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経験をスキルにする万能な能力を手に入れて、最強の探索者になりました〜JKと一緒にダンジョン探索で成り上がる〜【コミカライズ】  作者: わんた


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汚ぇ女だ

 体の痺れが取れた正人は人質の安全を確保するべく動き出す。


 ――身体能力強化。

 ――怪力。

 ――短距離瞬間移動。


 紅の横に移動すると腹を蹴る。腕を間に入れられてダメージは与えられなかったが、吹き飛ばすことには成功した。伊織が数発の『ファイヤーボール』を放ってきたが、正人は『障壁』を使う。範囲は里香、冷夏、ヒナタまで入っていて完全に防いだ。


 立ち上がった紅が拳銃で攻撃してきたが、これも『障壁』によって正人たちには届かない。


「役に立たないじゃない!」


 苛立った様子で紅は拳銃を床にたたきつけた。


 里香に近づけて『障壁』によって守りを固めた正人の勝ちだ。スキルを使い続けても魔力が尽きる心配をする必要がないため、長期戦でも耐えられる。この形が決まってしまえば、伊織と紅は人質に手を出せない。


 二人は正人の突破は困難だとわかると、目標をユーリに変える。


 伊織は拳銃を出すと銃口を向けた。


「仲間を助けたければスキルを解除するんだ」

「断ります」

「っっ!!」


 豪毅からは甘い男だと聞いていたのだが……。事前の情報とは違うことに驚いた伊織は、一瞬ユーリから視線を外す。その瞬間を狙ってユーリは『透明化』のスキルを使い、姿を消した。


「転移か!?」


 瞬間移動を見たばかりの伊織は勘違いをした。


 拳銃を下ろして逃げた場所を探していると、腕ごと体を白い糸が巻き付く。『アラクネの糸』で拘束したのだ。


 別のスキルを使って姿を現したユーリは同じ場所にいた。


「逃げたんじゃなかったのか?」

「復讐相手を前にして逃げるわけないだろ」


 ようやく体の痺れが取れたユーリは立ち上がった。


 肩を回して余裕の態度を見せている。それが紅を苛立たせた。


「伊織を解放しなさい!」


 激高した紅は正常な判断ができず、正人のことなんて見えていない。近くに転がっている鉄パイプを持つと、ターゲットをユーリに変えて襲いかかった。


「動きが遅いな」


 スキル『復讐者』によって能力が底上げされているユーリには止まって見えた。


 振り下ろされる鉄パイプをかわすと鳩尾に拳を叩き込む。防具の上からでも強い衝撃を受けて口からゲロを吐き、咳き込んでしまう。


「汚ぇ女だ」


 探索協会に与する者へ慈悲は与えない。


 顔面を蹴り上げて鼻の骨を折ると、顔を掴んで床へたたきつけようとして中断した。ユーリは後ろに飛ぶと、目の前を電気が通り過ぎていく。拘束された伊織が『電撃』のスキルを使ったのだ。


 さらに恋人の紅を助けるべく、スキルを使う。


 ――アースニードル。


 伊織の足元近くからコンクリートの針が出現して、ユーリに迫っていく。


 ――自動浮遊盾。


 地面に向けて半透明の盾を出現させると、放たれたコンクリートの針を止めた。さらに半透明の盾を足場にして跳躍すると、アラクネの糸で動けない伊織に蹴りを放つが、『障壁』によって防がれてしまった。


 弾かれたユーリは数歩下がって距離を取る。


 先ほどまでいた場所に『電撃』が通った。立ち止まっていたら、また感電していただろう。


 防御をするのと同時に攻撃をしてきた伊織に、ユーリは警戒心をさらに高める。


 戦いが上手い。油断すればヤられる。


 だがそれは戦いで勝とうとした場合のリスクだ。今回の勝利条件は人質を無傷で奪い返すことにある。その点において既に成功していた。


「伊織! 人質がいない!!」

「なにっ!?」


 正人を後回しにしたのは時間にして一分も満たない。その間に『転移・改』を使って、里香たちを隠れ家に連れ去ったのだ。

 

 集団で転移できる可能性が高いと聞いていた二人ではあったが、ユーリが紅をいたぶるように攻撃していたことで、一時的に正人が意識の外へ出てしまっていたのだ。


 明確な失態である。


 ノートパソコンから豪毅の声が聞こえる。


「人質を逃がしたのか!?」

「そうよ! 文句ある?」

「あるに決まっているだろっ!!」


 人質という武器がなければ正人を止める手段がないのだ。


 画面が見えないので現場がどうなっているかもわからない。


 豪毅は端的に言って焦っていた。


「美都は、美都はどうなった! 現場にいるんだろ?」


 うるさいノートパソコンをユーリが拾った。


 ついでに近くで倒れている探索者の頭を蹴り上げておくのも忘れない。骨が折れて死亡したが、ユーリは気にした様子はなかった。


「連れてくるわけないだろ。バーカ」

「なに! 先ほどいただろ」

「変装していたんだよ。節穴じゃ見破れなかったようだな」


 一矢報いることができ、ユーリはバカにするように笑っている。


 それが豪毅をさらに苛立たせる。


「まだサラとレイアがいるだろ! アイツらはどうなった!?」


 女装をしていた誠二の活躍によって、拳銃を持っている探索者たちは全滅をしている。むろん、無傷で乗り越えているわけではなく、腹に数発の銃弾を受けていて肋骨は折れているが、防具のおかげで致命傷は避けられていた。


「お仲間は残りの二人だけだ」


 ユーリはノートパソコンを放り投げた。鼻血を出している紅がキャッチすると、伊織の所にまで持って行く。


「ユーリのその言葉は本当か?」

「ですね。見ての通り俺は糸で拘束されててまともに動けません。負けを認めるしかないでしょう」


 純粋に心から感じたことであり、主人へのアドバイスであるため『隷属』のスキルは反応しなかった。


 豪毅にも考えは伝わり、初期の計画が壊滅したのだと納得するが、この男は諦めが悪い。


「死んでも正人を手に入れろ。ヤツさえ捕まえられれば、後はどうとでもなる」


 隷属スキルが命令を実行しろと痛みを与えてくる。


 重傷を負った紅は苦しんでいて、伊織は戦闘続行の選択を取るしかなかった。

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