によって弾かれてしまい、接近戦にもつれ込む。
種の存続を左右する最終決戦が始まった。






